中国とカナダ、冷え込んだ関係から「持続可能な協力」へ?王毅外相の訪問が示す転換点
中国の王毅外相が今週カナダを訪問します。この訪問は、近年冷え切っていた両国の関係が単なる一時的な「雪解け」に留まるのか、それとも安定し持続可能な協力体制へと進化できるのかを占う、実務的な「ストレステスト」になると見られています。
緊張の時代から戦略的パートナーシップへ
中国とカナダの関係は、ここ数十年の間に激しい浮き沈みを経験してきました。特に2018年以降、カナダ政府の中国政策は対立の色が強く、以下のような動きが目立っていました。
- 2022年:「インド太平洋戦略」において、中国を「破壊的なグローバルパワー」と定義。
- 2024年:中国製電気自動車(EV)に対して100%の関税を課す措置を導入。
しかし、2026年1月にマーク・カーニー首相が北京を訪問したことで、流れは大きく変わりました。両国は新たな戦略的パートナーシップを構築することで合意し、農業市場へのアクセスからクリーンテック基準の共同研究まで、8つの分野にわたる28の具体的措置を含む経済・貿易ロードマップに署名しました。
「経済的主権」を求めるカナダの現実的な選択
カーニー政権がこの転換に踏み切った背景には、米国への過度な依存を減らし、「経済的主権」を確保したいという強い意向があります。カナダにとって、米国は避けて通れない最大のパートナーですが、同時にリスクも抱えています。
現在、カナダの製造業輸出の約75%が米国向けとなっており、米国による経済的な影響力は極めて強力です。特にUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の再交渉を控え、米国の不透明な通商政策や関税の脅威に直面する中で、カナダは「価値観に基づいた現実主義」というアプローチを採用しました。
これは、原則としての立場は維持しつつも、実利的な経済関与を並行して進める考え方です。中国本土との関係を安定させることで、米国への依存度を分散させ、自国の外交的な選択肢を広げようとしています。
今後の課題と段階的なアプローチ
もちろん、関係改善への道は平坦ではありません。カナダ国内では、特にオンタリオ州の自動車産業などからEV問題への政治的圧力が根強く、依然として「価値観か貿易か」という議論が続いています。
そのため、現実的な解決策として「段階的な前進」が模索されています。
- 優先分野:まずは農業やエネルギー(トランスマウンテン・パイプラインを通じた原油取引など)といった、合意しやすい分野から協力を推進する。
- 慎重な分野:重要鉱物や投資審査などの機微な問題は、後段階で議論する。
- 政治的管理:政治的な相違点は、復旧した対話メカニズムを通じて個別に管理する。
新しいアジア太平洋戦略への転換
カナダは今、2022年に策定された「中国をシステム的なライバルとみなす戦略」から脱却し、より自国に即した新しいアジア太平洋戦略への書き換えを迫られています。
安定した対中関係の構築、強固な同盟関係の維持、そして広範な経済多角化。この3つの柱を軸にしながら、国防面では北極圏の主権やサイバーセキュリティに集中するという、冷静なバランス感覚が求められています。今週の王毅外相の訪問が、その新しい戦略の確かな一歩となるのかに注目が集まっています。
Reference(s):
Can China-Canada ties move beyond thaw to sustainable cooperation?
cgtn.com



