関税で一番損をするのは米国?スタンダードチャータードの警鐘 video poster
米国が導入した新たな関税は、世界ではなく米国自身の景気を最も傷つけるかもしれない――国際金融大手スタンダードチャータードの最高投資責任者(CIO)、スティーブ・ブライス氏は、こうした見方を示しています。
米国こそが関税リスクの「発信源」となる構図
ブライス氏は、中国の国際ニュースチャンネルCGTNのインタビューで、市場は米国こそが関税による不確実性の発信源になっていると認識しつつあると指摘しました。そのうえで、関税の最大の影響は世界経済全体ではなく、米国経済自身に降りかかる可能性が高いと述べています。
- 関税をめぐる不透明感を生み出しているのは、主に米国側の政策である
- その結果として生じるコストや不安定さは、最終的に米国経済に集中しやすい
- 世界全体よりも、米国内の企業・家計への負担が大きくなるリスクがある
2025年現在も、関税や貿易政策は国際ニュースと金融市場の大きなテーマであり続けていますが、その影響の「矛先」がどこに向かうのかという視点は、意外と見落とされがちです。
なぜ関税の負担が米国に跳ね返るのか
輸入コストの上昇は国内の企業と消費者に
関税は、輸入品に上乗せされる追加の税金です。一見すると、関税をかけられる相手国が損をして、自国が得をするように思えます。しかし実際には、次のような動きが起きやすいとされています。
- 輸入品の価格が上がり、米国内でその商品を仕入れる企業のコストが増える
- 企業はそのコストを販売価格に転嫁し、消費者物価の上昇につながる
- 結果として、米国の企業や家計の負担が重くなる可能性が高い
つまり、関税という政策手段は、相手国だけでなく、自国のインフレ圧力や利益率の低下という形で自国経済にも影響を与えます。ブライス氏が「最大の影響は米国経済に」と警鐘を鳴らす背景には、こうしたメカニズムがあります。
不確実性が投資とサプライチェーンを冷やす
ブライス氏が強調したのは、関税そのものの水準だけでなく、「いつ・どの品目に・どの程度」関税がかかるか分からないという不確実性です。
- 企業は先行きが読めないと、設備投資や雇用の拡大に慎重になりやすい
- サプライチェーン(供給網)の見直しには時間とコストがかかる
- 政策が頻繁に変わると、長期的なビジネス戦略を立てにくくなる
こうした不確実性は、まずその政策を打ち出している国の企業心理を冷やします。その意味で、米国発の関税が、米国自身の投資・雇用・成長にブレーキをかけるリスクがあるというのが、同氏の問題意識だと言えます。
世界経済より米国経済への影響が大きいという見方
ブライス氏は、関税の最大の影響が世界経済ではなく米国経済に及ぶ可能性を指摘しています。これは、世界が多くの国と地域から成るネットワークであるのに対し、特定の国の政策はまずその国内に直接作用する、というシンプルな構図でもあります。
他の国や地域は、時間をかけて調達先や輸出先を切り替えることで、ある程度ショックを分散することができます。一方、関税を課した側の国は、自らの決定によって生じたコスト上昇やサプライチェーンの混乱を、国内で抱え込みやすいという側面があります。
この意味で、関税は「外に打ち出したつもりの政策が、ブーメランのように自国に戻ってくる」性格を持ちうると考えられます。スタンダードチャータードによる今回の指摘は、その点をあらためて意識させるものと言えるでしょう。
日本やアジアの投資家・ビジネスへの示唆
米国の関税政策をめぐる不透明感は、日本を含むアジアの投資家や企業にとっても無視できません。ただし、ブライス氏の発言を踏まえると、見方を少し変えるヒントが得られます。
- 米国発の関税ニュースは、世界経済不安というより「米国経済の行方」を占う材料として見ることができる
- 株式や為替だけでなく、債券市場やコモディティ(商品)価格にも波及しうる
- 関税の水準よりも、「政策変更の頻度」や「メッセージの一貫性」をリスク要因としてチェックすることが重要になる
通勤時間やスキマ時間にニュースを追う私たちにとっても、「どの国が損をするか」という単純な図式ではなく、「不確実性の源がどこにあり、その帰結がどこに向かうのか」という視点を持つことが、情報を読み解くうえでの鍵になりそうです。
関税ニュースをどう読み解くか
関税はしばしば、「相手国に痛みを与える手段」として語られます。しかしスタンダードチャータードのブライス氏の指摘は、自国経済への副作用こそ慎重に見極める必要があるという、もう一つの現実を示しています。
2025年の今後も、米国の関税をめぐる動きは国際ニュースや金融市場の重要なテーマであり続けるでしょう。そのたびに、「世界全体へのショック」だけでなく、「米国自身への影響」と「不確実性の大きさ」に目を向けることが、落ち着いた判断につながるはずです。
関税ニュースを目にしたとき、誰がどのような不確実性を生み、そのコストを最も負担するのはどこか――ブライス氏のコメントは、そんな問いを私たちに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








