春節の除夕、老舗レストランの厨房で起きていること——王培新シェフの「一皿の願い」 video poster
2026年の春節(旧正月)を迎えたこの時期、中国本土の老舗レストランでは「除夕(旧暦の大晦日)」の厨房が一年で最も熱を帯びます。扉の向こうで何が起きているのか——そこには、料理を通じて受け継がれる願いと、静かな革新がありました。
扉の向こうは、時間が速く流れる場所
除夕の夜、店内が家族連れの会食で満ちていくほど、厨房は逆に“言葉が減っていく”空間になります。段取り、火加減、盛り付け。誰かの合図を待つのではなく、互いの動きを読み合って前に進む。年に一度の大一番は、華やかな祝祭の裏で、淡々とした集中によって支えられています。
皿洗いから数十年、今も中華鍋の前に立つ料理人
その中心にいるのが、王培新(ワン・ペイシン)シェフです。数十年前、皿洗いとして厨房に入り、長い時間をかけて鍋前へ。今も除夕の夜は、最も忙しい持ち場である中華鍋の前に立ち続けています。
王シェフが語るのは、派手な成功談よりも「続けてきたこと」の重みです。料理は作り手の経歴を語りますが、春節の夜はとりわけ、積み重ねた手順がそのまま店の信頼に変わる瞬間でもあります。
「一皿ごとに願いが入る」——春節料理の意味
春節の食卓は、味だけでなく“意味”が並びます。王シェフは、どの皿にも願いが宿るといいます。豪華さは目的ではなく、家族の健康、商売の順調、学業の前進といった思いを、料理の形に落とし込む作業です。
- 同じ料理でも同じ夜はない:客層や席の流れで、出す順番や温度管理が変わります。
- 速さより「整うこと」:忙しいほど、盛り付けの輪郭や香りの立ち方に店の技が出ます。
- 食べる時間を設計する:家族の会話が途切れないよう、皿の間合いも計算に入ります。
伝統は固定ではなく、更新されていく
春節は「守る」季節に見えますが、厨房では同時に「変える」季節でもあります。食材の扱い方、火力の当て方、仕込みの省力化。伝統の型を崩さない範囲で、より確実に、より再現性高く届ける工夫が積み重なります。
王シェフの仕事は、単に昔ながらを繰り返すことではありません。記憶に残る味を守りながら、現場で起きる小さなズレ(気温、食材の状態、注文の波)を吸収し、結果として「今年の除夕の一皿」に仕上げていく。その調整力が、老舗の“変わらない安心”を作っています。
祝祭の夜に見える、仕事と家族の距離
除夕は多くの人にとって団らんの時間ですが、厨房の人々にとっては稼働のピークでもあります。だからこそ、料理人が鍋を振るう理由が「売上」だけで語れなくなる夜でもあります。誰かの再会や節目を、失敗できない温度で支える。静かな責任感が、熱と湯気の向こうに残ります。
春節の料理は、食べる側の記憶だけでなく、作る側の記憶も積み上げていく——除夕の厨房は、そのことをあらためて感じさせる場所でした。
Reference(s):
cgtn.com








