ガザ市地上侵攻で多数死亡 イスラエル攻勢に広がる国際的波紋
今年9月15日夜にイスラエル軍がパレスチナのガザ市で開始した大規模な地上作戦をめぐり、多数の死者や行方不明者が出ています。市民の避難が進まない中、アメリカは支援の姿勢を示す一方で、EUは制裁に動き、国連や欧州各国からは強い懸念が表明されています。
ガザ市で進む大規模地上作戦
イスラエル軍(IDF)は、今年9月15日夜にガザ市で「大規模な地上作戦」を開始したと発表しました。地元当局によると、最大の都市であるガザ市では激しい空爆と砲撃が続き、死者や行方不明者が相次いでいるとされています。
IDFの報道官によれば、部隊は「重い火力の支援を受けながら段階的に前進」しており、午後10時ごろには第98機甲師団と第162機甲師団の部隊が空爆の援護を受けつつガザ市内に進入しました。今後数日のうちに第36師団も加わり、ガザ市を「四方から包囲」する計画だと説明しています。
軍はまた、約13万人の予備役の動員を進めており、このプロセスは数日以内に完了するとしています。IDFのアビハイ・アドレイ報道官は、ガザ市を「危険な戦闘区域」と位置づけ、残留する市民は自らを危険にさらしていると警告しました。
避難を呼びかけるイスラエル軍、動けない市民
イスラエル軍はここ数日、ガザ市の住民に対して退避を繰り返し呼びかけてきたと説明しています。しかし、約100万人とされる市民のうち数十万人がなお市内にとどまっているとみられます。
多くの住民は、これまでに何度も避難を強いられた結果、次のような理由から動けないと訴えています。
- 避難に必要な資金や交通手段が尽きている
- 移動の途中で攻撃を受けるリスクが高いと感じている
- 病気や障害、高齢などで移動が困難な家族がいる
パレスチナの公式通信社WAFAによると、同作戦が続く中で、ガザ地区全体で少なくとも53人がイスラエル軍の銃撃や空爆により死亡しており、その多くはガザ市で確認されたとされています。
ネタニヤフ首相の強硬姿勢と国内の溝
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、テルアビブで行われた自身の汚職裁判の初公判に出廷した際、この地上作戦について「激しい」と述べ、「イスラエル国家はこの闘いの極めて重要な局面にあり、その結果には重大な意味がある」と強調しました。
ネタニヤフ首相は先月、ガザ市の支配権を掌握する計画を明らかにしており、今回の攻勢はその一環とされています。この構想をめぐっては、すでに国際的な批判が高まっています。
一方、イスラエル野党のヤイル・ラピド氏は、ニュースサイトのインタビューで今回の侵攻決定を厳しく批判し、ネタニヤフ首相の対応を「素人じみていてずさんだ」と評しました。ラピド氏は、ガザの将来像、イスラエル側の人質の扱い、そして戦闘からの出口戦略が見えないことを問題点として挙げています。
アメリカは支援、EUは制裁で圧力
アメリカ:外交的解決を望みつつ軍事行動を容認
今回の大規模地上作戦について、アメリカ政府は支援の姿勢を示しています。マルコ・ルビオ国務長官はネタニヤフ首相との共同記者会見で、戦闘の外交的な終結を望むとしながらも、「そのような展開にならない可能性にも備えなければならない」と述べ、イスラエルの軍事行動に理解を示しました。
EU:新たな制裁と貿易優遇の停止へ
一方、ブリュッセルでは、欧州委員会のアヌアル・エル・アヌーニ報道官が、EUが水曜日にイスラエルへの新たな制裁で合意する見通しを明らかにしました。制裁には、一部の貿易上の優遇措置を停止する措置が含まれるとされています。
エル・アヌーニ報道官は、EUが一貫してイスラエルに対しガザ市での作戦強化を控えるよう求めてきたとしたうえで、「軍事介入はさらなる破壊と死、そして避難民の増加をもたらし、すでに壊滅的な人道状況を一層悪化させる。また人質の命も危険にさらす」と懸念を示しました。
イギリス・フランス:即時停戦とパレスチナ独立承認の動き
イギリスのイヴェット・クーパー外相は、今回の攻勢を「無謀で恐ろしい」と非難し、即時停戦を求めました。さらに、イギリスとフランスは、今月中にも主要な西側諸国として初めてパレスチナの独立を承認する見通しだと伝えられています。
国連とハマスの反応
国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官は、イスラエルによるガザ市への地上攻撃を「完全に受け入れがたい」と断じ、「この殺りくを止めなければならない」と強く訴えました。
一方、パレスチナのイスラム抵抗運動ハマスは、アメリカのドナルド・トランプ大統領がガザ情勢とイスラエル側の人質問題について述べた発言を、「イスラエルの宣伝を公然と擁護するものであり、二重基準だ」と批判しました。
深まる分断の中で問われる「出口」
ガザ市での地上作戦は、イスラエル国内外の分断を一段と浮き彫りにしています。アメリカは安全保障面でイスラエルを支えつつも、EUやイギリス、フランス、国連人権機関などは民間人被害の増大と人道状況の悪化に強い警鐘を鳴らしています。
一方で、イスラエル国内では、ガザの将来像や人質の解放、そして戦闘をどのように終わらせるのかという根本的な問いが突き付けられています。軍事的な「勝利」が何を意味するのか、そしてその先にどのような秩序を描けるのかが、今後の大きな焦点となりそうです。
ガザ市で続く戦闘と国際社会の対応は、中東情勢だけでなく、国際秩序や人道のあり方をめぐる試金石にもなっています。遠く離れた日本にいる私たちにとっても、ニュースの向こう側にいる人々の生活や尊厳に思いを馳せながら、複数の視点から情報をとらえ続けることが求められていると言えます。
Reference(s):
Dozens killed as Israel mounts major ground offensive in Gaza City
cgtn.com








