教育評価が大転換 ETSが語るAI時代のテストと中国パートナーシップ video poster
地政学的な不確実性が高まるなか、グローバル教育とテスト業界は大きな転換点を迎えています。世界最大の民間教育テスト・評価機関であるEducational Testing Service(ETS)は、この変化をどう乗り越え、AI時代の学びの基準をつくろうとしているのでしょうか。
国際ニュースの焦点:揺れるグローバル教育とテスト産業
国際ニュースの文脈でも、教育評価のゆくえは重要なテーマになりつつあります。地政学的な緊張や往来の制限などの「向かい風」は、世界中の教育機関や試験ビジネスに影響を与えています。受験生の移動、留学、海外大学への進学など、多くの場面で標準化テスト(いわゆる共通テスト型の試験)が使われているからです。
こうした環境変化は、ETSのような試験機関にとってリスクであると同時に、教育評価そのものを見直す大きなチャンスでもあります。今回、番組「The Hub」でWang Guan氏がETSの上級副社長ロヒト・シャルマ氏にインタビューし、テストと評価の世界で起きている「大転換」について議論しました。
ETSが目指す「標準テストの再発明」
インタビューの中心にあったのは、「標準化テストをどう再構築するか」という問いです。ETSは、最新のテクノロジー、とくにAI(人工知能)を活用しながら、従来型の一発勝負の試験では測り切れない力を評価しようとしています。
AIで「一斉テスト」から「個別最適」へ
AIを活用することで、テストは次のような方向へシフトしつつあります。
- 一律の問題を一斉に解くスタイルから、学習者ごとに難易度や内容が調整される「個別最適化」された出題へ
- 点数だけで合否を決める評価から、強み・弱みを細かくフィードバックし、学びの改善につなぐ評価へ
- 知識の暗記中心のチェックから、思考力・判断力・コミュニケーション能力など、実社会で役立つコンピテンシー(能力)を測る評価へ
シャルマ氏は、AIが単なる自動採点の道具にとどまらず、「どのような力を、どのような形で評価するか」という教育の根本に関わる技術になりつつあることを強調しました。
中国パートナーとともにつくるコンピテンシー教育の枠組み
今回の対談で注目されたもう一つのテーマが、コンピテンシー(資質・能力)に基づく教育フレームワークを、中国のパートナーとともに共創していく構想です。ETSは、中国の教育機関や関係組織と協力しながら、グローバルに通用する能力ベースの評価モデルを模索しています。
こうした枠組みで重視されるのは、例えば次のような力です。
- 言語や文化の違いを越えて協働するコミュニケーション力
- 未知の課題に取り組む問題解決力と批判的思考力
- デジタルリテラシーやAIリテラシーといったテクノロジーへの理解
中国との協働は、アジア発の教育モデルを世界の議論につなぐ動きでもあります。グローバルな教育評価の基準づくりに、中国の視点と経験が組み込まれることで、多様な学び方やキャリア観を反映した新しい評価のかたちが生まれる可能性があります。
企業と大学が求める「AIに強い、総合力のある人材」
シャルマ氏との対談では、「企業や高等教育機関が、どのような人材を求めているのか」も重要な論点になりました。キーワードは、専門力だけではなく、AIを使いこなせる総合的な人材像です。
インタビューで浮かび上がったポイントを整理すると、企業や大学は次のような人材を求めています。
- AIツールを前提とした環境で、自ら学び続ける力があること
- 専門知識に加え、チームで課題解決に取り組む協働力を持っていること
- データやテクノロジーに対して倫理的な感覚と責任感を持っていること
こうした力を「入学試験の点数」だけで判断するのは難しくなっています。そのためETSは、評価の観点自体を見直し、企業や大学が本当に知りたい能力を、より立体的に示せるようなテストやアセスメント(評価ツール)への転換を進めています。
受験生と学習者にとって何が変わるのか
では、この国際ニュースの動きは、学習者や受験生にとって何を意味するのでしょうか。今回の議論から見えてくるのは、次のような変化です。
- 暗記中心の勉強だけではなく、「自分はどんな力を身につけたいのか」を意識することが重要になる
- AIを禁止された環境での点数だけでなく、「AIとどう共存し、どう使いこなすか」も評価の対象になる
- テスト結果が一度きりの判定ではなく、学びの改善やキャリア設計に生かされるフィードバックとして活用される
2025年現在、AIは多くの仕事や学びの現場に組み込まれつつあります。そのなかで、ETSのような評価機関がどのような基準を提示するかは、各国・各地域の教育政策や企業の採用方針にも影響していきます。
今回の「The Hub」での対談は、「テスト」と「評価」が単なる合否判定の仕組みではなく、世界の学びのあり方そのものを方向づけるインフラになりつつあることを示しました。国際ニュースとしての教育評価の動きを追うことは、自分や次の世代の学びの未来を考えることにもつながります。
Reference(s):
cgtn.com








