2025年サマーダボス 李強総理のテック演説を世界の参加者はどう聞いたか video poster
2025年のサマーダボスフォーラム開幕式で中国の李強国務院総理が行った演説をめぐり、会場にいた各国の参加者からは「中国はAIなど最先端技術のリーダーであり、世界との協調の余地は大きい」との声が相次ぎました。テクノロジーと国際協力を軸にしたこのスピーチは、いま何を示しているのでしょうか。
2025年サマーダボスで示された「協調する技術大国」像
李強総理は、水曜日に行われた2025年サマーダボスフォーラムの開幕式で演説し、科学技術とイノベーションを中国経済の原動力と位置づけました。AI(人工知能)や先端製造などの分野で進む技術革新を紹介しつつ、それらを世界と分かち合い、各国と協力していく姿勢を強調しました。
演説後、中国の国際メディアであるCGTNは会場の参加者に取材を行い、海外から見た中国のテック戦略や国際協調の可能性についての声を集めました。
イノベーションの「エコシステム」を評価する声
フランスを拠点とするシンクタンク「The Bridge Tank」のジョエル・リュエ会長は、科学技術政策の鍵は「研究開発、製品・サービスの開発、そしてその資金調達が密接に結び付いていること」だと指摘します。そのうえで、「中国のエコシステムにはこれらがそろっており、統合された形であらゆる分野に存在している」と評価しました。
彼の指摘を整理すると、持続的なイノベーションには次の三つの要素が不可欠だと言えます。
- 研究開発(R&D)で基礎となる技術や知見を生み出すこと
- それを実際の製品・サービスへと結び付ける産業側の仕組み
- 長期的な視点で支える資金と政策環境
リュエ氏は、こうした要素がそろった環境が中国で形成されつつあることが、世界の技術協力にとっても重要だとの見方を示しました。
AIとグリーンテックで広がる協力余地
米国のAI企業Shiruを率いるジャスミン・ヒュームCEOは、「中国はAIなどの技術を活用して新しい進歩を切り開く大きなリーダーであることがはっきりした」と述べ、中国の動きを高く評価しました。そのうえで、「世界の他の地域もそうした進歩の恩恵を受け、ともに協力していけると感じている」とし、国境を越えた連携への期待を語りました。
ベトナムの「第4次産業革命センター」に所属するイェン・ロン氏も、アジアのテック協力に大きな可能性を見ています。ベトナム自身も技術分野で台頭しており、「とくにアジア諸国との連携を深めていきたい」と述べたうえで、中国がテクノロジーとAI分野での協力の未来づくりに積極的に関与していることに「非常にうれしく、ワクワクしている」と話しました。
世界が期待するオープン・イノベーション
リュエ氏は、今後とくに「グリーン水素(再生可能エネルギー由来の水素)」「新エネルギー」「新素材」といった分野で、国境を越えたオープン・イノベーションが進むことに期待を寄せました。
また、電池や半導体などに使われる重要資源を念頭に「重要な素材のバリューチェーン(価値連鎖)が開かれた形で維持されることを望む」と述べ、「世界が変革していくためには、オープンなイノベーションとオープンなバリューチェーンが必要だ」と強調しました。
エネルギー転換や脱炭素が世界的な課題となるなかで、技術と資源の流れをどこまで開いた形で維持できるかは、今後の国際経済秩序を左右するテーマでもあります。サマーダボスの議論は、その一端を映し出していると言えます。
欧州企業にとってのチャンスと課題
中国にある英国商工会議所の会頭を務めるクリス・トーレンズ氏は、中国が複数の技術分野で「非常に魅力的な製品やサービス」を持つとしたうえで、そのリーダーシップを認めました。
その一方で、「いまの課題は、とくに欧州の企業や政府がより強い橋を築き、新しい技術を取り入れていくことだ」と指摘します。欧州企業には「多くを学び、多くの利益を得られる余地がある」とし、中国との関係強化を通じた技術協力の重要性を強調しました。
技術標準づくりやサプライチェーンの再構築が進むなかで、欧州勢がどのように中国と協力の枠組みを築くかは、アジアや日本の企業にとっても無関係ではありません。
日本とアジアへの示唆
今回の出席者の声から浮かび上がるのは、「対立か分断か」ではなく、「どのように協調のルールをつくるか」という問いです。AIやグリーンテック、重要素材の分野で、中国を含むアジア諸国がどのような形で連携するかは、今後の成長と社会課題の解決を左右します。
日本やアジアの企業・研究機関にとっては、次のような視点がカギになりそうです。
- 技術協力の国際会議や共同プロジェクトに積極的に参加し、ルール作りの現場に関与すること
- データやサプライチェーンの「開放性」と「信頼性」を両立させる仕組みを模索すること
- 若手の技術者や研究者が国境を越えて学び合える教育・交流の場を増やすこと
サマーダボスで交わされた言葉は、単なる賛辞にとどまりません。テクノロジーが国境を越えて共有される時代に、どのような協力の枠組みを描くのか。アジアの一員である日本にとっても、その議論にどう関わるかが問われています。
Reference(s):
Voxpop: Global attendees on tech highlights of Premier Li's speech
cgtn.com








