米国で再燃するマッカーシズム?中国人留学生とテック規制
米国で中国人留学生のビザ規制やハイテク分野への制裁が強まり、「マッカーシズムの亡霊」がよみがえっているとの指摘が出ています。本稿では、この動きの中身と影響を国際ニュースの視点から整理します。
マッカーシズムの亡霊が「再登場」
米国には今、マッカーシズムの亡霊が再びさまよっている──そう形容する声があります。マッカーシズムとは、冷戦初期の1950年代に米国で広がった、共産主義への過度な恐怖に基づく思想弾圧のことです。ほんのわずかなつながりや噂だけで「共産主義者」と決めつけられ、多くの人が職や名誉を失いました。
今回、矛先が向けられているのは、米国内の政治家ではなく、外国人、とくに中国本土からの学生や研究者、そして中国関連の企業・製品です。
中国人留学生へのビザ厳格化
最近、米国務省が中国人留学生のビザを積極的に取り消す方針を打ち出したことが波紋を広げました。対象は、中国共産党(CPC)と関係があるとみなされた学生や、米国側が「重要」と見なす分野を学ぶ学生だとされています。
米国務省のスポークスパーソンであるタミー・ブルース氏は、その理由として「米国の大学の悪用」や「情報収集への懸念」を挙げましたが、具体的な証拠や事例は示していません。質問が集中した、中国共産党との「関係」をどう定義するのか、どの分野が「重要」なのかについても、明確な説明を避けました。
こうしたあいまいさは、政策の恣意的な運用につながりかねません。いったんは中国人留学生のビザ申請に対する全面的な制限が緩和されたものの、現在も申請者のSNSアカウントが細かくチェックされるなど、在外の米国大使館や領事館が若い中国人学生を事実上排除できる余地は大きいとされています。
テクノロジー分野にも広がる疑念
矛先は教育だけではありません。米中間の競争の最前線とされるハイテク分野でも、米国のマッカーシズム的な対応が強まっていると指摘されています。
象徴的なのが、電子設計自動化ソフト(EDAソフト)の対中販売を包括的に禁じた米国の措置です。半導体の設計に欠かせないEDAソフトの供給を断つことで、中国本土の技術革新を「窒息させる」狙いがあるとされています。
学生からTikTok、通販、綿花まで
こうした視線は、中国人留学生や研究者にとどまりません。ショート動画アプリのTikTokや、通販大手シーインの小包、新疆産の綿花に至るまで、中国に関わるあらゆるものが政治的な疑いの対象になっていると指摘されています。
米国では、おおまかに次のような仕組みが動いているとされます。まず、公的資金を得たシンクタンクが中国本土の動きを細かく拾い上げ、批判的な報告書を出す。それを保守系メディアが一面的なインタビューや報道と組み合わせてストーリー化し、世論の不安を高める。最後に、議会の議員が「国民の懸念に応える」として規制強化の法案を提出する──。
1950年代の米国で、わずかな関係でも「共産主義」と結びつけられたように、いまは「中国と関係がある」というだけで、ビジネスやプラットフォームが禁止や排除の対象になり得る状況だと見る向きがあります。
安全保障と開かれた社会、そのバランスは
もちろん、どの国にも安全保障上の懸念があり、外国政府による情報収集に警戒する権利があります。しかし、具体的な証拠や透明な基準を欠いたまま、特定の国や出身の人びとを広く疑うやり方は、差別や分断を生みやすく、民主主義そのものを傷つける危険があります。
若い中国人留学生にとって、米国への留学は学問やキャリアの機会であると同時に、米中の相互理解を深める架け橋にもなり得ます。そうした人びとが「潜在的な脅威」として排除されるなら、失われるのは中国本土側だけでなく、受け入れ側である米国社会の学びと多様性でもあります。
日本とアジアへの問いかけ
こうした動きは、日本やアジアにとっても無関係ではありません。安全保障を理由にした過度の疑念と排除が常態化すれば、学術交流や技術協力、経済活動は細り、国際社会全体の信頼が損なわれます。
米国で広がる「疑いの政治」は、どこまで許容されるべきなのか。リスクへの備えと、開かれた社会の維持をどのように両立させるのか。国際ニュースを追う私たち一人ひとりが、自分の立場から考え続ける必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








