タイ料理がつなぐ中国・タイ友好 昆明シェフの友情ロングテーブル
中国とタイの国交樹立50周年を迎える2025年、雲南省・昆明で一人のタイ出身シェフが開いた「友情ロングテーブル晩餐会」が話題になっています。タイ料理を通じて育まれた、静かな中国・タイ友好の物語です。
26年前、春城にやってきたタイ出身シェフ
今から26年前、タイ北部の都市・チェンマイから、ジャンジラ・アナンチャイパッタナさんが雲南省の省都・昆明にやって来ました。昆明は一年を通じて温暖な気候から「春城(スプリングシティ)」とも呼ばれる都市ですが、当時の街にとってタイ料理はほとんど知られていない、珍しい存在でした。
それから四半世紀あまり。ジャンジラさんはコツコツと味を磨き、地元の人びとにタイ料理を紹介し続けてきました。今では、彼女が経営するレストランは6店舗にまで増え、昆明の人びとはタイならではの辛くて酸っぱい味を、日常的に楽しむようになっています。
国交樹立50周年を前にした「友情ロングテーブル」
2025年は、中国とタイの国交樹立から50年という節目の年です。その記念すべき年を前に、ジャンジラさんが思い立ったのは、長年支えてくれた常連客や友人たちに、料理人としての感謝を伝えることでした。
そこで彼女が企画したのが、「友情ロングテーブル晩餐会」です。一つの長いテーブルを囲み、大人数で料理を分け合うスタイルの食事会に、昆明で育まれてきた中国・タイの交流の思いを込めました。
テーブルには、本場の味にこだわったタイ料理が並びました。さらに、ジャンジラさんが自ら考案した特別なフュージョン料理も一品、コースに加えられました。タイのスパイシーで酸味のある味わいに、昆明で親しまれている食材や風味をかけ合わせたその料理は、二つの土地の記憶を一皿に表現する試みでもあります。
「珍しい味」が「なじみの味」になるまで
26年前、昆明にとってタイ料理は新しく、少しエキゾチックな存在でした。それが今では、ジャンジラさんの6つの店に代表されるように、多くの人びとに愛される「なじみの味」になっています。
その変化は、単なるグルメブームというよりも、時間をかけて育まれた相互理解の結果ともいえます。辛さや酸味といった味覚の違いに慣れていくプロセスは、異なる文化や価値観に慣れ、受け入れていくプロセスとも重なります。
- 最初は物珍しさから始まったタイ料理への関心が、日常の外食の選択肢として根づいたこと
- 料理を通じて、「遠い国」だったタイが、身近な隣人のように感じられるようになったこと
- 一人のシェフの挑戦が、都市の食文化そのものを少しずつ変えていったこと
こうした積み重ねの先に、今回の友情ロングテーブル晩餐会が生まれたと言えるかもしれません。
食卓から始まる中国・タイ友好
国際ニュースでは、首脳会談や経済協力の枠組みが注目されがちです。しかし、ジャンジラさんの取り組みが示しているのは、国と国との関係を足元で支えているのは、こうした日々の暮らしの中の出会いと交流だということです。
長いテーブルを囲んで、同じ鍋から料理を取り分ける。言葉や生まれ育った場所が違っても、辛さに驚いたり、新しい味を見つけて笑い合ったりする経験を共有することで、人と人との距離は自然と縮まっていきます。
タイの家庭の味を大切にしながら、中国の都市で受け入れられるスタイルを模索してきたジャンジラさん。彼女が考案したフュージョン料理は、単なる「新メニュー」ではなく、二つの文化を一つの器に盛り付ける試みにも見えます。
私たちへの静かな問いかけ
中国とタイの国交樹立50周年という節目の年に、昆明の一角で開かれた友情ロングテーブル晩餐会。その舞台裏には、26年にわたる挑戦と、地元の人びとの好奇心と、ゆっくりと育ってきた信頼がありました。
日本の街でも、海外出身の料理人が営む店は珍しくなくなりつつあります。そこには、ジャンジラさんのように、自分の故郷の味を通じて、新しい土地とのつながりをつくろうとする人びとの物語がひそんでいるかもしれません。
ニュースで見る「国と国との関係」の裏側で、どんな小さな交流が日々生まれているのか。次に異国の料理を前にしたとき、少しだけ想像を広げてみたくなる出来事です。
Reference(s):
cgtn.com








