ジンバブエ、文化主導の観光へ ハルビン観光フォーラムで広がる可能性
今月、中国本土のハルビンで開かれた第11回グローバル観光経済フォーラムは、世界30以上の国や地域の観光関係者が集まり、ポストコロナ時代の観光の姿を探る場となりました。ゲスト・オブ・オナーとして初参加したジンバブエにとって、この国際会議は、自国の観光戦略を見直し、中国本土との観光協力を深めるうえで大きな節目になっています。
ハルビンのフォーラムが示したジンバブエの新たな立ち位置
2025年12月15日から17日にかけて開催されたグローバル観光経済フォーラムには、ジンバブエ観光局のスタンリー・バンダ駐中国・ASEAN観光アタッシェが参加しました。ジンバブエがゲスト・オブ・オナーとして招かれたのは今回が初めてです。
バンダ氏は、このフォーラムを「洞察に富み、タイムリーな機会だった」と振り返ります。その背景には、2025年のUN Tourism総会に関連して、ジンバブエの観光相が副議長を務めることになっており、国際的な観光分野で同国が存在感を高めつつあるという事情があります。
今回の参加目的は明確でした。世界の優れた事例から学び、自国をレジリエントで包摂的な観光地として位置づけ直すこと。観光が外部ショックにも揺らぎにくく、地域社会に幅広い恩恵をもたらす仕組みづくりがテーマとなりました。
季節依存から通年型へ 黒竜江省の経験に学ぶ
バンダ氏が特に注目したのは、開催地・黒竜江省が歩んできた変化です。黒竜江省は、かつては冬のイメージが強い季節型の観光地でしたが、現在は一年を通じた観光経済へと転換を進めています。
この経験は、ジンバブエにとっても非常に示唆に富むものだといいます。バンダ氏は、「一つの観光商品や一つの季節に頼るわけにはいかない。観光は通年で提供され、さまざまな市場セグメントに訴求する必要がある」と強調しました。
四季や特定の自然資源に依存しすぎれば、収入はどうしても不安定になります。黒竜江省の事例は、冬の観光資源を核にしながらも、文化やイベント、都市と農村をつなぐ新しいコンテンツを組み合わせることで、年間を通じた需要を生み出せることを示しています。
文化とコミュニティを核にした観光へ
今回のフォーラムでバンダ氏がもう一つ強く意識したのが、文化遺産を基盤とした観光という考え方です。それは、単に歴史的な建物や遺跡を見せるということではなく、「人とコミュニティを観光開発の中心に据える」という発想です。
このアプローチを踏まえ、ジンバブエでは次のような観光商品を拡充しようとしています。
- ガストロノミー・ツーリズム(食文化を楽しむ観光)
- コミュニティ・ツーリズム(地域住民が主体となる体験型観光)
- 女性主導のマーケットやビジネス
- 農場から食卓までをつなぐファーム・トゥ・テーブルの体験
- 年間を通じて開催される大小さまざまなイベント
こうした取り組みは、観光のオフシーズンに生じがちな「仕事の空白」を埋めることを目指したものでもあります。シーズンごとの浮き沈みを和らげ、都市部と農村部のどちらにも安定した生計手段を生み出すことが狙いです。
観光はすでに経済の柱 次の課題は質の転換
観光はすでにジンバブエ経済における重要な柱になりつつあります。2024年には、観光セクターが国内総生産の約17パーセントを占め、鉱業、農業に次ぐ第3の経済セクターとなりました。直接・間接の雇用も多く創出しているとされています。
ここからの焦点は「量」だけでなく「質」です。より多様で、コミュニティに根ざした観光商品を増やし、環境や文化への配慮を保ちながら、観光の裾野を広げていけるかどうかが問われています。文化主導の観光戦略は、そのための一つの解となりそうです。
中国本土との観光協力は「旅行者」だけにとどまらない
ジンバブエにとって、中国本土との関係は、単に中国本土からの観光客を増やすという話にとどまりません。バンダ氏は、今回のような国際フォーラムへの参加を通じて、次のような協力の可能性を挙げています。
- 観光インフラや関連ビジネスへの投資
- 観光人材の育成やスキル開発
- 観光政策や制度設計に関する知見の交換
- 国際市場に向けた共同プロモーション
こうした協力は、UN Tourismの枠組みのもとで進む中国・アフリカ観光協力の一部でもあります。観光を通じて経済だけでなく、人と人とのつながりを広げていこうという発想です。
バンダ氏が特に評価するのが、中国本土における文化と観光の統合です。農村振興と観光を結びつけたり、無形文化遺産を守りながら観光資源として活かしたりする取り組みは、ジンバブエにとっても学ぶ点が多いといいます。
バンダ氏は「文化は観光の基盤だ」と述べ、中国本土で育まれている文化への誇りや、国内観光の活性化に注目しています。ジンバブエも、国内の人々が自国の文化を再発見し、それを自信を持って外に発信していくプロセスを重視し始めています。
鍵を握るのは若者と人と人のつながり
今後に向けてバンダ氏が強調するのは、人と人の交流の重要性です。特に若者同士の交流は、将来の観光需要だけでなく、相互理解や協力の土台をつくるうえでも欠かせないと考えられています。
必要なのは物理的な移動手段だけではありません。バンダ氏は、「接続性」は交通やインフラの問題にとどまらず、人々が自分たちの文化とどうつながるかという、より深いレベルでの結びつきだと指摘します。
ジンバブエが目指す文化主導の観光は、旅行者を増やすための手段であると同時に、自国の文化を見つめ直すプロセスでもあります。黒竜江省や中国本土の取り組みとの対話を重ねながら、アフリカの観光のあり方にも、静かな変化が広がりつつあります。
観光を通じて、文化を守り、コミュニティを支え、国際的なつながりを深めていく。その試みが、ハルビンのフォーラムからジンバブエへ、そしてアフリカ各地へと波紋のように広がっていくかどうか。今後の展開が注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








