中国本土、軌道上でAI計算を実証 「三体」衛星群が10モデル稼働
2026年2月現在、中国本土で開発が進む「宇宙で計算するAI基盤」が、軌道上でのモデル稼働と衛星間ネットワークを実証しました。地上に降ろしてから解析する従来型ではなく、データの一部を宇宙で処理して届ける流れが現実味を帯びてきています。
何が起きた?──「Three-Body Computing Constellation」の進捗
浙江ラボ(Zhejiang Lab)は、海外のパートナーとともに開発した宇宙コンピューティング構想について、衛星コンステレーション(多数の衛星群)での成果を公表しました。
「Three-Body Computing Constellation(“三体”計算コンステレーション)」と呼ばれる宇宙計算コンステレーションの最初の12基は、2025年5月に打ち上げられました。その後、約9カ月の軌道上試験を経て、次の中核機能が確認されたといいます。
- 衛星間のネットワーキング(リンク確立)
- 軌道上での計算処理
- AIモデルの軌道上デプロイ(配備・稼働)
- 科学観測機器(ペイロード)の検証
軌道上で10個のAIモデルが動く──「8B」クラスも
今回の衛星群では、軌道上に10個のAIモデルを配備したとされています。中でも注目されるのが、
- 80億(8-billion)パラメータのリモートセンシング(地表観測)モデル
- 80億(8-billion)パラメータの天文「時間領域」モデル(時間変化する天体現象の解析を想定)
で、いずれも軌道上で稼働するAIとして世界最大級のパラメータ規模に入る、とラボ側は説明しています。パラメータはAIの“規模感”を示す指標で、一般に数が増えるほど表現力が増す一方、計算や運用の難度も上がります。
雪に覆われた地表でも自動判別──2025年11月の実証
浙江ラボによれば、2025年11月にはリモートセンシングモデルが中国本土北西部の189平方キロメートルを対象にインフラ調査(インフラ・センサス)を実施。積雪が厚い条件でもスタジアムや橋を自動識別したといいます。
ガンマ線バーストを99%で分類──「宇宙で素早く仕分ける」
天文学分野では、宇宙X線偏光検出器を搭載した2基の衛星が、ガンマ線バースト(高エネルギーの突発現象)を軌道上で高速分類するAIモデルを運用。99%の精度で分類し、データ伝送や地上処理にかかる時間を大幅に減らしたとしています。
「宇宙で計算して、必要な形で届ける」──帯域と時間のボトルネックをどう変えるか
衛星観測の課題の一つは、撮ったデータをすべて地上に送るには通信帯域(送れる量)と時間が足りない場面があることです。そこで、宇宙側でデータをある程度“要約”したり、必要な部分だけ抽出したりできれば、使い方が変わってきます。
浙江ラボの李超(Li Chao)氏は、「コンピューティング・コンステレーションがあれば、データの一部を宇宙で処理し、そのまま利用者に届けられる」と説明しています。
同ラボは、この取り組みが深宇宙探査、スマートシティ、自然資源調査などの応用につながる可能性を挙げています。観測→下ろす→解析、という一本道ではなく、観測→宇宙で一次処理→必要データを配信という設計思想が前面に出てきた格好です。
次の焦点:衛星間リンクと「1000基超」計画が示すスケール
今回、チームは6基の衛星間リンクも達成したといいます。コンステレーションが“群れ”として働くには、衛星同士がつながり、計算やデータの受け渡しを分担できることが重要になります。
さらに計画が進み、1000基超が軌道にそろった場合、処理能力は毎秒10京京回(100 quintillion operations per second)に達する見込みだとしています。宇宙での計算資源が増えるほど、「どの処理を宇宙で行い、どこから地上に渡すか」という設計が、インフラの競争力そのものになっていきそうです。
軌道上AIはまだ“できること”と“任せるべきこと”の線引きが固まりきっていない領域ですが、今回の実証は、衛星が単なる観測装置から計算ノードへと役割を広げつつあることを印象づけます。今後は、ネットワーク規模が増えたときの運用設計や、どんな分野で価値が先に立ち上がるのかが注目点になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








