エアバスなど欧州3社、共同衛星企業構想 スペースXに対抗へ
欧州の航空・防衛大手エアバス、イタリアのレオナルド、フランスのタレスの3社が、低軌道衛星市場でスペースXに対抗する共同宇宙企業の設立に向けて協議を進めています。今年(2025年)中の合意を目指していると報じられています。
「プロジェクト・ブロモ」 狙いは低軌道衛星での巻き返し
3社の構想は「プロジェクト・ブロモ」と呼ばれています。インドネシアの火山にちなんで名付けられたこの計画では、衛星の生産を担う新会社を設立し、イーロン・マスク氏率いるスペースXに対抗できる体制づくりを目指します。
背景には、宇宙市場の重心が高価な大型衛星から、より安価で大量に打ち上げる小型の低軌道衛星へと移りつつあることがあります。新会社は、この変化に対応した「大量生産型」の衛星製造を担うとされています。
エアバス幹部「今年中の合意を期待」
エアバス・ディフェンス&スペースの最高経営責任者(CEO)、ミヒャエル・シェルホルン氏は、イタリア紙「コリエーレ・デラ・セラ」の日曜版に掲載されたインタビューで、「今年中に合意が署名されることを期待している」と述べました。
一方で同氏は、「私たちは正しい道を進んでいるが、これほど重要な一歩を踏み出す前に、まだ整理すべき点が残っている」とも語り、交渉には時間がかかっていると説明しました。特に衛星分野では、各国間・複数国間にまたがる「複雑さ」が遅れの要因になっているとしています。
レオナルドのトップであるロベルト・チンゴラーニ氏は、今年6月の時点で「7月までに合意に達する可能性がある」と述べていましたが、締め切りは後ろ倒しになってきました。それだけ、合弁の枠組みづくりが難しいプロジェクトであることがうかがえます。
軍事と民生の両市場を狙う欧州の「宇宙連合」
チンゴラーニ氏によると、新会社は軍事・民生の双方の顧客に対して、衛星の製造だけでなく、打ち上げサービスも提供する構想です。防衛分野の偵察・通信衛星から、通信インフラや地球観測など民間用途まで、幅広い需要を取り込む狙いがあります。
6月には、レオナルドとタレスが、既存の共同事業であるタレス・アレニア・スペースとテレスポーツィオを、新会社に統合する案を検討しているとも報じられました。欧州内に散らばる宇宙関連の資産を一つの「柱」にまとめ、規模と効率を高めようとする動きです。
拠点候補はエアバス本拠地の仏トゥールーズ
事情に詳しい関係者によると、新会社の本拠地はフランス南部のトゥールーズが有力視されています。エアバスの主要拠点でもある都市で、既に航空宇宙関連の産業集積が進んでいます。ただし、こうした詳細は最終的な交渉の結果次第で、変更される可能性もあるとされています。
なぜ今、欧州は衛星ビジネスを強化するのか
欧州勢が共同で衛星企業を立ち上げようとする背景には、いくつかの狙いがあります。
- 低軌道衛星コンステレーション(多数の小型衛星を組み合わせたネットワーク)市場での競争力確保
- 軍事・安全保障面での自律性の向上
- 欧州企業同士の重複投資を減らし、スケールメリット(規模の経済)を得ること
とくに、低遅延の通信インフラや高頻度の地球観測を実現するには、数百〜数千機規模の衛星網が必要になるとされます。そのためには、コストを抑えつつ、短期間で大量に衛星を生産・打ち上げる能力が欠かせません。
スペースXが低軌道衛星分野で先行するなか、欧州勢が単独ではなく、連合体として対抗しようとしている構図が見えてきます。
これからのチェックポイント
今後、この「プロジェクト・ブロモ」をめぐって注目したいポイントは次のとおりです。
- 今年(2025年)中に、3社が正式な合意文書に署名できるか
- タレス・アレニア・スペースやテレスポーツィオなど、既存事業がどこまで新会社に統合されるのか
- 軍事衛星ビジネスの扱いと、各国政府との関係の整理
- スペースXをはじめとする競合他社との価格・技術競争でどこまで迫れるか
欧州の宇宙産業が新たな段階に入ろうとしているのか、それとも難航する合弁交渉の一例にとどまるのか。2025年の動きは、今後10年の宇宙ビジネス地図を左右する可能性があります。
Reference(s):
cgtn.com








