40万年前の謎を解く鍵に。中国の研究チームがホモ・エレクトスの分子データを世界で初めて抽出
人類進化の歴史における大きな空白を埋める、画期的な研究成果が発表されました。中国本土の研究チームが、約40万年前のホモ・エレクトスの歯から世界で初めて分子情報を抽出することに成功し、古代人類と現代人の進化的なつながりを示す新たな証拠を提示しました。
この研究は、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所によって行われ、権威ある科学誌『Nature』に掲載されました。
広範囲にわたる個体群の共通性
研究チームは、北京の周口店(しゅうこうてん)、安徽省の合県(ごうけん)、そして河南省の孫家洞(そんかどう)という3つの異なる遺跡から出土したホモ・エレクトスの歯の化石を分析しました。
その結果、これらの異なる地域にいた個体群が、実は同じ進化系統に属していたことが明らかになりました。これにより、当時のホモ・エレクトスがどのように分布し、どのような集団として存在していたのかという理解が大きく前進します。
現代人とホモ・エレクトスを結ぶ「間接的な絆」
今回の研究で特に注目すべきは、ホモ・エレクトスの遺伝的物質がどのように現代人に受け継がれたかという点です。
- デニソワ人を介した継承: ホモ・エレクトスの遺伝情報が、デニソワ人という別の古代人類を経由して、間接的に現代人の集団に入り込んだ可能性が示唆されました。
- 長年の疑問への回答: ホモ・エレクトスが現代人と遺伝的なつながりを持っていたのかという、古人類学における長年の問いに答えを出す重要な手がかりとなります。
技術的ブレイクスルー:タンパク質解析の可能性
ホモ・エレクトスはアフリカを出てユーラシアや東南アジアへ広がった初期の人類ですが、古代DNAは分解されやすいため、これまでその遺伝的特徴を解明することは極めて困難でした。
そこで研究チームは、DNAではなく「タンパク質」に着目したアプローチを採用しました。
- 非破壊検査: まず化石を傷つけない方法で古代タンパク質をスクリーニングしました。
- 低侵襲な抽出: 酸エッチングという手法を用い、エナメル質表面から極少量の物質を慎重に抽出しました。
- 高度な検証: 3つの専用ソフトウェアを用いて相互検証を行い、固有のエナメル質タンパク質を特定しました。
この成果により、東アジアにおける古代人類のプロテオーム(タンパク質総量)研究の限界は、従来の約16万年前から、少なくとも40万年前まで大幅に押し広げられることになります。
新たな分析ツールの開発:個体の性別判定へ
さらに今回の研究では、タンパク質の特性に基づいた「古代人類の性別判定法」という新しい手法も開発されました。
骨格などの形態的な特徴が不十分な化石や、DNAが保存されていない歯の化石であっても、この手法を用いれば正確に性別を判定できる可能性があります。これは今後の古人類学研究において、非常に信頼性の高いツールになると期待されています。
Reference(s):
Chinese scientists recover first molecular data from Homo erectus
cgtn.com