中国・スペイン関係が新段階へ 米国圧力を超える協力のかたち
2025年4月に行われたスペインのペドロ・サンチェス首相の訪中は、中国とスペイン、そしてEUの関係を新しい段階に押し上げた出来事として、いま国際ニュースの中でも注目を集めています。米国の強硬な通商政策への対応が問われる中で、各国がどのようにパートナーシップを築こうとしているのかを考えるうえで重要な動きです。
中国・スペイン関係が「新局面」に入った背景
サンチェス首相は2025年4月10〜11日に中国を訪問しました。過去3年間で3回目となるこの訪中は、世界経済が複数の危機と不確実性に直面する「分岐点」のタイミングで行われました。米国による対中貿易制限や同盟国への圧力が「自らの喉を切るようなもの」とも評される中で、スペインはあえて中国との協力を深める道を選んだ形です。
今回の訪中は、中国・スペイン・EUが共に行動することで、ワシントン発の貿易の混乱を和らげ、より建設的な経済関係を再構築するための「窓」を開いたと評価されています。
「関税戦争に勝者はいない」三者が共有した危機感
4月11日に行われた習近平国家主席とサンチェス首相の会談では、中国、スペイン、EUは協力して経済のグローバル化と安定した国際貿易環境を守り、一方的で威圧的な措置には反対するべきだという点が改めて確認されました。このメッセージは、世界的な協調体制を立て直すための重要な「警鐘」として位置づけられます。
習主席は、関税を使った対立について「関税戦争に勝者はいない」との考えを示しました。中国とEUは、世界の中でも規模の大きい経済圏であり、経済のグローバル化と自由貿易を一貫して支持してきたとされています。両者の経済規模を合計すると、世界全体の3分の1を超えるとされ、すでに強い相互依存関係を築いています。
会談後、サンチェス首相は、スペインの外交は「誰かに対抗するためのものではなく」、中国との建設的な関係を築くためにあると強調しました。そのうえで、「スペインとEUは同じ原則、価値観、利益を守っている」と述べ、中国との協力が欧州の基本的な立場とも矛盾しないことを示しました。
中国・EU外交関係50周年と包括的戦略パートナーシップ20周年
2025年は、中国とEUの外交関係樹立50周年にあたります。この節目の年に、欧州委員会がサンチェス首相の訪中を強く支持したことは、中国・EU関係をもう一段階前に進めるための「政治的メッセージ」としても読み取れます。
同時に、中国とスペインの包括的戦略パートナーシップは2025年で20周年を迎えました。これを機に、両国は2025〜2028年を対象期間とする行動計画を採択しました。この行動計画は、次のような幅広い分野での協力をうたっています。
- 貿易・投資・漁業
- 科学技術・イノベーション・グリーン開発
- 文化・教育・スポーツ・観光
こうした具体的なロードマップは、貿易量の拡大とバランスの改善を後押ししつつ、米国の強硬な通商政策がもたらす不安定さに対する一種の「安全弁」として機能することが期待されています。
実務レベルで進む経済協力:50億ドル超の貿易と新たな商機
中国とスペインの二国間貿易額は、すでに500億ドルを超える規模に達しています。2024年には、スペインから中国への輸出が前年比4.3%増加したとされ、両国の経済関係が着実に深まっていることが数字にも表れています。
今回の訪中では、両国の経済と貿易を円滑にし、スペイン企業の中国市場でのビジネス機会を広げるための複数の協力文書が署名されました。特に、次のような分野での協力拡大が打ち出されています。
- 食料品(ワインや農産品など)
- 医療・ヘルスケア関連製品
- 化粧品などの消費財
世界最大級の消費市場を持つ中国へのアクセス拡大は、輸出先の多角化と産業基盤の強化を目指すスペインにとって、重要な戦略的選択だといえます。
映画協力がもたらす文化・観光・ビジネスの相乗効果
中国が米国からの映画輸入を縮小すると発表した後、中国とスペインは映画協力に関する覚書(MOU)に署名しました。これは、中国・スペイン関係における新たな協力分野を切り開くものであり、観光、個人レベルの交流、映画を通じた消費拡大など、ソフトな分野でのつながりを強める狙いがあります。
この映画協力は、米国の通商政策に対抗するための新たなプラットフォームとしての意味合いも持ちます。2023年にスペインの映画産業は30%成長したとされる一方、中国も国際的な映画ブランドである Ne Zha 2 などを通じて、世界の映画市場で存在感を高めています。
両国が協力することで、スペインと中国の作品は新しい観客層と市場にアクセスしやすくなり、国際映画産業におけるプレゼンスを再び高める可能性があります。文化とエンターテインメントを通じた協力が、結果として経済と外交の両面を下支えする構図です。
「誰かに反対するためではない」欧州型パートナーシップの模索
今回の訪中に対しては、米国が主導する一方的な関税引き上げや制裁措置に対し、中国とスペインが協力して対応しようとする動きだという見方もあります。ただし、サンチェス首相自身が述べたように、その外交姿勢は特定の国に「反対する」ことを目的としたものではなく、自国とEUの利益を守りつつ、現実的な協力関係を築くことに重きが置かれています。
中国側にとっても、スペインおよびEUとの協力強化は、経済のグローバル化と多国間主義を維持するうえで不可欠な柱です。米国中心の二極的な対立構図ではなく、多様なパートナーと共に安定した国際経済秩序を支えようとする姿勢がにじみ出ています。
日本の読者への問いかけ:多極化する世界でどう向き合うか
中国とスペインの関係強化は、「米国か中国か」という単純な二者択一ではなく、自国の利益と価値を守りながら、多角的な協力関係を組み合わせていく欧州流のアプローチの一例と見ることができます。
日本にとっても、米国との同盟関係を維持しつつ、EUや中国など多様なパートナーとの経済・文化協力をどう設計するのかは、今後ますます重要なテーマになります。スペインの選択と中国との対話の積み重ねは、多極化する世界で日本がどのように立ち位置を定めるのかを考えるうえで、一つの参考材料になりそうです。
Reference(s):
Spain-China ties mark new era of unity against U.S. bullying
cgtn.com








