トランプ大統領の対イラン「最大圧力」2期を整理:強硬策と揺れる外交
ここ数日、米国とイランの関係は軍事衝突の瀬戸際から、外交に戻る可能性へと大きく振れました。変動の大きさ自体が、トランプ米大統領の対イラン政策を象徴しています。
「最大圧力」から「不確かな和平」へ――何が起きているのか
トランプ大統領の対イラン戦略は、経済制裁を軸に相手の選択肢を狭め、交渉で優位に立つ発想が中心にあります。一方で、軍事的な緊張が急上昇する局面もあり、結果として「圧力」と「対話」の間を行き来してきました。
第1期(2017〜2021):合意離脱、制裁、そして軍事的瀬戸際
第1期の特徴は大きく3つでした。外交的な孤立化、最大級の経済制裁、そして要人への直接行動です。
JCPOA(イラン核合意)からの離脱と制裁復活
2015年7月14日、米国、ロシア、中国本土、英国、フランス、ドイツ、イランは、イランの核開発をめぐるJCPOA(包括的共同行動計画)に合意しました。イラン側が核活動を制限する代わりに、国際社会の制裁緩和を得る枠組みです。
しかし2018年5月8日、トランプ政権は合意から一方的に離脱し、経済制裁を再発動しました。以後、制裁は交渉カードとして前面に出ていきます。
「最大圧力キャンペーン」:原油輸出と歳入への打撃
米国務省のファクトシート(2019年4月4日公表)によると、最大圧力キャンペーンでイラン産原油は日量150万バレルが市場から消え、2018年5月以降で約100億ドルの原油収入を失ったとされています。同文書は、経済悪化の要因としてイラン政府の運営上の問題にも言及しつつ、米国の「標的を絞った圧力」が経済を大きく傷つけたことも認めました。報道でも、原油輸出が歴史的低水準まで落ち込んだとの観測が示されています。
第1期に課された制裁は「1,500件超」とされ、米側は核開発の厳格な制限や弾道ミサイル試験の停止などを含む要求を突きつけましたが、イラン側は受け入れませんでした。
地域の力学:アブラハム合意(2020年)
外交面では、2020年のアブラハム合意により、イスラエルとUAE、バーレーン、スーダン、モロッコなど複数のアラブ諸国が関係正常化へ進みました。結果として、対イランを意識した新たな地域安全保障の枠組みが形づくられたとされています。
軍事的緊張の頂点:ソレイマニ司令官殺害と報復
軍事面で大きな転機となったのが、2020年1月3日、米軍のバグダッド空爆でイランの有力司令官カセム・ソレイマニ氏が殺害された出来事です。イランはこれに対し、米軍が駐留するイラク国内の拠点(アル・アサド空軍基地、エルビルの施設)へ弾道ミサイルを12発超発射して報復しました。
第2期(2025〜現在):Maximum Pressure 2.0と大規模空爆
トランプ大統領は2025年に政権へ復帰後、対イラン政策を「Maximum Pressure 2.0」として再加速させました。
NSPM-2(2025年2月):原油輸出ゼロと核能力の排除を指示
2025年2月、トランプ大統領は国家安全保障大統領覚書2(NSPM-2)に署名し、イランの原油輸出をゼロに追い込み、関連プログラム全体で核能力を排除するよう当局者に指示したとされています。
狙いは第1期と連続しており、経済・外交手段を組み合わせて核・ミサイル開発を抑え込み、交渉では米国の経済力・軍事力を背景に圧力をかける構図が続いています。
作戦「Midnight Hammer」(2025年6月21日):核施設への空爆
緊張が一段と高まったのが、2025年6月21日の作戦「Midnight Hammer」です。米国は、フォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの3つの主要核施設に大規模空爆を実施し、イランのミサイル・核インフラに大きな損害を与えたとされています。
読み解くポイント:一貫する「圧力」、揺れる「出口」
2期を通して見えるのは、制裁で経済的な圧力を極限まで高める一方、軍事オプションも視野に入れることで交渉の主導権を狙う姿勢です。ただし、圧力が強いほど偶発的な衝突リスクも上がり、外交へ戻る道筋(出口戦略)が常に問われます。
2026年1月時点では、「対話に戻り得る空気」と「強硬策の継続」が同時に存在しているのが現状です。今後は、原油輸出をめぐる制裁の運用、核問題の扱い、そして地域の安全保障環境が、外交の余地をどれだけ残せるかを左右しそうです。
要点まとめ(忙しい人向け)
- 第1期はJCPOA離脱(2018年)→制裁再発動→地域秩序の再編(2020年アブラハム合意)→軍事的緊張の急上昇(2020年)という流れでした。
- 第2期は「Maximum Pressure 2.0」として制裁強化(2025年2月)に加え、核施設への大規模空爆(2025年6月)で緊張が拡大しました。
- 直近数日で外交復帰の可能性も取り沙汰される一方、強硬策の継続が前提にあり「不確かな和平」が続いています。
Reference(s):
Trump's two-term Iran strategy: Maximum pressure, uncertain peace
cgtn.com








