エジプトのエル=エナニ氏がUNESCO事務局長候補に アラブ世界初のトップへ
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の次期事務局長候補に、エジプトのカーレド・アフメド・エル=エナニ・アリ・エッズ元観光・古代遺産相が、唯一の候補として指名されました。承認されれば、アラブ世界から初めて、アフリカとしても2人目のトップ誕生となり、国際機関の多様性という観点から注目を集めています。
パリでの執行理事会、55対2で圧倒的支持
この指名は、パリで開かれた第222回ユネスコ執行理事会(月曜日開催)で行われました。投票の結果、エル=エナニ氏が55票を獲得し、コンゴ共和国のフィルマン・エドゥアール・マトコ氏は2票にとどまりました。
有効票の過半数を確保したことで、エル=エナニ氏はユネスコ事務局長ポストの選挙に勝利し、唯一の正式候補として指名されています。
次は総会での承認プロセスへ
国連教育科学文化機関によりますと、この指名は、今年11月6日にウズベキスタンのサマルカンドで予定されていたユネスコ総会での承認に付されることになっていました。総会は全加盟国が参加する場であり、執行理事会の選出結果を最終的に追認する役割を担います。
事務局長の任命は形式的には総会の決定ですが、今回のように執行理事会で圧倒的多数の支持を得た候補が一本化されるケースでは、そのまま承認されるのが一般的です。
ユネスコ事務局長の役割とは
ユネスコ事務局長は、教育、科学、文化、コミュニケーションなどの分野で各国と連携し、世界遺産や無形文化遺産の保護、教育機会の拡大、科学協力の促進といった幅広い課題に取り組む組織を統括します。
主な役割としては、
- 中長期的な戦略や優先分野の方向性を示す
- 予算や人事など、事務局運営の最終責任を負う
- 各国政府や国際機関、市民社会との対話をリードする
といった点が挙げられます。ユネスコ創設から約80年の歴史の中で、事務局長の出身地域は長く偏りがちだったため、今回の人選は「誰がなるか」だけでなく「どこから選ばれるか」という意味でも注目されています。
アラブ世界初・アフリカ2人目の意味
エル=エナニ氏が正式に就任すれば、ユネスコ事務局長としてはアラブ世界から初、アフリカ出身としても2人目となります。教育や文化を扱う国際機関のトップに新たな地域からリーダーが立つことは、
- 世界遺産の多くを抱えるアフリカ・中東地域の声がより届きやすくなる
- 文化財保護や観光振興をめぐる議論で、多様な視点が反映されやすくなる
- グローバル・サウスの存在感を高める象徴的な動きとなる
といった点で意味を持ちます。特に紛争や気候変動の影響で脅かされている文化遺産が多い地域にとって、自らの歴史や文化を理解する人物がトップに立つことへの期待は大きいといえます。
考古学者としての専門性と30年超のキャリア
1971年生まれのエル=エナニ氏は、エジプトのヘルワン大学でエジプト学(エジプトの歴史や考古学を研究する学問)の教授を務めており、30年以上にわたり教員として大学に所属してきました。加えて、エジプトの観光・古代遺産相としての経験も持ち、学術と行政の両面を知る人物です。
古代エジプト文明の研究者として、遺跡や文化財の保護・活用に長く携わってきた経歴は、世界遺産や文化多様性を扱うユネスコの性格と重なります。今後、仮に事務局長に就任した場合、
- 観光と文化財保護を両立させる政策
- 途上国の博物館・教育機関の支援
- 若い研究者や専門家のネットワークづくり
といったテーマで、具体的な構想が打ち出されるかどうかが一つの見どころとなりそうです。
日本やアジアにとっての関心ポイント
日本を含むアジアの国々にとっても、ユネスコ事務局長人事は無関係ではありません。世界遺産登録や無形文化遺産の保護はもちろん、学校教育やデジタル技術を活用した学び、科学技術協力など、ユネスコが関わる分野は広がり続けています。
エジプト出身の新たなリーダーが誕生すれば、アフリカ・中東とアジアの連携強化や、グローバルな南北格差の是正に向けた議論が進む可能性もあります。日本としても、教育や文化、科学技術の分野でどのように貢献し、連携を深めていくかが問われていきそうです。
ユネスコ総会での正式な承認の行方とともに、エル=エナニ氏がどのようなビジョンを示し、国際社会がそれをどう受け止めるのか。今後の動きを追うことで、国際機関のガバナンスや、世界の文化・教育政策の方向性を読み解く手がかりになります。
Reference(s):
Egypt's Khaled El-Enany nominated as sole UNESCO chief candidate
cgtn.com








