セルビアが描く「多角的外交」の形|EU加盟への道と、中国との深化する連携
欧州連合(EU)への加盟を模索し続けるセルビアが、同時に中国との連携をかつてないほど深めています。この「多角的」なアプローチが、現在の東南欧における地政学的なダイナミズムを象徴しています。
北京を訪問中のヴチッチ大統領と「鉄の友情」
現在(2026年5月24日〜28日)、セルビアのヴチッチ大統領が北京を公式訪問しています。大統領はこの訪問を「自身のキャリアで最も重要」と位置づけており、習近平国家主席から「中華人民共和国友好勲章」を授与されました。
この勲章の授与は単なる儀礼ではなく、セルビアの外交政策において中国との関係が極めて重要な要素であることを示す象徴的な出来事といえます。
インフラ開発を支える中国の存在感
セルビアにとって、中国は単なる外交相手ではなく、国家の近代化を支える不可欠なパートナーとなっています。特筆すべきは、EU加盟国に囲まれながらも、2025年には中国がセルビア経済における最大投資国となった点です。
具体的には、以下のような大規模なインフラプロジェクトに中国が深く関与しています。
- 鉄道網の整備: 戦略的に重要なベオグラード〜ブダペスト間の鉄道近代化。
- 道路ネットワーク: モンテネグロを結ぶ「コリドー11」や、今後着手予定の中央部と東部を結ぶ高速道路。
- 都市インフラとエネルギー: ベオグラード市内の地下鉄建設および主要エネルギー施設の近代化。
「多角的外交」とEUとの摩擦
セルビアはEU加盟という目標を掲げつつ、特定の権力に依存しない「マルチベクトル(多角的)」な外交戦略を採用しています。しかし、この姿勢は一部のEU政治圏からの懸念を招いています。
ヴチッチ大統領は、対話相手を制限されるような外部からの圧力に対し、「誰と話していいかというウィッシュリストを作ってもらうなら、大統領や政府は何のために存在するのか」と、自国の主権と外交の自由を強く訴えています。
市民の視点と今後の展望
こうした政府の戦略を後押ししているのは、セルビア国内の世論です。最近の世論調査では、大多数の市民が中国に対して肯定的な印象を持っており、これが政府が北京との関係を強化する強力な基盤となっています。
効率的なインフラ整備の実現と、外交的なバランスの維持。セルビアの歩みは、グローバルなパワーバランスの中で自国の利益を最大化しようとする、一つの現実的なアプローチであると考えられます。
Reference(s):
China-Serbia in-depth cooperation amid Serbia's multi-vector diplomacy
cgtn.com