世界最大の単一ユニット太陽熱発電所、中国青海で着工 video poster
中国・青海省ゴルムド市で、世界最大の「単一ユニット」集中型太陽熱発電(CSP)プロジェクトの建設が始まりました。24時間の安定したクリーン電力供給をめざすこの計画は、再生可能エネルギーの次の一歩を示す動きとして注目されています。
世界最大級のCSPプロジェクト、その中身は
今回着工したのは、中国企業Cosin Solar(コーシン・ソーラー)が手がける出力35万キロワット(350メガワット)のタワー型CSPプロジェクトです。単一の発電ユニットとしては、世界最大規模の集中型太陽熱発電所とされています。
総投資額は54億4,000万元(約7億6,300万ドル)で、中国が自ら開発した溶融塩(ようゆうえん)蓄熱技術が採用されています。発電所の主な特徴は次のとおりです。
- 3基の太陽受熱タワーが、鏡で集めた太陽光を熱として受け止める
- 受け取った熱を溶融塩に蓄え、その熱で蒸気をつくる
- 1基の35万キロワット級蒸気タービンを回して発電する
この仕組みによって、太陽が出ていない夜間や曇天時でも発電を続けることができるとされ、安定した電力供給が期待されています。
タワー型集中太陽熱発電とは? 太陽光パネルとの違い
日本でもすっかりおなじみになった太陽光発電は、多くが「太陽光パネル(太陽光発電、PV)」を使って、光をそのまま電気に変える方式です。一方、今回のプロジェクトが採用するのは「集中型太陽熱発電(CSP)」と呼ばれる方式です。
CSPは、無数の鏡(ヘリオスタット)で太陽光を一点に集め、高温の熱エネルギーとして取り出します。その熱で蒸気をつくり、タービンを回して発電する点で、仕組みは火力発電に近いと言えます。
なかでもタワー型CSPは、フィールドに配置した鏡がタワー上部の受熱装置に向かって光を反射する構造で、高温を得やすく、大規模な蓄熱にも適しているとされます。
溶融塩蓄熱がもたらす「24時間発電」
このプロジェクトのもうひとつの鍵が、溶融塩を使った蓄熱技術です。溶融塩は高温でも安定して熱を蓄えることができ、長時間にわたるエネルギー貯蔵に向いています。
太陽が照っている昼間に熱としてエネルギーをためておき、需要が増える夕方や夜間にその熱を取り出して発電することで、「太陽が出ていない時間帯も発電を続ける」ことが可能になります。これにより、
- 出力の変動が大きいという再生可能エネルギーの弱点の一部を補える
- 化石燃料の火力発電への依存度を下げやすくなる
- 送電網(グリッド)の安定運用に貢献しやすい
といった効果が期待されています。
2027年フル稼働へ 年間9.6億キロワット時を供給
このCSP発電所は、2027年9月末までに送電網への全面接続が予定されています。2025年12月の時点から見ると、およそ2年後の商業運転開始を目指す大型プロジェクトです。
フル稼働後は、年間約9億6,000万キロワット時(kWh)のクリーン電力を供給すると見込まれています。これは、家庭や産業向けの電力需要を長時間支える規模であり、地域のエネルギー構造にも影響を与えうる数字です。
発電出力が大きいだけでなく、「単一ユニット」であることもポイントです。複数の小規模設備を組み合わせるのではなく、1つの大規模ユニットとして設計されているため、
- 運転・保守(メンテナンス)の効率化
- 運用データの集約と分析のしやすさ
- 将来の大型プロジェクトへの技術的な見本(リファレンス)
といった面で意味を持つと考えられます。
青海・ゴルムドが担うエネルギー拠点としての役割
発電所の建設地である青海省ゴルムド市は、中国でも日射量が豊富な地域の一つとされています。強い日差しと広い土地という条件は、CSPのような大規模太陽熱発電にとって大きな利点です。
この地域に世界最大規模の単一ユニットCSPが建設されることで、
- 地域の再生可能エネルギー比率の向上
- 送電網を通じた他地域へのクリーン電力供給
- 大規模蓄熱技術の実証とノウハウ蓄積
といった効果が期待されます。再生可能エネルギーを主力電源化していくうえで、「どうやって安定供給を実現するか」という世界共通の課題に対して、一つの選択肢を示す事例とも言えます。
日本と世界への示唆:「発電」と「蓄える」をセットで考える
今回のプロジェクトが投げかけるメッセージは、「発電量」だけでなく「どう蓄えるか」も同時に考える必要がある、という点です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーを大量に導入するほど、出力の変動をならすための仕組みが重要になります。
日本でも、
- 蓄電池(バッテリー)
- 水素やアンモニアなどのエネルギーキャリア
- 揚水発電(ダムを利用した電力の貯蔵)
など、さまざまな蓄エネ技術が議論されています。そこに、溶融塩を使ったCSPのような「熱としてためてから電気にする」という選択肢も、国際的な議論の中では存在感を増しつつあります。
ゴルムドのプロジェクトは、
- 巨大な単一ユニットCSPが実際にどこまで安定運用できるのか
- 溶融塩蓄熱がどの程度、夜間や悪天候時の電力供給を支えられるのか
- コスト面でどこまで競争力を持てるのか
といった点で、今後の国際的なエネルギー議論の重要な参照点になりそうです。
これから2年、何に注目すべきか
このプロジェクトは、2027年9月末までの送電網全面接続を目標にしています。2025年から2027年にかけては、建設の進捗とあわせて、次のポイントにも注目が集まりそうです。
- 建設スケジュールとコスト管理が計画どおり進むか
- 試運転段階での発電量や安定性のデータがどう示されるか
- 同様のCSPプロジェクトが他地域にも広がるか
再生可能エネルギーの「量」だけでなく、「質(安定性)」をどう高めるか。世界最大の単一ユニットCSPという挑戦は、その問いに対する一つの実験場として、これからも注目されることになりそうです。
Reference(s):
World's largest single-unit solar power project breaks ground
cgtn.com








