カリフォルニア農家が悲鳴 トランプ関税で輸出市場喪失とコスト増の二重苦
トランプ米大統領の関税政策の影響で、米国最大の農業州カリフォルニアの農家が輸出市場の喪失とコスト増に直面し、経営の存続さえ危ぶまれています。国際ニュースとしても重要なこの動きを、日本語で整理します。
米国最大の農業州に走る危機感
カリフォルニア州の農業は年間590億ドル規模とされ、米国最大の農業産業です。現在、この巨大産業が、関税のコスト増と輸出市場の縮小という二重の打撃にさらされています。
背景には、トランプ米大統領が導入した関税で国際市場が揺さぶられ、中国やカナダといった主要な貿易相手国が報復関税を課したことがあります。その結果、カリフォルニアの農家は次のような構図で苦境に立たされています。
- 農業資材や農機など輸入品への関税で、生産コストが上昇
- 中国やカナダなどによる報復関税で、輸出市場が縮小・停滞
売り上げが減っているにもかかわらずコストは増えるという、経営上もっとも厳しい状況に追い込まれているのです。
アーモンド農家「すべてを失う瀬戸際」
カリフォルニアのアーモンド産業は、世界の生産量の76%を担うとされる、州を代表する輸出産業です。その分、国際市場の変化には極めて敏感です。
スタニスラウス郡で55ヘクタールのアーモンド畑を兄とともに営み、大手協同組合ブルーダイヤモンド・グロワーズを通じて出荷しているクリスティン・ゲンパールさんは、現状を「圧倒されるようだ」と表現します。
ロサンゼルス・タイムズによると、ゲンパールさんは「私たちは本当に大きな打撃を受けました。中国向けの市場は丸ごとオーストラリアに持っていかれたんです」と語りました。かつて重要な輸出先だった中国市場は、関税をめぐる緊張の高まりをきっかけに、オーストラリアなど他の供給国へシフトしてしまったのです。
彼女はさらに「このままでは、すべてを失う瀬戸際にいる」と訴えています。アーモンド価格は、以前の関税による打撃からようやく回復の兆しを見せ始めていましたが、新たな関税で先行きへの不安が再燃しています。
カナダの報復関税、柑橘とワインにも波及
影響を受けているのはアーモンドだけではありません。カリフォルニアの柑橘農家やワイン産業も、報復関税と輸出減少の波にのまれています。
リードリーに拠点を置く有機農場クリークサイド・オーガニクスの共同最高経営責任者(CEO)、ビアンカ・カプリエリアンさんの家族は、約200ヘクタールの農地で柑橘類を栽培し、カナダなどにオレンジやレモンを輸出してきました。
しかし、カナダが米国産品に25%の報復関税を課して以降、「カナダからの注文は目に見えて減るか、完全に途絶えるケースも出てきた」と、カプリエリアンさんはロサンゼルス・タイムズに話しています。輸出先を失えば、国内市場に果物があふれ、価格下落につながる懸念も強まっています。
カリフォルニアワインも例外ではありません。カナダはこれまで年間10億ドルを超えるカリフォルニアワインを輸入してきましたが、報復措置の一環として、いくつかの州では店頭から米国産ワインを棚卸しする動きが見られます。ワイン産業にとっても、重要な輸出市場を失うリスクが現実味を帯びています。
前政権期から続く「関税疲れ」
現在の状況は、トランプ氏の最初の政権期に導入された対中国関税を想起させます。アメリカ大豆協会によれば、2018年当時、これらの関税によって米国の農産物輸出は推計270億ドル減少し、その71%が大豆に集中していました。
当時、連邦政府は農家向けの支援金(いわゆるベイルアウト)を実施しましたが、それでも多くの農家は失った国際市場のシェアを回復できなかったとされています。いったん他国の供給に切り替えた輸入業者や消費地の市場を取り戻すのは、簡単ではありません。
アリゾナ大学でアグリビジネス経済・政策を担当するジョージ・フリスボルド氏は、米農業専門メディアFarm Progressに対し、トランプ政権1期目の米農家の所得は、オバマ政権期に比べて10〜13%低かった一方、政府からの補助金は約2倍になっていたと指摘しています。
フリスボルド氏は「農家には支払いが行われましたが、それでも損失を埋め合わせるには足りませんでした。市場から収入を得るより、政府からの支払いを望む農家など見たことがありません」と語り、補助金では関税の影響を補いきれない現実を示しました。
失われる信頼、重くのしかかるコスト
関税の影響は、単なる売り上げの減少にとどまりません。長年かけて築いてきた国際市場での信頼関係にも影響が及んでいます。
アメリカ大豆協会の会長ケイレブ・ラグランド氏は、CNBCに対し「関税は信頼を損なう」と述べ、「新しい顧客を探すより、すでに取引している顧客を維持する方がはるかに簡単だ」と強調しました。いったん関係が途切れた輸出市場を取り戻すには、大きな時間とコストがかかるという指摘です。
同時に、米国が海外から輸入する農業機械や部品、肥料などにも関税がかかるため、農家の経営コストは上昇しています。もともと利益率が高くない農業経営にとって、こうしたコスト増は収益を一段と圧迫します。
ゲンパールさんは「誰も混乱の中心にいたいとは思っていません」と語り、不確実な状況が夜も眠れないほどの不安につながっていると明かします。カプリエリアンさんも「これほど先行きが読めないと感じるのは、記憶にない」と話しており、現場の緊張感は高まる一方です。
日本の読者への問い:関税で誰がリスクを負うのか
カリフォルニアの事例は、関税という政策手段が、単純な「自国産業の保護」だけでは語れないことを浮き彫りにしています。国際ニュースとして眺めるだけでなく、日本の農業や通商政策を考えるうえでも示唆に富む出来事です。
- 関税は、本来守ろうとするはずの国内生産者に、どのような負担をもたらすのか。
- 一度失われた海外市場や信頼は、どれほどの時間とコストをかければ回復できるのか。
- 消費者、農家、政府。それぞれの立場で「コスト」と「利益」はどのように分配されるべきなのか。
世界の農業は、国境を越えたサプライチェーンと信頼関係の上に成り立っています。カリフォルニアの農家が直面している現実は、グローバルな経済政策の変化が、現場の暮らしと地域経済にどう跳ね返るのかを考えるための一つの窓と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








