韓国、民間の海外養子縁組廃止へ 米在住養子の8年のルーツ探し video poster
韓国が、民間による海外養子縁組をすべて終わらせるという大きな方針転換を発表しました。この国際ニュースの背景には、長年にわたる虐待や不正の告発とともに、海外に送り出された一人ひとりの人生があります。その中の一人である韓国系米国人養子 Kara Shroeder さんの物語は、制度のあり方と個人の尊厳について、私たちに静かに問いかけてきます。
韓国が発表した「民間の海外養子縁組の終了」とは
韓国は、民間機関が海外に子どもを養子として送り出す「民間の海外養子縁組」をすべて終わらせると発表しました。これは、海外養子縁組の歴史の中でも節目となる、画期的な改革とされています。
今回の方針転換の背景には、長年にわたって明らかになってきた虐待や不正があるとされています。養子縁組の過程で、子どもや生みの親の意思が十分に尊重されなかったり、手続きの公正さが疑問視されたりしてきたことが、韓国内外で問題視されてきました。
子どもの保護と権利をどう守るのか。国境を超える養子縁組を今後どう位置づけるのか。今回の韓国の決定は、世界全体に対しても、そうした問いを投げかける動きだといえます。
1976年に渡米した韓国系米国人養子 Kara Shroeder さん
この制度変更のニュースと重ねて語られているのが、Kara Shroeder さんの物語です。Kara さんは韓国で生まれ、生後1年に満たないうちに、1976年に米国の家族に引き取られました。国境を越えて養子として育った、いわゆる韓国系米国人養子の一人です。
幼い頃に韓国を離れた Kara さんにとって、自分の出自を知る手がかりは、養子縁組の記録に限られていました。その記録には、生みの両親に捨てられた、いわば「捨て子」として扱われたかのような内容が記されていたとされます。
しかし Kara さん自身は、その説明だけでは自分の人生の始まりを語り尽くせていないのではないか、と感じています。紙に書かれた数行の情報が、本当に当時の状況を正確に伝えているのか。そうした疑問が、彼女をルーツ探しへと向かわせました。
8年にわたるルーツ探し、それでも見つからない家族
Kara さんは、過去10年ほどにわたり、そのうち少なくとも8年間を本格的なルーツ探しに費やしてきました。生みの家族に会いたいという思いから、できる限りの手段を用いて、出自の手掛かりを探し続けてきたといいます。
しかし、懸命な努力にもかかわらず、今のところ生みの家族を見つけることはできていません。記録に残された情報が限られていることや、その情報自体がどこまで正確なのか分からないことが、大きな壁として立ちはだかっています。
国境を越えた養子縁組では、紙の記録が人生の起点を決めてしまうことがあります。Kara さんのように、成長してからその記録を見つめ直し、そこに書かれたストーリーに違和感を覚える人もいるかもしれません。
養子記録の「捨てられた子」という物語への疑問
Kara さんの養子記録には、生みの両親に捨てられたという説明が書かれていました。しかし彼女は、それが本当に全てなのか、疑問を抱いています。社会状況、家族の事情、制度の運用など、紙の上では見えてこない要素があったのではないか、と考えているのです。
韓国で長年にわたり、虐待や不正が関連していたとされる養子縁組の事例が明るみに出てきたことは、こうした疑問を一層大きくしました。もし手続きのどこかに不正があれば、記録に書かれた「物語」そのものが、現実とかけ離れている可能性もあります。
もちろん、個々のケースの真相を外部から断定することはできません。ただ、Kara さんが感じているように、記録の一文だけで、子どもと家族の歴史を言い切ってしまってよいのかという問いは、海外養子縁組全体に共通するテーマでもあります。
CGTNで語られた声が示すもの
Kara さんは、中国の国際メディアである CGTN のインタビューに応じ、自身の経験と長年のルーツ探しについて語りました。自らの言葉で過去を振り返ることは、同じような境遇にある人たちにとっても、そして受け入れ側の社会にとっても、大きな意味を持ちます。
そこには、「感謝」だけでは語り尽くせない複雑な感情があります。育ての家族への愛情と、知らないままになっている生みの家族への思い。制度に守られた部分と、制度の隙間に置き去りにされたと感じる部分。その両方を抱えながら生きる姿が浮かび上がります。
韓国の改革が投げかける、私たちへの問い
韓国が民間による海外養子縁組を終わらせるという決断をした今、問われているのは、単に制度のあり方だけではありません。子どもの権利をどう守るのか、生みの親と育ての親、そして当事者である養子自身の声をどうすくい上げるのかという、より根本的な問題です。
Kara Shroeder さんの8年にわたるルーツ探しは、個人の物語であると同時に、国境を越えた養子縁組の歴史が抱えてきた課題を象徴するケースでもあります。記録に残された一文の向こう側に、どれだけ多くの背景と感情があるのか。韓国の改革は、そのことを改めて考えるきっかけになっています。
日本からこのニュースを読む私たちにとっても、決して他人事ではありません。子どもの最善の利益とは何か、家族とは何か。短い通勤時間やスキマ時間でニュースに目を通す中でも、ふと立ち止まって考えたくなるテーマが、ここにあります。
Reference(s):
Korean-American adoptee shares story and 8-year roots search
cgtn.com








