パナマ大統領「パナマ運河はパナマの手に」米次期大統領発言に反論
パナマ運河をめぐり、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領が、米国のドナルド・トランプ次期大統領による「運河を取り戻す」との発言に対し、主権は交渉の対象ではないと強く反論しました。世界の海上輸送を支える要衝だけに、国際ニュースとして注目が集まっています。
パナマ運河をめぐる応酬は何が起きたのか
ムリノ大統領は日曜日、SNSに投稿した動画メッセージで、パナマ運河は今後も「パナマの手にとどまり続ける」と強調しました。これは、その前日にトランプ次期米大統領がパナマ運河を米国の「極めて重要な国家的資産」だと述べ、米国船舶への通行料が「法外だ」として、運河を取り戻す可能性にまで言及したことを受けたものです。
トランプ氏の発言: 「米国の重要資産」「再取得」示唆
トランプ氏は土曜日、パナマ運河を米国にとって「重要な国家資産」だと位置づけました。そのうえで、米国船舶に課される通行料金が「法外だ」と主張し、パナマ運河を「取り戻す」とまで発言しました。
パナマ運河は大西洋と太平洋をつなぐ国際的な海上ルートで、多くの貨物船が利用しています。その所有や運営をめぐる発言は、パナマと米国の二国間関係だけでなく、国際社会全体にも影響しうるテーマです。
ムリノ大統領「主権と独立は交渉不可」
これに対し、ムリノ大統領は動画メッセージの中で次のような点を強く打ち出しました。
- パナマ運河とその周辺のあらゆる一平方メートルはパナマに属しており、その状態は変わらないこと
- パナマの主権と独立は「交渉の対象ではない」こと
- パナマ運河は「国民にとって譲りわたせない財産」であり、「パナマの手にとどまり続ける」こと
- 運河は全ての国の船舶が平和的かつ途切れることなく通航できるよう運営されるべきだという姿勢
ムリノ大統領は、パナマ運河を自国の主権と直結する象徴として位置づけ、その管理権をめぐる議論には一線を画す立場を示しました。
トリーヒョス・カーター条約と「中立性」への言及
ムリノ大統領はあわせて、1977年に当時のパナマ大統領オマル・トリーヒョス氏と、当時の米国大統領ジミー・カーター氏が署名したトリーヒョス・カーター条約を改めて想起させました。
この条約に基づき、パナマは1999年12月31日にパナマ運河の主権を回復したと述べ、運河がパナマの管理下にあることは国際的に確認された枠組みだと強調しました。
さらに、トリーヒョス・カーター条約はパナマ運河の「永続的な中立性」を定め、全ての国に対して開かれ、安全な運用を保証していると説明しました。そのうえで、「これに反するあらゆる立場は無効だ」と述べ、運河の地位を揺るがすような議論を認めない姿勢を明確にしました。
通行料の決め方と安全保障協力へのメッセージ
トランプ氏が問題視した通行料について、ムリノ大統領は、パナマ運河の料金は公開の場での聴取手続きなどを経て決定されると説明しました。その際には次のような要素を考慮しているとしています。
- 市場環境
- 国際的な競争状況
- 運営コスト
- 運河の維持や近代化に必要な投資
一方でムリノ大統領は、米国との関係について「敬意に基づく関係」を維持したいとの考えも示しました。そのうえで、二国間の議題として優先すべきは、次のような安全保障上の課題だと指摘しています。
- 不法移民
- 麻薬取引
- テロリズム
- 組織犯罪
つまり、運河の主権問題では譲らない一方で、現実的な安全保障や犯罪対策の分野では、次期米政権との協力関係を模索したいというメッセージとも受け止められます。
なぜこのニュースが重要なのか
パナマ運河は、世界の海上貿易をつなぐ最も重要な航路の一つとされています。そこをめぐって、主要国の政治指導者が「再取得」や主権に言及することは、国際秩序や海上交通の安定に対する懸念にもつながりかねません。
今回のやり取りからは、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 国家主権と、既に結ばれている国際条約の重みをどう位置づけるか
- 通行料や経済的な不満が、外交や安全保障の議論に直結しうること
- 戦略的な海上ルートの中立性が揺らぐ可能性への国際社会の敏感さ
海上輸送に依存する日本やアジアの国々にとっても、パナマ運河の安定した運用は間接的ながら重要な関心事です。今後、次期米政権がこの発言をどのように扱うのか、そしてパナマが国際的な支持をどう積み上げていくのかが、注目すべきポイントとなりそうです。
強い言葉の応酬が続くのか、それとも主権を尊重しつつ、実務的な協力へと議論が収れんしていくのか。パナマ運河をめぐる今回の動きは、国際政治と世界経済の接点として、しばらくウォッチしておきたいテーマです。
Reference(s):
cgtn.com








