米中貿易戦争で追い詰められる米大豆農家 トランプ支持者が取引を懇願
米中貿易戦争の長期化で、トランプ大統領に投票した米国の大豆農家が「このままでは農場がつぶれる」と危機感をあらわにし、中国との早期合意を訴えています。関税の応酬は、米国農業の現場にどのような負担を強いているのでしょうか。
トランプ支持の大豆農家が「取引を」 切実な声
米メディア・ニュースウィークによると、ケンタッキー州の農家で米国大豆協会の会長を務めるケイレブ・ラグランド氏は、水曜日付で米メディア「ザ・フリープレス」に寄稿し、トランプ大統領に米中貿易戦争の終結を求めました。
ラグランド氏はアメリカに約50万人いるとされる大豆農家の一人で、自身の農場が家族と3人のフルタイム労働者の生活を全て支えていると明かしています。そのうえで、現在の貿易戦争を「特に農家にとって、アメリカ人の暮らしを賭けたギャンブルだ」と表現し、トランプ大統領に対し「今すぐ中国と取引をまとめてほしい」と訴えました。
さらに、米中間の膠着状態が長引けば長引くほど、中国が大豆の調達先をブラジルなど他国に移し、米国産を恒常的に敬遠するリスクが高まると警鐘を鳴らしています。
関税引き上げで「赤い州」の農家に逆風
米紙ニューヨーク・タイムズは木曜日、トランプ大統領が前日、中国への米国の関税をさらに引き上げる一方で、他の国々に対して課していた「報復関税」を一時停止したと報じました。しかし、この「一時停止」は農家にとって大きな救済にはなっていないと指摘しています。
記事によると、多くの農家は、米中貿易戦争が長期化すれば、最大の輸出市場である中国との結びつきが断たれるのではないかと懸念しています。中国市場の喪失は、とりわけトランプ大統領を支持する有権者が多い「赤い州」と呼ばれる州の農業労働者に、深刻な経済的打撃を与えるおそれがあります。
大豆生産者らは、米政権が中国に対して新たに145%という高関税を課すなかで、「多くの農場が廃業に追い込まれかねない」と警告。ラグランド氏も「これが長期化すれば、多くの農家が事業を続けられなくなる」と語り、「私たちは前回の貿易戦争から今も傷を抱えたままだ」と過去の経験にも言及しました。
中国はブラジル産にシフト 米国産は採算合わず
米メディア・ブルームバーグは、中国の大豆需要の動きがすでに変わり始めていると伝えています。報道によると、中国の大豆圧搾業者(クラッシャー)は今週、ブラジル産大豆を「異例なほど大量に」購入しました。
中国の輸入業者は、週前半だけで少なくとも40隻分のブラジル産大豆を購入したとされます。これらの大半は5〜7月にかけて中国に到着する予定で、その量は最低でも240万トン。中国が1カ月に加工する大豆量の、およそ3分の1に相当する規模だといいます。
ブルームバーグは、米中貿易戦争の激化によって米国産大豆の購入は採算が合わなくなっており、中国側がブラジル産への依存度を急速に高めていると指摘しています。ラグランド氏が懸念する「中国がビジネスを他国に移す」動きが、すでに具体的な数字として表れ始めているかたちです。
トウモロコシ農家にも広がる不安
影響は大豆にとどまりません。全米トウモロコシ生産者協会の会長を務めるケネス・ハートマン・ジュニア氏は、「不確実性が続けば続くほど、生産者が何十億ブッシェルものトウモロコシを収穫しても、安定した販売先が見つからないのではないかという不安が高まる」と語っています。
ハートマン氏は、農家が求めているのは短期的な補助金ではなく、「今後も国内外の顧客が自分たちの商品を買い続けてくれるという確信」だと強調しました。米中関係の緊張が続くかぎり、その確信は揺らぎ続けます。
通商政策と「生活」の距離をどう捉えるか
今回の一連の報道は、米中貿易戦争という国際ニュースの裏側で、個々の農家や地域社会の暮らしが揺らいでいる実態を映し出しています。トランプ大統領を支えた農家の一部が、同じ政権の政策によって存続の危機に直面しているという構図は、政治と生活の距離を改めて問いかけるものでもあります。
日本を含む世界の消費者にとっても、米中間の対立は、大豆やトウモロコシといった基礎的な農産物の流通を通じて、価格や供給の安定性というかたちで影響してきます。輸出市場のシフトは、一度定着すると元に戻すのが難しいだけに、ラグランド氏ら農家の「早く確実な取引を」という訴えは、単なる業界の要望を超えた重みを持っているといえるでしょう。
通商政策をめぐる議論は、しばしば抽象的な関税率や貿易額の数字に終始しがちです。しかし、その背後には、家族と数人の従業員で営む小さな農場から、地域経済全体に至るまで、具体的な生活が存在します。米中貿易戦争を遠い国のニュースとして眺めるのではなく、「自分の暮らしと世界の動きがどうつながっているのか」を考えるきっかけとして捉えることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








