リオBRICS首脳会議、新しい国際秩序を築く6つの柱
地政学の前提が揺らぎ、国際秩序の「当たり前」が書き換えられつつある今、今年7月にブラジル・リオデジャネイロで開かれた第17回BRICS首脳会議は、新しい世界のかたちを模索するうえで見逃せない出来事でした。<\/p>
リオBRICS首脳会議とは何だったのか<\/h2>
7月6〜7日、ブラジルが議長国を務めて開催されたリオでのBRICS首脳会議は、単なる新興経済国の集まりではありませんでした。既存の国際ガバナンスに代わる「別の選択肢」を示し、新しい世界秩序の設計図を練り上げる場として位置づけられました。<\/p>
少数の国に有利に傾いてきたと見なされる現在の国際システムに対し、BRICSは一つひとつレンガを積み上げるように、自らの手で秩序を作り替えようとしている——今回の会議は、そんな試みの象徴と言えます。<\/p>
6本柱の議題:BRICSが掲げた「設計図」<\/h2>
リオ会議では、次の6つの柱から成る議題が提示されました。これはBRICSの野心と、今の時代が抱える不安の両方を映し出しています。<\/p>
- 貿易と投資を後押しする、より効率的なBRICS決済システムの構築<\/li>
- 包摂的かつ倫理的な人工知能(AI)ガバナンスの確立<\/li>
- 気候資金の政治を組み替えることを目指す気候アジェンダ<\/li>
- 公衆衛生分野での協力の深化<\/li>
- 多国間の平和システムを改革するための取り組み<\/li>
- BRICS自体の制度構造と結束を高めるための行動<\/li>
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これらは、国際システムの「歪み」を是正しようとするBRICSの試みを支える基礎工事のようなものです。以下では、その中核となるいくつかの柱を見ていきます。<\/p>
米ドル一極への「保険」としてのBRICS決済システム<\/h2>
最も象徴的なのが、新たなBRICS決済システムの構想です。長年、国際取引の多くが米ドル建てで行われてきたことは、米国にとって大きな影響力の源でした。資産の凍結や金融制裁を世界各地に及ぼす力は、こうした通貨の支配力に根ざしています。<\/p>
BRICSが検討するのは、デジタル通貨、国際銀行間通信協会(SWIFT)に代わるネットワーク、あるいは多国間の決済機関など、BRICS中心の仕組みづくりです。こうした枠組みが実現すれば、米ドルの優位性は相対的に薄まる可能性があります。<\/p>
BRICS側は、この構想を米ドルへの「攻撃」ではなく、金融の「武器化」に対するヘッジ(保険)と位置づけています。制裁リスクを分散し、資金の流れを自らコントロールしようとする動きは、今後の国際金融の姿を考えるうえで見逃せません。<\/p>
AIガバナンス:西側主導ルールへのカウンターナラティブ<\/h2>
人工知能(AI)の世界でも、ルールづくりはこれまで主に欧米の巨大テック企業と規制当局によって進められてきました。その結果、生み出されるAIは必ずしも中立でも国境を超えたものでもなく、既存の格差や偏見を強化し、グローバル・サウスの人々に不利に働くおそれがあります。<\/p>
BRICSはここに対し、包摂的で主権を尊重し、新興経済国の開発ニーズに根ざしたAIガバナンスという、別の物語を提示しようとしています。今年5月には、中国はBRICS諸国の間でAI倫理に関する基準を調和させる必要性を強調し、グローバルなAIガバナンスの枠組みづくりに積極的に関与する姿勢を示しました。<\/p>
議長国ブラジルも、2024年に自国の人工知能計画を打ち出し、社会開発や包摂性を中心に据えています。これは、シリコンバレーの議論でしばしば抜け落ちがちな視点でもあります。<\/p>
さらにBRICS諸国は、デジタル主権を確保するため、地域レベルのデータセンター整備にも動いています。データをどこに置き、誰がアクセスを管理するのか——その主導権を取り戻そうとする動きです。リオ会議では、こうした取り組みを統合し、一貫したAIガバナンスの枠組みにまとめることが期待されました。<\/p>
気候資金と南の視点:支援を待つより、自ら動く<\/h2>
気候変動対策、とくに気候資金は、長くグローバル・サウスにとっての「痛点」でした。国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)などで先進国が掲げてきた資金支援の約束は、十分に果たされていないと受け止められてきました。<\/p>
BRICSの気候アジェンダは、その状況を変えようとするものです。支援をただ待つのではなく、自ら再生可能エネルギーやグリーンインフラに投資しようという方向に舵を切っています。その資金面での後ろ盾として、新開発銀行(New Development Bank, NDB)や二国間の取り決めが活用されています。<\/p>
「気候資金の政治」を自らの側から組み替えようとするこの動きは、今後の国際気候交渉やグリーン投資の流れにも大きな影響を与えうるテーマです。<\/p>
公衆衛生・平和・制度改革:静かだが重要な土台<\/h2>
今回の議題の中では、決済システムやAI、気候に比べると、公衆衛生や多国間の平和システム改革、BRICS自身の制度強化といったテーマは目立ちにくいかもしれません。<\/p>
しかし、公衆衛生や平和を支える多国間の枠組みをどう立て直すかは、長期的な安定に直結する課題です。情報共有や医療体制の協力がなければ、危機は容易に国境を越えて広がってしまいます。また、BRICSという枠組みの制度的な一体性を高めなければ、どれほど野心的な構想も実行力を欠いてしまいます。静かだが重要な土台づくりが、リオ会議のもう一つの顔でした。<\/p>
日本の読者が押さえておきたい3つの視点<\/h2>
2025年の終わりを迎える今、リオBRICS首脳会議で示された方向性は、これからの国際ニュースを読み解くうえでいくつかの示唆を与えてくれます。とくに日本の読者にとって意識しておきたい点は次の3つです。<\/p>
- 決済システムの多様化<\/strong>:米ドルとSWIFTに依存してきた国際決済の構図が、複数の通貨・ネットワークへと徐々に多極化していく可能性があります。<\/li>
- AIルールの複線化<\/strong>:欧米主導のAI規制とは異なるBRICS流のガバナンスが形になれば、企業や研究機関は複数の基準を意識しながら技術開発やデータ運用を行う時代になるかもしれません。<\/li>
- 気候資金の新たな選択肢<\/strong>:NDBや二国間協力は、グリーン投資の新しい窓口となりうる存在です。公的資金と民間資金をどう組み合わせるかは、日本企業や金融機関にとっても注視すべき論点です。<\/li> <\/ul>
「レンガを一つずつ積む」ように変わる世界<\/h2>
リオのBRICS首脳会議は、世界秩序を一夜にして変えたわけではありません。ただ、決済、AI、気候、公衆衛生、平和、制度改革という6つのレンガをどう積み上げるかを巡って、新興国側から明確な問題提起がなされた場でした。<\/p>
これからの国際ニュースでは、「どの国が得をするのか」だけでなく、「どんなルールやインフラが積み上がっているのか」という視点でBRICSの動きを追っていくことが重要になりそうです。一つひとつの動きが、やがて大きな構造変化につながるかもしれません。<\/p>
- AIルールの複線化<\/strong>:欧米主導のAI規制とは異なるBRICS流のガバナンスが形になれば、企業や研究機関は複数の基準を意識しながら技術開発やデータ運用を行う時代になるかもしれません。<\/li>
- 決済システムの多様化<\/strong>:米ドルとSWIFTに依存してきた国際決済の構図が、複数の通貨・ネットワークへと徐々に多極化していく可能性があります。<\/li>
Reference(s):
cgtn.com








