中国第15回ナショナル・ゲームズが形づくる「スポーツ大国・健康大国」
中国最大の総合スポーツ大会である第15回ナショナル・ゲームズ(全国体育大会)は、トップアスリートの競技舞台であると同時に、全民フィットネスと健康づくりを進める政策の要として、中国のスポーツランドスケープを大きく変えつつあります。
第15回ナショナル・ゲームズとは何か
ナショナル・ゲームズは、中国で最も規模が大きく権威あるマルチスポーツ大会です。オリンピック級の競技スポーツを披露する場であるだけでなく、「全国民のためのスポーツ」「健康中国」を掲げ、公共スポーツと市民の健康づくりを同時に推進するプラットフォームとして位置づけられています。
「国民のための全運会」へ:誰もが参加できる大会に
2017年の天津大会以降、「ナショナル・ゲームズは国民のために、健康な中国を目指す」というテーマのもと、大会は大きく変化してきました。従来は競技者中心だった大会に、大規模な市民参加型プログラムが組み込まれたのです。
具体的には、次のような取り組みが進められています。
- 市民が参加できる種目の拡大と参加基準の引き下げ
- 「ナショナル・ゲームズに参加したい」シリーズなどの選考イベント
- オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型の大会運営
これにより、より多くのスポーツ愛好家が大会に関わることができるようになり、大型スポーツイベントと日常的な公共スポーツが深く結びついてきています。
オリンピックと連動する競技種目のアップデート
ナショナル・ゲームズの競技種目は、常にオリンピックの動向やスポーツの新しい潮流と歩調を合わせています。近年は、次のような新しいオリンピック競技も取り入れられました。
- スポーツクライミング
- スケートボード
- ブレイキン(ブレイクダンス)
こうした新種目の採用に加え、従来の中核競技でもルールの調整や運営方式の工夫が行われ、より多くの有望選手を発掘・育成できるように設計されています。動的に変化する競技体系によって、大会は時代に即した活力を保ち、多様な人材が育つ土壌となっています。
若手発掘と地域の垣根を越える仕組み
第15回ナショナル・ゲームズは、中国の若手アスリートを発見し育てる重要なステージでもあります。そのために、競技フォーマットにも工夫が加えられています。
- 複数地域が協力してチームを組む「連合チーム」
- 地域間で選手を融通・交流するクロスリージョンの仕組み
- さまざまな組織間の連携による育成ネットワーク
こうした取り組みによって、地域間の壁が低くなり、競技資源の配分が最適化され、エリート選手の育成が進みやすくなっています。ナショナル・ゲームズで頭角を現した若手が、その後国内外の舞台で実績を残すケースも増えており、大会は中国のスポーツエコシステムの中核として機能しています。
「健康中国2030」とスポーツ・医療の統合
スポーツが健康増進や病気予防に果たす役割を重視し、中国当局はフィットネスとヘルスケアを一体で進める方針を打ち出しています。その象徴が、2016年に公表された「健康中国2030」綱要です。
この綱要では、科学的な身体運動を健康増進、慢性疾患の予防、リハビリテーションに積極的に活用すること、そして人生のあらゆるライフステージを通じたスポーツ・健康サービスの提供が強調されています。
こうした政策の後押しもあり、現在では中国で4億人以上がアウトドアスポーツに参加していると報告されています。ナショナル・ゲームズは、その象徴的なイベントとして、「運動すること」が生活の一部であるという価値観を広く浸透させています。
スポーツ産業を押し上げるナショナル・ゲームズ
ナショナル・ゲームズという強力なブランドは、多くの社会的資本を引きつけ、スポーツ産業への投資拡大にもつながっています。これにより、次のような分野が成長してきました。
- 競技スポーツやイベントの興行ビジネス
- フィットネスやレジャースポーツ関連サービス
- 競技施設・運動施設の運営サービス
- スポーツスクールやトレーニング事業
とりわけスポーツ用品製造分野では、研究開発の強化や品質向上が進み、多様で個別化された需要に応える商品づくりが進展しています。また、スポーツと文化・観光、健康、教育、インターネットといった分野の融合も深まり、新しいビジネスモデルや消費スタイルが生まれています。
過去5年ほど、中国のスポーツ産業は高い成長を維持し、国内総生産(GDP)に占める割合も着実に拡大してきました。その背景には、ナショナル・ゲームズが生み出す関心と需要の喚起効果があるとされています。
広がるスポーツインフラと「運動できる場所」
スポーツ政策の成果は、数字にも表れています。2024年末時点の公式データによると、次のような状況にあります。
- 全国の氷雪スポーツ施設は2678カ所(うちスケート施設1764カ所、スキー施設914カ所)
- フィットネストレイル(遊歩道など)は約17万1800本、総延長40万7600キロメートル
- スポーツ施設数は459万カ所、総面積は40億7000万平方メートル
1人あたりのスポーツ空間は、この20年で約3倍に拡大しました。2003年には1人あたり1.03平方メートルだったものが、昨年末までに1人あたり3平方メートルに達しています。
大会後も生きるレガシー:市民に開かれる施設
ナショナル・ゲームズの影響は、大会期間中にとどまりません。大会後には競技施設が市民に開放され、地域の公共フィットネス拠点として活用されます。さらに、大会開催を契機に、新たな運動施設の整備も全国で進みました。
第14次五カ年計画の終了時点までに、全国で約2000カ所のスポーツパークと、延長2万キロメートルを超えるフィットネスパス(健康遊歩道など)が整備されたとされています。これにより、「運動したいけれど、どこへ行けばいいのか分からない」という課題の解消が進みました。
ナショナル・ゲームズをきっかけに、各地で市民参加型のスポーツイベントが増え、組織的で参加しやすい形へと整備されつつあります。大会を通じて発信される科学的なフィットネスの考え方と、拡大するフィットネス指導者のネットワークにより、年齢や背景を問わず、多くの人が専門的な運動指導や個別の運動プランにアクセスしやすくなっています。
これからの中国スポーツと国民健康
第15回ナショナル・ゲームズは、エリートスポーツと公共スポーツ、健康政策と産業振興をつなぐハブとして、中国のスポーツモデルを体現する存在になっています。
国際ニュースとして見たとき、この動きは「大型スポーツイベントを、どこまで市民の健康と日常生活に結びつけられるか」という問いを投げかけています。今後も、ナショナル・ゲームズが中国のスポーツと健康政策にどのような変化をもたらしていくのか、継続的な注視が必要だと言えるでしょう。
Reference(s):
The 15th National Games: Shaping China's sports landscape for all
cgtn.com








