EU発サステナブル化粧品 植物由来の新成分をフィンランド機関が開発
フィンランドのVTT技術研究センターと欧州連合(EU)の研究パートナーは木曜日(現地時間)、炎症や肌の老化を抑える働きを持つ新たな植物由来成分を開発したと発表しました。環境に配慮したサステナブル化粧品を目指す取り組みとして、国際的に注目を集めそうです。
EUプロジェクト「InnCoCells」とは
今回の研究は、EU資金で実施された「InnCoCells」プロジェクトの一環として行われました。およそ4年半にわたり、11の欧州諸国から17のパートナー機関が参加し、植物由来の化粧品成分を体系的に調べる、大規模な試みだったとされています。
- 期間:4年半
- 参加機関:11か国から17パートナー
- 資金:EUの研究・イノベーション計画「ホライズン2020」からの支援
- 総予算:790万ユーロ(約920万ドル)
- 対象:100種類を超える植物抽出物
- 評価指標:炎症や老化など、肌に関わる20種類のバイオマーカー
研究チームは、100種類以上の植物抽出物について、炎症や肌の老化に関連する20の「バイオマーカー(生体の状態を示す分子の指標)」への影響を調べました。その結果、およそ25種類の抽出物が、化粧品用の有望な成分として選ばれ、さらに開発を進める候補になったとされています。
見つかったのはどんな植物成分か
InnCoCellsプロジェクトでは、特定の化学物質だけに注目するのではなく、植物から得られる抽出物全体としての働きを評価した点が特徴です。その中から、いくつかの植物が特に有望な成分として浮かび上がりました。
Cochlearia danica:抗炎症・アンチエイジング・抗菌
まず注目されたのが、Cochlearia danica(Danish scurvygrass)由来の細胞培養と抽出物です。この抽出物は、
- 強い抗炎症作用
- 肌の老化を抑えるアンチエイジング作用
- 有害な微生物の増殖を抑える抗菌作用
といった複数の効果を示したとされています。炎症や老化、肌のバリア機能など、複数の課題に同時にアプローチできる可能性がある点がポイントです。
Capsicum chinense:刺激を抑えつつ有害菌だけを狙う
次に、Capsicum chinense(トロピカルペッパー)の細胞培養も有望な結果を示しました。研究によると、この培養物は有害な細菌に対して活性を持ちながら、皮膚への刺激や炎症を引き起こさないことが確認されたといいます。
殺菌効果のある成分は、しばしば肌への負担や刺激とトレードオフになりがちです。その中で、肌を傷つけずに有害菌だけを抑えられる可能性を示した点は、敏感肌向けの製品などにもつながりうる重要な特徴といえます。
バジルの毛状根:老化を抑え、うるおいも維持
また、バジル(Ocimum basilicum)の毛状根(hairy roots)から得られた抽出物も、興味深い結果を示しました。研究チームによると、この抽出物には、
- 肌の老化を抑える働き
- 肌の水分を保ち、うるおいを維持する可能性
があるとされています。アンチエイジングと保湿という、スキンケアで重視される二つのポイントを同時にカバーできるかどうか、今後の応用が注目されます。
従来研究との違い:単一成分から「抽出物の組み合わせ」へ
VTTによると、従来の化粧品成分の研究では、植物に含まれる特定の化合物「ひとつ」に焦点を当てることが多かったといいます。一方、InnCoCellsプロジェクトでは、植物抽出物全体の働きを体系的にスクリーニングするアプローチが採用されました。
この方法により、単一成分ではなく、複数の成分が組み合わさることで生まれる効果や、炎症・老化・保湿など、異なる肌機能への総合的な影響を見つけやすくなります。結果として、実際の使用シーンに近い形で「肌にとってどう役立つのか」を評価できる点が特徴です。
サステナブルな生産方法も重視
今回のプロジェクトは、成分の効果だけでなく、その生産方法のサステナビリティ(持続可能性)も重視しています。研究チームによると、有望な植物抽出物は、
- 温室で責任ある方法で栽培された植物
- バイオリアクター(培養装置)での細胞培養
- 農業の副産物(サイドストリーム)
といった原料から生産できるよう設計されています。これにより、自然環境への負荷を抑えつつ、安定した供給とスケールアップ(大規模生産)を両立しやすくなると期待されています。
「自然と科学が協力する」次世代コスメの姿
InnCoCellsプロジェクトのコーディネーターを務めるVTTのキルシ=マリヤ・オクスマン=カルデンテイ氏は、今回の成果について、自然と科学が協力することで次世代の化粧品成分を生み出せることを示すものだと強調しています。
同氏は、こうした植物由来成分の開発が、肌への明確なメリットと、責任あるスケーラブルな(拡大可能な)生産体制を両立させる「成分のパイプライン」づくりにつながり、欧州のバイオ経済(バイオ資源を活用する経済)の目標にも合致すると述べています。
商業化と今後の展望
VTTによると、今回の研究結果はすでに商業化に向けた動きにつながり始めており、プロジェクトのパートナー企業や機関は、新成分を活用するビジネスモデルや協業の可能性を検討しているといいます。
今後、
- どの植物由来成分が実際の製品として市場に登場するのか
- どこまで環境負荷の低減やトレーサビリティ(生産履歴の透明性)を示せるのか
- 消費者が「効果」と「サステナビリティ」の両方をどのように評価していくのか
といった点が焦点になっていきそうです。
今回のEU発の動きは、化粧品を「肌によいもの」から「肌にも環境にも配慮したもの」へと進化させていく一つの方向性を具体的に示した事例といえます。植物由来でありながら科学的なエビデンスに裏打ちされた成分がどこまで普及していくのか、今後の展開が注目されます。
Reference(s):
Researchers find new plant-based ingredients for sustainable cosmetics
cgtn.com