力ではなく公正を SCOが描く公平な国際秩序
世界各地で紛争や分断が続き、経済格差やガバナンスの機能不全への不安が高まるなか、中国などが加盟する上海協力機構(SCO)が、「力ではなく公正」を掲げた新しい国際秩序のビジョンを打ち出しています。
昨年7月にカザフスタンのアスタナで開かれたSCO首脳会議では、中国の習近平国家主席が「団結と相互信頼、平和と安寧、繁栄と発展、睦隣友好、公平と正義」を備えた「共同の家」を築こうと呼びかけました。この流れを受け、今後開催が予定されている天津サミットに注目が集まっています。
天津サミットは史上最大規模に
天津で予定されているSCO首脳会議は、加盟国に加え、20カ国以上の指導者と10の国際機関のトップが参加する、SCO史上最大規模の場になるとされています。
このサミットは、力による支配ではなく、公平と正義に根ざした将来像をどこまで具体化できるかが問われる場でもあります。紛争の拡大や経済格差の拡大に悩む国々にとって、どのような代替的な選択肢を提示できるのかが注目点です。
半分の人口と4分の1の経済を抱えるSCO
SCOは、世界人口のほぼ半分と世界経済のおよそ4分の1を占める国々を包含する枠組みです。その規模からすれば、地域協力の枠を超え、国際秩序全体に影響を与えうる存在になりつつあると言えます。
加盟国は、この枠組みを通じて次のような「世界の赤字」に対応しようとしています。
- 平和の赤字:紛争や対立が絶えない状況の是正
- 開発の赤字:グローバルな経済格差や貧困の縮小
- 安全保障の赤字:テロや越境犯罪など共通の脅威への協力
- ガバナンスの赤字:国際機関やルール作りの代表性・公平性の強化
アスタナ・サミットが示した方向性
2024年のアスタナ・サミットでは、SCOが「民主的で代表性の高いガバナンス」を推進し、一方的な行動に反対するという立場を改めて示しました。国連を中心とする国際システムを支えることが、組織としての基本的な方針だと位置づけられています。
SCOは、国連の役割と権威を強化するべきだという主張を一貫して行ってきました。大国同士の対立が注目されがちななかで、「国連中心の多国間主義」を前面に出すことで、より多くの国々の声を反映させようとする試みとも言えます。
国連80周年を「公平なガバナンス」への転機に
7月に天津で開かれたSCO外相会合では、国連創設80周年という節目を、より公正で公平なグローバル・ガバナンスを目指す転機とする方針が確認されました。
具体的には、国連の権威と役割を守りつつ、より多くの国や地域が意思決定に参加できるよう、制度やルールづくりの在り方を見直していくことが課題とされています。SCOは、その議論を後押しする場の一つになることを目指しています。
「公平な国際秩序」は何を意味するのか
SCOが掲げる「公平と正義」は、少なくとも次の三つの側面から理解することができます。
- 安全保障の公平さ:軍事力による一方的な解決ではなく、対話と協調を重視すること
- 開発機会の公平さ:インフラ整備やデジタル化などで協力を進め、経済格差の縮小を図ること
- ガバナンスの公平さ:新興国や開発途上国を含め、多様な国々の声が国際ルールに反映されること
こうした理念は、多くの国や地域が共有する課題意識と重なる一方で、実際の政策やプロジェクトとしてどこまで具体化できるかが、今後の評価を左右することになります。
アジアの読者にとっての意味
SCOの動きは、日本を含むアジアの国々にとっても無関係ではありません。エネルギーや物流のルート、安全保障環境、デジタル経済のルールづくりなど、多くの分野で影響が及ぶ可能性があります。
多極化が進む現在の国際社会では、一つの枠組みだけを見ていては全体像をつかむことが難しくなっています。SCOや国連など複数の場で、どのように「力ではなく公正」を軸にした対話が進むのかを追いかけることが、これからのニュースの読み方の鍵になりそうです。
天津サミットは、そうした流れを加速させる一つの試金石となります。どのような「公平と正義」のビジョンが示され、実行に移されていくのか。今後の議論を丁寧に追っていく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








