白(ペー)族の木版画「甲馬」:祈りの神々が“バズる版画”に変わるまで
中国本土・雲南省大理で、白(ペー)族の千年規模の木版画「甲馬(ジャーマ)」が、祈りの道具から“自分で刷って楽しむ”体験へと姿を変え、現代的な図柄とともに再び注目を集めています。
甲馬(ジャーマ)とは:木に刻み、紙に刷る「祈りの印刷物」
甲馬は、中国本土の南西部に暮らす白(ペー)族に伝わる木版画の伝統です。木に図柄を彫り、紙に刷って用いるのが基本で、かつては儀礼の場で、守護や幸運を願うために使われてきました。
刷られるモチーフは、神々や動物、縁起のよいシンボルなど。素朴に見える線や形の中に、世代を超えて引き継がれてきた「こうあってほしい」という願いが織り込まれているのが特徴です。
伝統が止まらない理由:図柄が“いまの暮らし”に寄り添い始めた
近ごろの甲馬は、伝統的な山の神のような古典的モチーフだけでなく、遊び心のある現代的なデザインによって再解釈されています。たとえば「試験合格の神さま」といった、新しく想像された存在が登場し、日々の不安や目標と自然に接続されている点が目を引きます。
祈りの対象が固定されたものではなく、暮らしの変化に合わせて“増えたり、言い換えられたり”する。その柔らかさが、古い技法を古いままにしない推進力になっているようです。
大理の街角で広がる「手刷り」:見る文化から、触れる文化へ
大理の街では、甲馬を手で刷る体験が、文化に触れる方法のひとつとして定着しつつあります。木版を置き、紙に刷り上げる工程はシンプルですが、インクののり方や圧のかけ方で表情が変わり、同じ版でも一枚ごとに違いが生まれます。
- 木に彫られた線の強弱が、刷り上がりの「気配」を左右する
- 縁起物の図柄が、個人の目標(学業・仕事など)とつながりやすい
- 完成品が“紙のかたちの記憶”として手元に残る
「古いから尊い」だけではない:バイラル化する工芸の条件
甲馬の再注目は、伝統文化が現代で生き延びるときに起きる変化を静かに映します。神々や吉祥の記号という分かりやすいアイコン性、木版画ならではの“くっきり刷れる”視覚的な強さ、そして新しい神さまを生み出せる拡張性。こうした要素が重なり、SNS時代の「共有したくなる絵柄」とも相性が良いと見られます。
一方で、甲馬が元来もっていた祈りや共同体の感覚が、デザインの更新によってどこまで保たれ、どこから変わっていくのか。伝統が“体験”として広がるほど、その輪郭はより問い直されていきそうです。
(用語メモ)木版画:木の板に絵柄を彫り、インクをのせて紙などに刷る印刷技法。
Reference(s):
cgtn.com








