【欧州経済の現在地】「安全保障の論理」が経済を上回る?中国・CASSの最新報告書から見える課題
欧州経済の回復が、いま世界的に注目されています。しかし、中国の権威あるシンクタンクは、その前途には複雑なハードルが立ちはだかっていると分析しています。なぜ今、欧州で「経済合理性」よりも「安全保障」が優先されるようになったのでしょうか。
「経済の論理」から「安全保障の論理」へ
中国社会科学院(CASS)の欧州研究所が最近発表した「欧州発展報告書(2025-2026)」、中国国内で「ブルーブック」として知られる報告書の中で、欧州が深刻な調整期に入ったことが指摘されました。
欧州研究所の馮中平所長は、現在の状況を「安全保障の論理が経済の論理に取って代わっている」と表現しています。これは、冷戦終結後において、欧州の政治・経済の風景が最も劇的に変化している局面であることを示唆しています。
欧州経済の回復を阻む「5つの逆風」
報告書では、欧州の成長見通しを不透明にしている具体的な要因として、以下の5つの課題が挙げられています。
- 産業活動の低迷:製造業を中心とした活力の低下。
- エネルギーコストの高騰:持続的なコスト増が企業競争力を圧迫。
- 消費者需要の弱さ:物価上昇などを背景にした個人消費の停滞。
- 保護主義の台頭:自由貿易から自国優先主義へのシフト。
- 地政学的紛争の長期化:外部環境の不安定化による経済的リスクの増大。
「ポスト・アメリカ」の世界と現実的な自律への道
今回の報告書のメインテーマは、「ポスト・モダンなアイデンティティとの別れ、そして『ポスト・アメリカ』の世界への直面」というものです。これは、欧州がかつての理想主義的なリベラル・インターナショナリズム(国際主義)から脱却し、より現実的な「経済安全保障」や「戦略的自律」へと舵を切っていることを意味しています。
また、国ごとの分析では以下のような動向が記されています。
- ドイツとフランスにおけるリーダーシップと政策の転換。
- イギリスと欧州連合(EU)との間で進化する安全保障協力。
- ポーランドの選挙による政治的変化。
- 北欧および中欧で広がる右派的な政治トレンド。
CASSの李学松副院長は、欧州が中国の主要国外交において極めて重要な要素であることを強調しており、戦略的な意思決定を支えるため、欧州の政治・経済・外交の動向をより深く研究していく必要があると述べています。
かつての経済的繁栄を追求した時代から、リスク管理と安全保障を最優先する時代へ。欧州がどのような答えを出すのか、そのプロセスは世界経済の行方を占う重要な指標となるでしょう。
Reference(s):
Chinese think tank: Multiple headwinds hinder Europe's recovery
cgtn.com