氷雪の舞台で見せた温もり:北京五輪で話題の面塑職人 video poster
2022年北京冬季オリンピックの期間、世界中から届いた心温まる瞬間の数々の中に、一つだけ際立っていた映像がありました。モナコ公国(モナコ)のアルベール2世公が、中国の面塑(小麦粉粘土細工)職人に双子の子どもたちのために作品をもう一つ作ってほしいと頼む姿です。それから数年を経た今年、CGTNのドン・シュエ記者は、その映像の中心にいた職人、張さん(仮名)にインタビューし、彼の伝統と向き合う日々に迫りました。
五輪会場で生まれた、一粒の麦の交流
あの映像は、競技の熱戦とはまた別の、ほっこりとしたニュースとしてソーシャルメディアで拡散されました。アルベール2世公は張さんの作品に目を留め、手に取り、「これはすばらしい。私の子どもたちも喜ぶだろう。もう一つ作ってくれないか」と直接依頼したのです。氷雪が張る冬の北京で、細やかな手仕事を通じた一つの文化交流が生まれました。
張さんはインタビューで、あの時の驚きと喜びを振り返ります。「公が作品をとても気に入ってくださり、子どもたちのためにと頼んでくださった。単なる『お土産』ではなく、家族の温もりを運ぶ『作品』としてリクエストをいただいたことに、職人としての誇りを感じました」。
伝統の技を現代に生き続かせる
面塑は、中国本土に古くから伝わる民間芸術で、小麦粉を主原料とした粘土で人物や動物などを造形します。張さんは幼い頃から祖父の仕事を見て育ち、この道に入りました。
「昔は縁日や祭りの風景によくありました。孫悟空や猪八戒などの物語の登場人物を作り、子どもたちを喜ばせるのが役目でした」と張さんは語ります。しかし時代とともに需要が減り、この手仕事を続ける職人は減っていきました。
- 素材の工夫:保存性を高めるための新しい素材の配合を研究。
- 題材の拡大:アニメキャラクターや現代の著名人など、時代に合わせた題材を取り入れる。
- 体験の場の提供:ワークショップを開催し、特に若い世代に技術の魅力を伝える。
張さんは、伝統を守るとは単に古い形を継承するだけではなく、現代の人々の生活や好みに溶け込む形で進化させていくことだと考えています。北京五輪での経験は、彼の作品が国際的な舞台で評価されただけでなく、この伝統工芸に新たな光が当たるきっかけにもなりました。
静かなブームと、次世代への手渡し
張さんによれば、北京五輪以降、面塑に対する注目は確実に高まっているそうです。特にオンライン動画プラットフォームでは、作品制作の過程を投稿する若い職人が現れ、静かなブームが起きています。これは、短い動画がきっかけで一つの伝統文化が再発見される、現代ならではの現象と言えるかもしれません。
「今、私が最も力を入れているのは、子どもたちへのワークショップです」と張さんは話します。指先で形を作り上げていく過程は創造力を育み、何よりも『自分で何かを作り出す』喜びを体感させてくれます。五輪で見せた一粒の小さな作品が、遠く離れたモナコの子どもたちに届いたように、今度はここで生まれた小さな作品が、次世代を担う子どもたちの心に、文化の種を蒔くことを願っています」。
一つの小さな粘土細工が、国境を越え、世代を超えて温もりを運ぶ——。テクノロジーが急速に進化する2026年の今、手仕事の持つ静かで確かな力が、改めて見つめ直されるひとときです。
Reference(s):
cgtn.com



