APEC 2025閉幕:アジア太平洋の包摂的成長と協力の行方 video poster
2025年のAPEC会合が閉幕し、アジア太平洋の包摂的成長と地域協力の行方に注目が集まっています。CGTNのニュース番組で、Guan Xin氏が司会を務め、ワーウィック・パウエル氏(クイーンズランド工科大学客員教授)、エイナー・タンゲン氏(Center for International Governance Innovationシニアフェロー)、ブン・ナガラ氏(BRI Caucus for Asia-Pacificディレクター兼シニアフェロー)が議論を交わしました。
番組では、今回のAPECで得られた主な経済的成果を振り返りつつ、アジア太平洋地域がいかにレジリエント(しなやかで強い)で協力的な未来を築けるのかが落ち着いたトーンで掘り下げられました。本稿では、その議論のポイントを日本語で整理し、日本やアジアの読者にとっての意味を考えます。
APEC 2025会合閉幕、見えてきた焦点
今回のAPEC会合では、成長の果実を社会全体に広く行き渡らせる包摂的成長と、危機に強い地域経済づくりが大きなテーマとなりました。Guan Xin氏が進行を務めた討論では、参加した3人の専門家が、それぞれの立場からその重要性を語りました。
番組の議論から浮かび上がったキーワードは、次の三つです。
- 包摂的成長(インクルーシブ・グロース)
- レジリエンス(危機に強い経済と社会)
- 協力と連結性(つながるアジア太平洋)
これらは、アジア太平洋の国と地域が共有する長期的な課題でもあり、日本を含む参加エコノミーにとっても他人事ではありません。
CGTN討論:3人の専門家が語ったポイント
ワーウィック・パウエル氏:連結性とデジタル経済
パウエル氏は、アジア太平洋の成長を持続させるには、物理的なインフラだけでなくデジタルなつながりを強化することが欠かせないと強調しました。サプライチェーンをデジタル化し、中小企業でも国境を越えて取引できる環境を整えることが、包摂的成長の土台になるという視点です。
また、データやデジタルサービスのルールづくりにおいて、APECが対立ではなく協調の場となることの重要性も指摘されました。共通のルールやガイドラインを通じて、企業が安心して投資やイノベーションに踏み出せる環境づくりが求められています。
エイナー・タンゲン氏:ガバナンスと不確実性への備え
タンゲン氏が焦点を当てたのは、世界経済の不確実性が高まるなかでのガバナンスです。金融市場の変動、地政学的な緊張、気候変動など、アジア太平洋を取り巻くリスクは多層的になっています。
同氏は、単に貿易や投資の自由化を進めるだけでなく、危機が起きたときに情報を迅速に共有し、協調して対応できる枠組みが重要だと指摘しました。食料やエネルギー、医療物資などの供給が不安定になった場合に備え、地域として早期警戒や共同備蓄の仕組みを整えることがレジリエンス強化に直結するとしています。
ブン・ナガラ氏:地域協力と格差是正
ナガラ氏は、アジア太平洋の中で経済発展の度合いが大きく異なる現実に目を向けました。成長のスピードが速いエコノミーがある一方で、インフラや人材の面で出発点が異なる国と地域も少なくありません。
同氏は、貿易や投資の枠組みを活用しながら、インフラ整備や教育・職業訓練への支援を通じて、取り残されがちな地域を引き上げる必要性を強調しました。そのうえで、競争と同時に協調も選び取ることができれば、アジア太平洋全体の市場がより大きく、より魅力的になるという長期的な視点が示されました。
包摂的成長に向けた3つのカギ
討論で繰り返し語られたのは、包摂的成長を実現するためには複数の政策を組み合わせて進める必要があるという点です。番組の議論を整理すると、次の3点が柱として浮かび上がります。
- 中小企業・スタートアップの支援
資金アクセスやデジタルツールの導入支援などを通じて、小さな企業でもアジア太平洋の広い市場に参加できるようにすること。 - 人への投資
教育や職業訓練、リスキリング(学び直し)を通じて、人々が新しい産業やデジタル経済に参加できるようにすること。 - 社会的なセーフティネット
景気の変動や産業構造の変化のなかでも、人々の生活が急激に不安定にならないよう、保険制度や支援策を整えること。
これらは、いずれも「成長の数字」だけでは測れない部分です。逆に言えば、この3つをどう組み合わせて進めるかが、アジア太平洋各地の社会安定と長期的な繁栄を左右するといえます。
レジリエントで協力的なアジア太平洋へ
番組では、レジリエンスという言葉も繰り返し取り上げられました。自然災害、感染症の拡大、地政学的な緊張など、不測の事態が起きたときにどれだけ柔軟に対応できるかは、経済だけでなく人々の安心感にも直結します。
サプライチェーンの多様化や、重要物資の備蓄、デジタルインフラの強靱化など、レジリエンスを高めるための具体的な方向性が示されました。同時に、それぞれの国と地域が単独で備えるのではなく、情報共有や共同訓練などを通じて連携していくことの重要性も強調されています。
こうした取り組みは、どこか遠い世界の話ではなく、私たちの日常生活にも影響します。物流が止まれば、店頭の品揃えや価格に直結し、エネルギーの供給が不安定になれば、家庭や企業の負担は一気に膨らみます。レジリエントなアジア太平洋をつくることは、結果として生活の安定につながるという視点が共有されました。
日本とアジアの読者への示唆
今回のAPEC会合とCGTNの討論は、日本を含むアジア太平洋の人々に、いくつかの問いを投げかけています。
- 自分の働き方やビジネスは、アジア太平洋のどの国と地域とつながっているのか。
- デジタル化やグリーン転換の流れのなかで、どんな機会とリスクが生まれているのか。
- 成長の陰で取り残されがちな人や地域を、どうすれば包み込めるのか。
国際ニュースは、ときに遠く感じられます。しかし、アジア太平洋の包摂的成長やレジリエンスの議論は、働き方、物価、キャリア、暮らしの安心といった、ごく身近なテーマと直結しています。
2025年のAPEC会合が示した方向性は、すぐに劇的な変化として現れるわけではありません。それでも、今日の小さな合意と対話の積み重ねが、10年後、20年後のアジア太平洋の姿を形づくっていきます。今回の専門家討論をきっかけに、私たち一人ひとりが、自分の足元からどんな選択ができるのかを考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
APEC insights — Fostering inclusive growth in the Asia-Pacific
cgtn.com








