米国のベネズエラ圧力と「新モンロー主義」再来 中国専門家が警鐘
米国がベネズエラ近海で前例のない軍事力の展開を進め、「麻薬対策」だと説明している動きについて、中国の専門家は「より強圧的な新モンロー主義の再来」だと警鐘を鳴らしています。ラテンアメリカ全体の安全保障バランスを揺さぶる国際ニュースとして、地域内外で懸念が広がっています。
米軍の異例の展開 名目は麻薬対策、実態は圧力か
米国は現在、ベネズエラ周辺で軍事力を大幅に増強し、公式には「対麻薬作戦」と位置づけています。しかし、中国現代国際関係研究院ラテンアメリカ研究所の孫岩峰(Sun Yanfeng)所長は、中国メディアに対し、この動きには三つの核心的な狙いがあると分析しています。
- ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権に対する打倒圧力を強めること
- ラテンアメリカ諸国が米国の影響圏から離れていく動きを抑止すること
- 国内の政治的緊張から世論の関心をそらすこと
孫氏は、軍事力の誇示と経済制裁、外交圧力を組み合わせるやり方は、地域の戦略環境を米国主導で再構築しようとする試みだと指摘します。
テロ指定と「安全保障」名目 広がる警戒感
最近の米国の動きの中でも象徴的なのが、十分な証拠が示されないまま、ベネズエラの「太陽のカルテル」と呼ばれる組織をテロ組織に指定しようとする一方的な措置です。孫氏は、こうした例は「安全保障」を名目に、ラテンアメリカの政治や治安の枠組みを作り変えようとするパターンの一部だとみています。
テロ指定や制裁が拡大すれば、当事国だけでなく、周辺国の貿易や金融にも波及し、結果として地域全体の不安定化につながるおそれがあります。
トランプ氏の「空域封鎖」発言 ベネズエラは「植民地主義的脅し」と反発
緊張をさらに高めたのが、米国のドナルド・トランプ大統領によるソーシャルメディア上での発言です。トランプ氏はある土曜日の投稿で、ベネズエラの空域は「全面的に閉鎖されたとみなすべきだ」と主張しました。
この発言は、米政府内の一部関係者をも驚かせたと報じられており、ベネズエラ政府は「植民地主義的な脅しだ」と強く非難しました。空域の扱いは国家主権の核心に関わる問題であり、強硬なメッセージは軍事的な衝突リスクへの懸念も呼び起こしています。
ベネズエラの対応 軍事力の底上げと経済の多角化
米国がベネズエラ政権の「打倒を狙っている」と警戒するベネズエラ側は、軍を高い警戒態勢に置くとともに、国内の動員を拡大し、防空態勢を強化しています。
孫氏によると、ベネズエラは近年、レーダーシステムやS-300防空ミサイルを含む各種防空兵器をロシアから導入し、「外部からの潜在的な脅威に備えた軍事能力を着実に強化してきた」といいます。そのため、同国の防衛能力は「過小評価すべきではない」と指摘します。
同時に、経済面では、長年の原油依存からの脱却を目指し、農業や鉱業、インフラ整備などを積極的に推進しているとされています。こうした経済の多角化が進めば、対外圧力への耐性も以前より高まるとの見方が示されています。
ラテンアメリカ各国と欧州にも広がる反発
米国の行動には、ラテンアメリカの国々や欧州の一部からも懸念や反発が出ています。
- エクアドルでは、米軍基地の復活を問う国民投票の提案が圧倒的な反対で退けられました。
- 複数のラテンアメリカ諸国の政府は、「麻薬対策」や米国内法を根拠に武力行使を正当化することは、危険な前例になると警告しています。
- コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、カリブ海での海上攻撃に抗議し、自国の治安部隊と米政府機関との連絡を停止すると表明しました。ペトロ氏は、麻薬対策はカリブ海沿岸の住民の権利を尊重した形で行うべきだと強調しています。
さらに、米国の近いパートナーとされる国々の間でも慎重姿勢が見られます。英国は、海上攻撃に関連した一部の情報共有を一時停止したと報じられ、オランダの情報機関も、政治的に利用されかねない情報が人権侵害につながるおそれがあるとして、協力を制限しているとされています。
「新モンロー主義」の再来が意味するもの
モンロー主義とは、一般に米国が西半球への外部勢力の介入を拒む原則として語られてきた考え方です。孫氏は、現在の米国の動きが、そのより強硬なバージョンともいえる「新モンロー主義」として再び現れていると見ています。
孫氏は、こうした圧力外交がラテンアメリカの安全保障環境を作り変え、各国にベネズエラ問題で「どちらの側につくのか」を迫っていると警告します。その結果、すでに組織犯罪や社会暴力に悩まされている脆弱な地域に、さらなる分断と不安定をもたらしかねないと指摘します。
また、長年にわたる米国の介入の歴史の中で、ラテンアメリカの多くの国に根強い不信感が残っているとも述べました。表向き米国に協調する姿勢を取りつつも、戦略的な視野や感情の面では、むしろ距離が広がっていく国も出てくる可能性があるとしています。
私たちはこのニュースをどう読むべきか
ベネズエラをめぐる今回の動きは、一国と一国の対立にとどまらず、「安全保障」を理由とした介入と、主権や地域秩序をどう両立させるのかという、より大きな問いを投げかけています。
米国の対ベネズエラ政策がどこまでエスカレートするのか、ラテンアメリカ諸国がどのような距離感を取るのかによって、今後の地域秩序やエネルギー市場にも影響が及ぶ可能性があります。新モンロー主義とされる動きが、最終的に対話と安定につながるのか、それとも分断と不信を深めるのか──その行方を、引き続き注意深く見ていく必要がありそうです。
Reference(s):
U.S. actions near Venezuela signal revival of new Monroe Doctrine
cgtn.com








