タイの象観光が変わる 象乗りなしで自由に暮らすエレファント・フォレスト video poster
2025年のいま、タイの象観光が静かに変わりつつあります。タイの施設「Elephant Forest Phitsanulok」では、象乗りもショーもやめ、5頭の雌の象が約1.44キロの保護された森の中を自由に歩き回っています。動物福祉を重視したこの取り組みは、国際ニュースとしても注目されています。
象乗りもショーもない観光施設とは
Elephant Forest Phitsanulokは、従来型の象観光から大きく舵を切った施設です。来場者は象に乗ったり、芸を見たりするのではなく、象たちが森の中で自然に行動する姿を、一定の距離を保ちながら静かに見守ります。
象が歩きたい方向へ歩き、好きな木の葉を食べ、休みたいときに休む。その日常そのものが「見どころ」になっているのが特徴です。観光でありながら、象に無理をさせない新しいスタイルの象観光と言えます。
シーブアの物語 伐採現場から森の先生へ
この場所の象徴的な存在が、50歳の雌の象、シーブアです。かつて伐採の仕事で傷を負い、長いあいだ心を閉ざしていたシーブアは、ここでの生活を通じて徐々に変わっていきました。
いまでは来訪者の前で水浴びを楽しんだり、森の中をゆったり歩き回ったりと、遊び心のある姿を見せています。その様子から、シーブアは「森の先生」とも呼ばれています。来場者は、彼女の行動や表情から、象が本来どのような暮らしを望んでいるのかを学ぶことができます。
動物保護団体の支援で「象ファースト」のケア
Elephant Forest Phitsanulokの運営には、動物保護団体World Animal Protectionの支援があります。この団体は、象の福祉を最優先に考えた環境づくりやケアの方法を施設とともに考え、各個体に合わせたケアが行われています。
年齢も過去の経験も異なる象たちに対し、食事内容や運動量、休息の取り方まで、一頭ごとにあった形を探ることが重視されています。シーブアのように、過去の経験から心身に傷を負った象にとっても、無理をさせない環境は回復と安定につながっています。
マホートは「コントローラー」から「ケアギバー」へ
象とともに働いてきたマホート(象の世話をする人)の役割も、大きく変わりました。以前のように象を厳しくコントロールするのではなく、象のペースに寄り添うケアギバーとしての役割が中心になっています。
マホートは、象の健康状態や気分の変化を細かく観察し、必要に応じて距離をとったり、静かに寄り添ったりします。観光客に対しては、象の性格や行動の意味を解説するガイド役も担い、象と人との間に新しい関係をつくろうとしているのが特徴です。
「動物福祉」と「安定した収入」は両立できるのか
観光施設にとって、収入は運営を続けるために欠かせません。同時に、象に無理をさせない運営は、一見するとビジネスとして成り立ちにくいようにも思えます。
しかし、World Animal Protectionのタイ担当責任者であるRoatchana Sungthong氏は「動物福祉と安定した収入は両立できることを証明した」と語っています。象乗りやショーをやめても、象の本来の姿を見たいという新しいタイプの観光客が訪れることで、収入は安定しているといいます。
現在、このモデルを取り入れている施設は、タイ国内で13カ所以上に広がっています。象に負担をかけない観光が、現実的なビジネスモデルとして成り立つことを示した点で、この取り組みは大きな意味を持っています。
ワールド・アニマル・デーの精神を生きた形で体現
こうした動きは、毎年10月4日のWorld Animal Day(ワールド・アニマル・デー)の精神を、観光の現場で具体的な形にしたものとも言えます。単なる記念日ではなく、日々の運営や観光の仕組みそのものを変えることで、動物への向き合い方を更新しようとしているのです。
来場者は、象の暮らしを見学するだけでなく、象との距離の取り方や、動物福祉を重視した観光を選ぶことの意味について考えるきっかけを得ることができます。SNSでの発信や口コミを通じて、このようなモデルがさらに広がっていく可能性もあります。
私たち旅行者にできること
このタイの事例は、観光を楽しみながら動物福祉にも配慮するという選択肢が、現実のものになりつつあることを示しています。旅行先で象や他の動物と触れ合う機会があるとき、どのような体験を選ぶのかは、私たち一人一人の判断に委ねられています。
- 象乗りや芸のショーではなく、自然な行動を尊重する施設を選ぶ
- 動物福祉について説明している施設かどうかを事前に確認する
- 訪れた体験をSNSなどで共有し、より良い選択肢を広めていく
Elephant Forest Phitsanulokの取り組みは、観光、動物福祉、そして持続可能な収入の三つをどのように両立させるかという問いに、一つの具体的な答えを提示しています。次にタイを訪れるとき、象観光を選ぶあなたの視点も、少し変わっているかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








