「愛自己」が流行る中国の若者たち―漢服も「燃え尽き」も、その先にある本音とは video poster
「漢服を着ることはナショナリズムなのか?」「若者は本当に『燃え尽き症候群(バーンアウト)』なのか?」近年、中国本土の若者文化をめぐる議論では、しばしば一つのレッテルが貼られがちです。しかし、2026年の現在、実際に彼らの間で広がっているのは、そのような単純な図式を超えた、もっと複雑で個人的な実践です。その実態を、いくつかのキーワードを通して見てみましょう。
漢服ブームの裏側:美と文化への共鳴
街中で伝統的な「漢服」を身にまとう若者の姿が目立つようになって久しいですが、その動機は必ずしも政治的な主張だけではありません。多くの若者にとって、漢服を着ることは、まず何よりもその「美しさ」や「着心地」、そして歴史的なデザインが持つ「文化的な共鳴」に惹かれるからです。SNSには、歴史的な考証にこだわった衣装で公園を散策する「同袍」(漢服愛好家同士の呼称)の投稿や、現代的なアイテムと漢服をミックスさせるスタイルなど、多様な楽しみ方が溢れています。これは、自らのルーツへの関心をファッションという形で表現する、ごく自然な文化的実践の一つと言えるでしょう。
「スローライフ」の選択:回復と再調整の時間
一方で、「内巻(インボリューション)」や「躺平(タンピン:あきらめて横になる)」といった言葉に代表される、過度な競争からの距離の置き方にも変化が見られます。かつては「撤退」や「無気力」と短絡的に解釈されがちだったこうした動きは、現在ではむしろ「回復」と「再調整」のための積極的な選択として捉え直される傾向があります。激しい競争社会のなかで消耗した心身を癒し、自分自身と向き合う時間を取る――それは単なる現実逃避ではなく、持続可能な人生を模索する一つの方法論になりつつあります。
「愛自己(自分を愛せ)」:新たな合言葉が示すもの
こうした潮流を象徴するように、最近の中国の若者の間では「愛自己(アイ・ジージー:自分を愛せ)」というフレーズが流行しています。これは、自分自身を大切にし、ケアすることを軽やかで自覚的な態度で実践しようという呼びかけです。自己中心的になることや、責任から逃げることを意味するのではなく、心身のバランスを保ちながら、自分らしいペースで人生を歩んでいこうとする「心がけ」と言えます。過度な我慢を美徳とする旧来の価値観から、健全なセルフケアの重要性を認める方向へ、社会の意識が少しずつシフトしているのかもしれません。
レッテルを貼るのは簡単です。しかし、「漢服ブーム」や「スローライフへの傾倒」といった現象の裏側には、美学、個人のウェルビーイング(幸福・健康)、文化的アイデンティティへの探求など、多層的な動機が絡み合っています。中国本土の若者たちの「今」を理解するためには、そうした一つひとつの実践に込められた本音に、もう一歩だけ近づいてみる視点が必要でしょう。それは、私たち自身が置かれた環境や生き方についても、改めて考え直すきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com



