カリフォルニア州がトランプ関税の緊急差し止めを要請 経済被害2.5兆円超を主張
カリフォルニア州が、ドナルド・トランプ米大統領による大規模な関税政策は違法だとして、連邦裁判所に緊急の差し止めを求めました。物価高と雇用への打撃が広がる中、通商をめぐる大統領権限の範囲が改めて問われています。
何が起きたのか トランプ関税の「即時停止」を要求
カリフォルニア州政府は今週火曜日、トランプ大統領の関税措置をめぐる訴訟で、連邦地裁に予備的差し止め命令(仮処分)を申請しました。訴訟が続く間だけでも、これらの関税を一時的に止めてほしいと求めています。
訴えが提出されたのは、カリフォルニア州北部地区を管轄する連邦地方裁判所です。州側は、トランプ大統領が国家非常事態を口実に関税を一方的に引き上げたのは違法だと主張し、違法な関税が続くことで州経済に深刻な被害が出ていると訴えています。
州の試算 2.5兆円超の損失と6万4千人超の雇用減
ギャビン・ニューサム州知事とロブ・ボンタ司法長官は、関税によってカリフォルニアの消費者に約250億ドル(約2.5兆円)規模の負担が発生し、6万4千人以上の雇用が失われる恐れがあると試算しています。
ボンタ司法長官は声明で、昨年の選挙で有権者が求めたのは物価の安定だったのに、今の関税政策は生活費の急騰と賃金低下、雇用減少を招き、中小企業とイノベーションを不確実性の渦に巻き込んでいると警鐘を鳴らしました。
ニューサム知事も、トランプ大統領は権限を逸脱しており、そのツケを払わされているのは家計や企業、港湾だと批判。米国内最大の州経済を持つカリフォルニアにとって、こうした弱く無謀な政策の影響は特に大きいと訴えています。
州政府はまた、2025~26年度の州予算見通しが下方修正されている背景として、関税をめぐる不透明感に起因する失業率の上昇と短期的なインフレ懸念を挙げています。
争点はどこか 大統領権限と議会の役割
この訴訟の焦点は、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)を使って、議会の承認なしに関税を課したことが大統領権限の範囲を超えているかどうかです。
同法は、本来は対外的な緊急事態に対処するための法律ですが、今回のように広範囲な関税引き上げに使うことが許されるのかが問われています。法学者の間では、この訴訟が最終的に連邦最高裁まで持ち込まれ、通商政策における大統領と議会の力関係をめぐる憲法上の論争に発展する可能性も指摘されています。
中小企業とマイノリティ・ビジネスへの打撃
カリフォルニア州側は、経済的な打撃が特に中小企業、とりわけマイノリティ・コミュニティに集中していると訴えています。
サクラメント・ヒスパニック商工会議所のキャシー・ロドリゲス=アギーレ会頭は、関税によるコスト上昇とサプライチェーン(供給網)の混乱により、ラテン系の起業家が運営する地元の小規模事業が最も深刻な打撃を受けていると証言しています。
仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁すれば顧客を失い、転嫁できなければ利益が圧迫されるという板挟みの状況の中で、多くの事業者が先行きの見通しを立てられずにいるといいます。
農業と報復関税 輸出州としての痛み
カリフォルニアの農業も、米国の貿易相手による報復関税の影響で厳しい状況に置かれています。果物やナッツ、ワインなど輸出向けの農産物が多い同州では、相手国の追加関税によって海外市場での競争力が低下し、農家の収入や投資計画に不安が広がっています。
関税の応酬は、単に国家間の貿易統計の問題にとどまらず、地域経済や雇用、コミュニティの生活に直接跳ね返っていることが改めて浮き彫りになっています。
ニューヨークでも 中小企業5社が別の訴訟
トランプ関税に対する法廷闘争はカリフォルニア州だけではありません。ニューヨークを拠点とする米国国際貿易裁判所でも、別の訴訟が進んでいます。
同裁判所では、米国の小規模企業5社が、トランプ大統領のいわゆるリベレーション・デー関税の停止を求めています。原告側の弁護士であるジェフリー・シュワブ氏は、4月2日に発動されたこの関税措置は、これまでにない形で大統領権限を拡張するもので、法律の根拠を欠いていると主張しています。
シュワブ氏によれば、トランプ大統領の解釈を認めれば、大統領は貿易赤字を理由に国家非常事態を宣言するだけで、いつでも、どの水準でも関税を一方的に引き上げられることになり、どの法律もそのような白紙委任を与えてはいないといいます。
今後の焦点 物価と民主主義のバランス
今回のカリフォルニア州の仮処分申請について、裁判所はまだ審理期日を設定していません。今後のポイントとしては、次のような点が注目されます。
- 連邦地裁が予備的差し止め命令を出すかどうか
- 国際緊急経済権限法の適用範囲について、どこまで司法が踏み込むか
- カリフォルニア州の2025~26年度予算編成や雇用情勢への影響
- ニューヨークの国際貿易裁判所の判断との連動や、最高裁への持ち込みの可能性
物価高や所得格差が社会不安につながりやすい今、貿易不均衡の是正と国内の家計・中小企業の負担軽減をどう両立させるのかは、多くの民主主義国家が直面する共通の問いでもあります。
トランプ政権の関税をめぐる一連の訴訟は、単なる米国の内政ニュースにとどまらず、通商政策の決定プロセスや、大統領権限と議会・司法とのバランスをどう保つのかという、より大きなテーマを私たちに投げかけています。
Reference(s):
California seeks emergency halt to Trump tariffs as harm mounts
cgtn.com








