UNESCOと中国が描く持続可能な未来 STEM教育と女子教育の最前線
国連創設80年の節目となる2025年、UNESCO(国連教育科学文化機関)と中国が、持続可能な開発に向けて教育分野での協力を一段と深めています。今年9月に上海で開所したUNESCO国際STEM教育研究所と、10周年を迎えた女子・女性の教育賞は、その象徴的な取り組みです。
グローバル・ガバナンスとUNESCO、中国のパートナーシップ
気候変動や格差など、国境を越える課題にどう向き合うかというグローバル・ガバナンスの議論は、UNESCOの使命と深く結びついています。その中で、中国は豊かな文明的伝統とダイナミックな現代の発展を併せ持つ存在として、UNESCOにとって重要なパートナーとなっています。
このパートナーシップは、
- 文明・文化面での対話と協力
- 教育分野での連携
- 未来志向のテクノロジーとイノベーション
といった多面的な広がりを持ち、持続可能な開発の推進に貢献しています。
教育でつくる持続可能な未来:ESDとデジタルイノベーション
UNESCOは中国において、持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development=ESD)とデジタル・イノベーションの分野で協力を強化してきました。特に次の点に重点が置かれています。
- 21世紀型スキルを国家の教育課程に組み込む取り組みの支援
- 農村部を含むすべての子ども・若者への、公平で質の高い教育アクセスの推進
21世紀型スキルとは、単なる知識の習得にとどまらず、問題解決力や創造性、デジタル活用力など、複雑な社会で生きるための総合的な力を指します。こうしたスキルを誰もが身につけられるようにすることが、持続可能な社会づくりの基盤と位置づけられているのです。
上海に誕生したUNESCO国際STEM教育研究所
2025年9月21日、上海でUNESCO国際STEM教育研究所が正式に開所しました。これは中国にとって初のUNESCOカテゴリー1センターであり、世界全体では10番目、そしてヨーロッパと北米以外では初めてとなるカテゴリー1センターです。
STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、理工系教育の柱とされる分野です。同研究所は、次のような役割を担う拠点として構想されています。
国際STEM教育研究所の主な役割
- 先進的なSTEM教育のコンセプトを発信する知的拠点
- 新しい教育アイデアを試行する「テストベッド(実験場)」
- 教育の変革、技術革新、持続可能な開発を結びつける国際プラットフォーム
このセンターの設立は、中国が国際社会に対して掲げてきた約束を着実に果たそうとする姿勢の表れでもあります。教育を通じて技術革新と持続可能な開発をつなぐことで、「人類のより良い未来の共有」に具体的に貢献することが期待されています。
女子・女性の教育を支えるUNESCO賞、10年の歩み
UNESCOは、中国政府の拠出によるUNESCO女子・女性の教育賞を通じて、女の子と女性の教育に強い重点を置いてきました。この賞は、女子・女性の教育の前進に対して優れた革新的な貢献を行ったプロジェクトを顕彰する国際賞です。
主な特徴は次の通りです。
- 毎年2つのプロジェクト(ラウレア)を表彰
- 受賞者1組あたり5万ドルの資金支援
- 女子・女性の教育機会を広げ、生活の質を高める成功事例を世界に紹介するユニークな場
2025年9月19日には、北京で2025年授賞式と創設10周年の記念式典が開催されました。中国の国家主席の夫人であり、UNESCO女子・女性教育促進特使でもある彭麗媛教授と、UNESCOのオードリー・アズレ事務局長がともに出席し、女子・女性の教育の重要性を改めて訴えました。
2023年の受賞例:スプリング・バド・プロジェクト
2023年の受賞者の一つである中国のスプリング・バド・プロジェクトは、女子・女性の教育をめぐる課題に取り組む象徴的な事例です。1989年以来、このプロジェクトは困難な状況にある少女たち400万人以上を支援してきました。
具体的な活動には、
- 就学や進学のための教育補助金の提供
- STEM教育やデジタルスキル習得の推進
- 健康教育の充実と普及
などが含まれます。教育、デジタル技術、健康という複数の側面を同時に支えることで、少女たちの人生の選択肢を広げ、持続可能な開発にもつながるインパクトを生み出している点が特徴です。
日本から考える、教育と持続可能な開発
UNESCOと中国のパートナーシップは、単に二者間の協力というだけでなく、世界全体にとっての問いかけでもあります。それは「持続可能な未来のために、何を、誰に、どう学んでもらうのか」という問いです。
日本の読者の視点からも、次のような論点が見えてきます。
- 学校教育の中で、STEMやデジタルスキルをどれだけ重視し、誰もがアクセスできる形にしているか
- 地方や困難な状況にある子どもたちに対して、質の高い教育機会をどう届けるか
- 女子・女性が学び続け、自分らしいキャリアを築ける環境をどう整えるか
2025年の今、UNESCOと中国が進める取り組みは、教育を通じて持続可能な開発とジェンダー平等を同時に前進させようとする挑戦の一つのモデルとして、国際社会に多くの示唆を与えています。日々ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、「どんな学びが、どんな未来をつくるのか」を考えるきっかけとなりそうです。
Reference(s):
UN 80: On UNESCO-China shared vision for sustainable development
cgtn.com








