トランプ税制法案に反発 マスク氏が新政党アメリカ党を宣言
トランプ大統領が推進する大型の税制・歳出法案に強く反発した起業家イーロン・マスク氏が、新政党アメリカ党の立ち上げを宣言しました。2025年12月現在、この動きは米国政治に新たな波紋を広げています。
イーロン・マスク氏、アメリカ党発足をXで宣言
マスク氏は土曜日、自身が運営するソーシャルメディアXに、英語で Today, the America Party is formed to give you back your freedom.(きょう、あなたの自由を取り戻すためにアメリカ党が結成された)と投稿し、新党の発足を宣言しました。この動きは、トランプ大統領が自ら「big and beautiful bill」と呼ぶ税制・歳出法案に対する直接の回答だと、マスク氏は位置づけています。同氏は、この法案が米国を破産に追い込むと警告してきました。
マスク氏は今年7月4日の米独立記念日に、X上で新しい政党を立ち上げるべきかどうかを問うオンライン投票を実施しました。約1億8000万人のフォロワーのうち、120万件を超える回答が寄せられ、そのおよそ65%が賛成を選んだといいます。
投票結果を受けて、マスク氏はXに By a factor of 2 to 1, you want a new political party and you shall have it! と投稿し、多くのユーザーの支持を背景に政党づくりを進める考えを強調しました。
利用者から、アメリカ党が2026年の中間選挙か2028年の大統領選のどちらに挑むのかと問われると、マスク氏は next year とだけ短く返信しました。来年の選挙から何らかの形で政治の表舞台に登場する意向をにじませています。
政党としての体制はなお不透明
一方で、アメリカ党が米国の選挙制度の下で正式な政党として認められるための法的手続きに着手しているかどうかは、現時点では明らかになっていません。
米国で政党として公式に認定されるには、党大会の開催、暫定役員の選出、選挙当局への書類提出など、いくつかのステップを踏む必要があります。現時点で、マスク氏はアメリカ党の指導部や綱領、組織構造について具体的な情報を明らかにしておらず、政党としての実体がどこまで整っているのかは不透明です。
「同志」から対立へ マスク氏とトランプ氏の決裂
今回のマスク氏の政治的な方向転換は、トランプ大統領との関係が急速に悪化する中で起きています。かつて両者は近しい同盟関係にあると見られており、マスク氏はトランプ氏の選挙活動に対して約3億ドルにのぼる資金を提供したほか、トランプ政権下で Department of Government Efficiency(政府効率省、略称DOGE)のトップも務めました。この部署は連邦政府の歳出削減を目指す組織として設置されたものです。
しかしマスク氏は今年5月、DOGEのトップを突然辞任し、トランプ大統領が掲げる税制・歳出法案を「完全に常軌を逸し、破壊的だ」と厳しく批判しました。共和党議員についても、国民に「債務の奴隷状態」を押しつけていると非難し、かつての支援者から一転して強い批判者へと立場を変えました。
緊張は今週、さらに高まりました。トランプ大統領は火曜日、記者団に対し、マスク氏の米国での在留資格を取り消し、テスラやスペースXに対する連邦政府の支援を打ち切る可能性をほのめかしました。
トランプ氏はホワイトハウスでの会見で「DOGEが何か分かるか。DOGEは引き返してイーロンをのみ込まなければならない怪物かもしれない」と述べ、「彼は電気自動車の義務づけを失おうとして不満を抱いている。もっと多くのものを失うかもしれない」と警告しました。
これに対しマスク氏はXで「私は文字通り、全ての補助金を今すぐ削れと言っている」と反論し、連邦補助金の全面削減を訴えました。両者の対立は、個人攻撃と政策議論が入り混じる激しい応酬へと発展しています。
政策論争かリアリティ番組か
スタンフォード大学のショレンスタイン・アジア太平洋研究センターのフェローであるトーマス・フィンガー氏は、木曜日に開かれたワールド・ピース・フォーラムで登壇し、この税制・歳出法案そのものに多くの欠陥と長期的なリスクが含まれていると指摘しました。
一方でフィンガー氏は、トランプ氏とマスク氏の対立が、実質的な政策論争というよりは、リアリティ番組のような様相を帯びているともコメントしました。SNS上での応酬や劇的な宣言が注目される一方で、具体的な政策の中身や制度設計に関する議論がどこまで深まるのかは見えにくい、という見方です。
巨大テック企業の経営者が自ら政党を立ち上げるという今回の展開は、米国における政治とビジネス、そしてプラットフォーム型SNSの関係を改めて問い直す出来事とも言えます。アメリカ党が今後どのような組織づくりや政策提示を行うのか、またマスク氏とトランプ氏の対立が米国の財政政策にどのような影響を与えるのか、引き続き注目されます。
Reference(s):
Fueled by fury over Trump's tax bill, Musk launches 'America Party'
cgtn.com








