中国経済、予想以上の成長でも専門家が「より強い財政刺激」を提言
2025年上半期に予想を上回る成長を遂げた中国経済ですが、専門家は、今年後半の成長を持続させるには、内需を下支えするより強力な財政刺激策が不可欠だと指摘しています。中国のシンクタンクである中国金融四十人論壇(CF40)の報告書は、追加の国債発行や都市更新投資、利下げ、不動産市場の安定策という4つの柱を提案し、議論を呼んでいます。
予想以上の成長でも「内需の底上げ」が課題に
報告書によると、中国の実質GDPは2025年上半期に5%超の伸びとなり、市場の予想を上回りました。成長をけん引したのは、堅調な工業生産と輸出です。
とくに、主要な工業企業の付加価値ベースの生産は、GDP成長率を上回るペースで拡大しました。米国との通商摩擦や関税を巡る不透明感が続くなかでも、中国企業が輸出市場への対応を進めた結果、第2四半期の輸出は平均で6.2%増と、第1四半期の5.1%増から加速したと報告されています。
消費回復を支える「トレードイン」プログラム
国内消費も持ち直しの動きを見せています。小売売上高の伸びは加速しており、その背景の一つとして、政府が支援する消費財の買い替え促進策「トレードイン」プログラムが挙げられています。
「トレードイン」プログラムは、家電や自動車などの旧製品を下取りし、新製品への買い替えを促す政策です。家計の負担を軽減しつつ需要を喚起することで、景気を下支えする狙いがあります。
財政の役割が一段と重要に
こうした中で、CF40の専門家は、2025年後半に向けて国内需要の拡大を最優先課題とすべきだと強調します。とくに、消費を支える政策、インフラ投資、不動産市場の安定を支える財政措置の重要性が指摘されています。
一方で、財政運営には制約も見え始めています。報告書によると、2025年1〜5月の政府債務発行額は6.3兆元(約8,800億ドル)と、前年同期の2.5兆元を大きく上回りました。年後半に発行できると見込まれる額は7.6兆元とされていますが、これは前年1年間の水準を下回るとされています。
前半に債務発行が前倒しされたことで、今後どこまで追加の財政出動が可能か、財政の「余力」と「慎重さ」のバランスが焦点になっています。
CF40・張斌氏が示した4つの政策提言
中国社会科学院世界経済与政治研究所の副所長で、CF40のシニアフェローでもある張斌(Zhang Bin)氏は、こうした状況を踏まえ、次の4つの政策対応を提案しています。
- 追加の国債発行で財政支出を拡大
張氏は、年間の予算目標に見合う財政支出を確保するため、2.3兆元(約3,200億ドル)規模の政府債務を追加発行することを提案しています。これにより、景気を下支えするために必要な財政の厚みを維持できるとみています。 - 都市更新プロジェクトへの公共投資を強化
製造業分野の設備投資が減速しつつあるなかで、都市の老朽インフラ更新や住宅・公共施設のリノベーションを新たな成長エンジンと位置づけています。都市更新への投資は、建設関連の雇用を生み出すだけでなく、長期的な生活環境の改善にもつながるとされています。 - 政策金利の一段の引き下げで借入コストを低減
民間部門の資金需要を高めるには、実質金利のさらなる低下が必要だと指摘します。政策金利を引き下げることで、企業や家計の借入コストを抑え、投資や消費を後押しする狙いです。 - 不動産市場を支える二本立てのアプローチ
不動産市場については、需要と供給の両面からの対応を提案しています。需要側では、住宅購入規制の緩和などを通じて、自ら住むための住宅需要を喚起すること。供給側では、開発企業の債務再編を加速させ、健全な事業者による住宅供給が続く環境を整えることが柱とされています。
輸出の不確実性と内需強化という二つの課題
報告書は、米国の関税政策を巡る不確実性が今後の輸出の重しとなる可能性を指摘しています。その一方で、財政負担や債務残高への懸念から、大規模な支出拡大には慎重な見方もあります。
こうした環境の中で、中国にとっては、輸出に依存しすぎず、国内の消費と投資をいかに安定的に伸ばしていくかが重要なテーマになっています。今回示された4つの提言は、そのために財政と金融政策をどのように組み合わせるかをめぐる具体的な選択肢の一つといえます。
日本やアジアの読者が注目すべきポイント
中国経済の動きは、アジアや世界の成長見通し、日本企業の輸出や投資計画にも大きく影響します。今回の議論を踏まえ、日本やアジアの投資家・企業が注目しておきたいポイントは次の通りです。
- 追加の国債発行や地方政府を含むインフラ投資が、実際にどの程度拡大するか
- 「トレードイン」などの消費支援策が、モノの購入だけでなくサービスやデジタル関連需要にも波及するか
- 不動産市場の安定化が、金融システム全体のリスク低減につながるか
2025年後半の政策運営は、輸出を巡る外部環境の不確実性と、財政・金融のバランスをどう取るかという繊細な舵取りが求められています。CF40の報告書と張斌氏の提言は、そのなかで財政の役割をどこまで高めるべきかについての一つの具体的なシナリオを示しているといえます。
Reference(s):
Experts call for stronger fiscal stimulus to sustain China's growth
cgtn.com








