AIハブへ加速する香港:街中でのAI教育とロボット店舗が導く未来
香港特別行政区が、人工知能(AI)の世界的ハブとなるための取り組みを本格化させています。大規模なコンピューティング基盤の整備から、住民一人ひとりのAIリテラシー向上まで、ハードとソフトの両面から社会実装を急ぐ姿勢を鮮明にしています。
日常に溶け込む「具現化AI」:ロボット店長の登場
最近、香港の陳茂 vun(ポール・チャン)財政司司長が発表した内容によると、中国本土の「具現化AI(Embodied AI)」企業が、香港の紅磡(ホンハム)ウォーターフロントに初の完全自律型ロボット小売店をオープンさせます。
この店舗の最大の特徴は、ロボットの店長が運営を担う点です。多言語でのカスタマーサービスを24時間体制で提供し、AIが単なる画面の中の存在ではなく、物理的な形態を持って日常生活に組み込まれる未来を象徴しています。
圧倒的な計算能力の拡充へ
AI開発の心臓部となるコンピューティング能力の強化にも、香港は大規模な投資を行っています。現在の状況と今後の計画は以下の通りです。
- 現状の計算能力: 5,000 PFLOPS(ペタフロップス)に到達。
- 今後の展望: 「Sandy Ridgeデータ施設クラスター」の建設を進めており、2032年までには180,000 PFLOPSまで拡大する計画です。
これは現在の約36倍という圧倒的な数値であり、大規模言語モデル(LLM)や医療AIなどの高度な研究・開発を支える強固なインフラとなります。
「AI+産業」と「すべての人へのAI教育」
インフラ整備だけでなく、それをどう活用するかという「出口戦略」にも重点が置かれています。政府は「AI+産業」と「すべての人へのAIトレーニング」という二段構えの戦略を打ち出しました。
1. 産業への統合(AI+ Industry)
専門家や学者、企業代表で構成される委員会を設立し、まずは以下の分野でのAI活用を優先的に探ります。
- ライフサイエンス・ヘルスケア
- 具現化AI(ロボティクス)
- 交通、文化クリエイティブ産業、持続可能な開発
2. 住民への教育(AI training for all)
テクノロジーの恩恵を一部の専門家だけでなく、住民全体が享受できるよう、5,000万香港ドル(約638万米ドル)の予算を計上しました。今後2会計年度で200以上のイベントを開催し、約5万人の参加者にAIリテラシーを普及させる計画です。
中小企業のデジタル転換を支援
また、経済の基盤となる中小企業(SME)への支援も忘れていません。今年度は3億香港ドルを投じ、「デジタル転換支援パイロットプログラム」を強化します。これにより、中小企業がAIやサイバーセキュリティ・ソリューションを導入し、消費トレンドの予測やマーケティングの最適化、日常業務の自動化を実現することを後押ししています。
高度な計算資源の確保から、街中のロボット店舗、そして住民への教育まで。香港が目指すのは、テクノロジーが静かに、しかし確実に生活の質を底上げする社会の姿かもしれません。
Reference(s):
HKSAR accelerates AI development, launches citywide AI training drive
cgtn.com