米国のイラン攻撃は高コスト 専門家が化学・放射能リスクを警告
中東で緊張が高まるなか、米国がイランの核施設を軍事攻撃した場合のコストとリスクについて、専門家が深刻な警告を発しています。イスラエルが単独行動に踏み切る可能性も取り沙汰されるなか、ワシントンはどの選択肢を取っても大きな戦略的・人道的代償を伴うジレンマに直面しています。
ホワイトハウスによると、米トランプ大統領は今後2週間以内にイラン攻撃の是非を最終判断するとされており、国際社会の注目が集まっています。
米国が検討する三つの選択肢
CNNの分析によれば、ワシントンがイランをめぐって検討しているのは、主に次の三つのシナリオです。
1. イスラエルに単独行動を委ねる
第一の、そして現時点で優勢とされる選択肢は、米軍が直接の軍事行動を取らず、イスラエルによる限定的な攻撃を容認するというものです。この場合、表向きは米国の関与は低く見えますが、報復や地域不安定化の矛先が最終的に米国に向かう可能性は小さくありません。
2. フォルドウ核施設への限定的な米軍攻撃
第二の案は、イラン中部の山中深くに埋設されたフォルドウ核施設への限定的な攻撃です。アトランティック・カウンシルの上級研究員アレックス・プリツァス氏は、米軍の兵器の中で、約3万ポンド級の貫通爆弾マッシブ・オーディナンス・ペネトレーターを運用できる航空機は、ステルス爆撃機B2のみだと指摘します。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国がフォルドウを攻撃する場合、このGBU-57爆弾が使用される可能性を示しています。長さ約6メートルのこの兵器は、地中60メートル以上に達してから爆発するよう設計され、硬く強化された地下施設を破壊することを目的としています。
軍事的には効果的に見える一方で、イラン側の報復や、中東全体を巻き込むエスカレーションの引き金となる懸念が大きい選択肢でもあります。
3. 核施設から政府中枢までを狙う広範囲攻撃
第三のシナリオは、核施設だけでなく政府施設や石油精製所にまで標的を広げる大規模な空爆作戦です。プリツァス氏によれば、これはイランが地域の米軍を直接攻撃した場合など、きわめて限定的な条件下でのみ検討される、可能性の最も低い選択肢とみられます。
しかし、いったん実行されれば、事実上の大規模戦争に発展し、人的被害、難民の増加、エネルギー市場の混乱など、世界経済にも長期的な影響が及ぶことは避けられません。
フォルドウ攻撃がもたらす三つの深刻なリスク
清華大学の張暁楽・助教授は、中国メディアグループのインタビューで、フォルドウ施設への攻撃がもたらしうるリスクとして、化学毒性、放射線被ばく、環境汚染という三つの側面を挙げています。
1. 化学物質による急性被害
張氏によれば、フォルドウ施設には六フッ化ウランが大量に保管されている可能性があります。六フッ化ウランは非常に腐食性の強い物質で、爆撃により漏出すると空気中の水分と反応し、フッ化水素ガスやウラン酸化物を生成します。
フッ化水素は極めて毒性の高いガスで、吸入すると重い呼吸器障害や致命的な肺水腫を引き起こすおそれがあります。現場の救助隊や周辺の住民は、爆発そのものだけでなく、この目に見えない化学物質にもさらされることになります。
2. 目に見えない放射線被ばく
化学毒性に加え、放射性物質の飛散による長期的な健康リスクも無視できません。爆発や火災によって微細な放射性粒子が大気中に放出され、それを吸い込んだ人の肺の内部でアルファ線を出し続ける可能性があると張氏は指摘します。
放射線はすぐには症状として現れにくいため、時間をかけてがんや慢性疾患のリスクを高める、見えにくく、しかし深刻な問題となります。風下に住む人びと、とくに子どもや高齢者、持病のある人が最も影響を受けやすいとされています。
3. 土壌と水を汚染する環境・農業への打撃
さらなる懸念は、放射性の塵や化学物質の残留物が土壌や水源に沈着し、農業や飲料水に長期的な影響を与えることです。灌漑用水が汚染されれば、農地を通じて食物連鎖に入り込み、広範囲の人びとの食卓にまで届くおそれがあります。
この種の汚染は、一度起きると除去が難しく、地域の農業生産や食の安全、水質に長年にわたって影響を及ぼしかねません。張氏は、被害が局所にとどまらず、互いにつながった生態系を通じてより広い範囲に拡散する可能性を強調しています。
高コストのジレンマと私たちが問うべきこと
イスラエルへの委ね、限定攻撃、大規模攻撃という三つのシナリオのいずれを選んだとしても、米国は軍事的コストだけでなく、人道的・環境的な代償を免れることはできません。短期的な抑止を優先するのか、長期的な地域安定と市民保護を重んじるのか、そのバランスが問われています。
中東の緊張は、エネルギー価格や金融市場を通じて、遠く離れた国や地域の人びとの暮らしにも波及し得ます。国際ニュースとしてこの問題を追うとき、次のような視点を意識しておくことが重要です。
- 軍事的な成功だけでなく、民間人の安全や環境への影響をどう評価するか
- 一度始まったエスカレーションをどこで止められるのかという現実的なシナリオ
- 関係国の公式発表だけでなく、専門家や市民の声も含めて、多角的に情報を確認する姿勢
情報が瞬時に拡散する今だからこそ、私たち一人ひとりが、感情的な二元論ではなく、長期的な人間の安全保障という観点からニュースを読み解くことが求められています。
Reference(s):
Experts warn of high costs, escalation risks if U.S. strikes Iran
cgtn.com








