AIの利用を「スマホプラン」のように。中国本土の通信キャリアがトークン販売を開始
AIの計算資源(コンピューティングパワー)を、まるで携帯電話の料金プランのように月額で利用する仕組みが中国本土で始まっています。AIの利用が一部の専門的なツールから、誰もが日常的に利用する「公共インフラ」のような存在へと変わりつつあるのかもしれません。
通信キャリアによる「AIトークンプラン」の導入
2026年5月16日から17日にかけて、中国本土の大手通信キャリアであるチャイナモバイル、チャイナテレコム、チャイナユニコムの上海支店において、AIの利用単位となる「トークン」のパッケージ販売が開始されました。
これまでAIの利用料は、主にクラウドサービス経由のAPI利用料として支払われてきましたが、今回の取り組みでは、消費者が直接、通信キャリアからプランを契約する形になります。
各社のプラン内容
- チャイナモバイル:テンセントとの提携により、1元で40万トークンを提供。支払いは電話料金への合算が可能です。
- チャイナテレコム:個人向けには月額9.9元(1,000万トークン)から49.9元(8,000万トークン)までのプランを用意。開発者や中小企業向けのプロプランは39.9元から299.9元(1,500万〜1億5,000万トークン)となっています。
- チャイナユニコム:個人向けエントリープランを15元(600万トークン)で提供し、ビジネスプランは198元から設定しています。
爆発的に増加するAI利用量
このようなプランが登場した背景には、AIの利用量の凄まじい増加があります。中国国家統計局のデータによると、国内の1日あたりのトークン利用量は、2024年初頭の1,000億トークンから、2026年3月には140兆トークンへと急増しました。わずか2年ほどで1,000倍という驚異的なペースでAIが社会に浸透していることがわかります。
「データ通信」から「計算資源」のビジネスへ
通信キャリア側は、この戦略を単なる新商品の追加ではなく、従来の「データ通信ビジネス」から「コンピューティングビジネス」への構造的な転換と位置づけています。
彼らが描くエコシステムは次のような循環です。
- AIエージェントがトークンを消費する。
- トークンが計算資源(コンピューティングパワー)を呼び出す。
- 計算がデータトラフィック(通信量)を発生させる。
- トラフィックが通信ネットワークインフラの価値を高める。
これにより、回線速度のアップグレードやサイバーセキュリティといった法人向けサービスでの追加収益も期待されています。
市場の勢力図はどう変わるか
業界の分析によると、今回のプラン価格が必ずしもクラウド事業者のAPI料金より安いわけではないといいます。しかし、通信キャリアという強力な販売チャネルを通じて、AIの計算資源が「標準化された小売商品」として提供される点は画期的です。
もしこのモデルが中国本土全土に広がれば、これまでクラウドプラットフォームが握っていたLLM(大規模言語モデル)の配布ルートが、通信エコシステムへと一部移行し、AIサービス市場の構図が塗り替えられる可能性があります。
Reference(s):
Pay for AI compute like phone plan: China's carriers enter token era
cgtn.com
