イスラエル西岸併合法案を凍結 各国が非難、ガザは人道危機
イスラエルがヨルダン川西岸の全面併合を目指す法案の審議をいったん凍結しました。米副大統領やイスラム諸国が強く非難するなか、ガザでは停戦後も深刻な人道危機が続いています。
ヨルダン川西岸併合法案、予備承認から一転「凍結」
イスラエル議会クネセトでは、水曜日にヨルダン川西岸の全面併合法案と、エルサレム近郊の大規模入植地マアレ・アドミムの併合法案が予備投票で可決されました。
しかし翌日の木曜日、与党連立の議会会派を率いるオフィル・カッツ氏が声明を出し、両法案の審議は「当面の間、先送りする」として事実上の凍結を発表しました。
米副大統領バンス氏「愚かな政治的スタント」
今回の採決は、米国のジェイ・ディー・バンス副大統領がイスラエルを訪問している最中に行われました。バンス氏は、この採決を愚かな政治的スタントであり、実務的な意味はないと厳しく批判しました。
サウジアラビア、インドネシア、トルコをはじめとするイスラム教徒が多数を占める15の国と地域も、法案の予備承認を一斉に非難しました。アラブ諸国やイスラム諸国を代表する国際機関も、併合の動きに懸念を表明しています。
ネタニヤフ首相府は「野党の挑発」と主張
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は声明で、今回の議会採決について、バンス副大統領の訪問中に対立をあおるため野党が仕掛けた意図的な政治的挑発だと位置づけました。
首相府は、政府として西岸併合を直ちに進める方針ではないことを強調しつつも、国内政治の対立が外交の場面に持ち込まれている実態が浮かび上がります。
EU首脳、入植と軍事作戦の中止を要求
同じ木曜日、ブリュッセルに集まった欧州連合(EU)の首脳らは、イスラエルに対し、国際社会から違法とされる入植地の拡大と軍事作戦をやめるよう求めました。
一方で、ガザ地区で進む停戦の第一段階の進展については歓迎の意向を示しており、軍事行動の抑制と政治プロセスの前進を同時に迫るかたちとなっています。
カイロで進むハマス・ファタハ協議
エジプトの首都カイロでは、パレスチナの主要勢力ハマスとファタハの代表団が、ガザ地区の戦後体制をめぐる協議を進めています。エジプトのテレビ局アル・カーヒラ・ニュースによると、ハマス側は上級指導者で主任交渉役のハリル・アルハイヤ氏が団長を務め、ファタハ側はフセイン・アルシェイク副議長とパレスチナ情報機関トップのマジェド・ファラジ氏が率いています。
報道によれば、カイロでは他のパレスチナ諸勢力も交え、トランプ米大統領のガザ和平案の第2段階をめぐる協議も行われています。エジプトは、11月後半にガザ復興を話し合う国際会議の開催を目指して準備を進めていたと伝えられています。
ガザで深刻化する人道・保健危機
一方、ガザ市を視察した国連の支援チームは、衛生状態の悪化と公衆衛生上の深刻な課題を報告しています。安全な飲み水が極端に不足し、皮膚疾患が広がっているほか、排水設備やトイレなどの衛生インフラが大きく損傷しているといいます。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ガザ地区各地で避難生活を送る人々のニーズに対応しようと、国連とパートナー団体が活動を続けていると説明しましたが、現状では医療拠点や移動診療チーム、栄養状態のスクリーニングなどのサービスはほとんど機能していないと指摘しました。
OCHAによると、避難民が集まる施設では、次のような支援が特に不足しています。
- 食料と清潔な飲み水
- 石けんなどの衛生用品
- トイレや下水管の修理に必要な資材
- 防水シートや修繕用の資材、調理器具
- 冬服や靴などを購入するための現金支援
医療避難は再開も、多数が順番待ち
世界保健機関(WHO)は、水曜日に同機関のチームが重篤な患者41人と付き添いの145人をガザから医療避難させたと明らかにしました。これは、10月10日の停戦発効以降で初めての本格的な医療避難とされています。
それでも、ガザ地区の外での治療を待つ患者はなお約1万5000人に上るとされ、停戦が始まっても医療体制の逼迫と住民の苦境は続いています。
軍事・政治・人道の三つ巴で問われるもの
ヨルダン川西岸併合法案の凍結、カイロでのパレスチナ内部対話、そしてガザの人道危機という三つの動きは、中東情勢が軍事・政治・人道の複雑な交差点にあることを示しています。
一方で政治的な駆け引きが続くなか、現場で最も影響を受けているのは一般の人々の生活です。今後の国際社会の関与が、併合や入植拡大ではなく、停戦の定着と人道支援、そして持続可能な和平プロセスにどうつながっていくのかが問われています。
Reference(s):
Israel's West Bank annexation bid condemned as Fatah, Hamas meet
cgtn.com







