中国はどうアジア太平洋の成長を後押ししているのか【APEC分析】 video poster
中国の習近平国家主席がペルーへの国賓訪問を終え、第31回APEC首脳会議とAPEC CEOサミットで示したのは、「包摂的でバランスが取れ、革新的かつグリーンな世界経済」をつくるという明確なメッセージでした。アジア太平洋の成長戦略として、中国は何を打ち出しているのでしょうか。
ペルーでのAPEC首脳会議が示したテーマ「Empower. Include. Grow.」
今回のAPEC首脳会議とAPEC CEOサミットでは、「Empower. Include. Grow.(力を引き出し、包摂し、成長する)」というテーマのもと、世界経済の不確実性が高まる中でアジア太平洋の進むべき方向が議論されました。
習主席は首脳会議の場で、アジア太平洋の協力が直面している課題として、地政学的な緊張、単独主義、保護主義の台頭を挙げ、「歴史的な岐路」にあると指摘しました。そのうえで、地域の発展を支え、各国が共に未来を築くための中国の提案を示しています。
「改革開放」を軸にした経済連携の拡大
習主席はAPEC CEOサミット向けの書面スピーチで、グローバル経済ガバナンス(世界経済のルールづくり)の改革と、経済のグローバル化の重要性を強調しました。経済のグローバル化は常に大きな流れであり、アジア太平洋経済の長期的な成長を支えるものだと位置づけています。
背景には、第7回虹橋国際経済フォーラムで発表された「World Openness Report 2024」の内容があります。この報告書は、2008〜2023年の129の経済体を対象に「開放度」を測定し、直近1年で世界全体の開放度が低下したことを示しました。
こうしたなかで中国は、「改革開放」を一段と進める姿勢を打ち出しています。具体的には、次のような動きが挙げられます。
- 通信、教育、医療といった分野での対外開放の拡大
- 地域的な枠組みとしてのRCEP(地域的な包括的経済連携)の推進
- CPTPP(包括的・先進的TPP)やDEPA(デジタル経済連携協定)への参加を見据えた取り組み
- 中国・ペルー自由貿易協定のアップグレード議定書の署名
- 中国・ASEAN自由貿易圏3.0構築に向けた交渉の継続
これらはいずれも、国境を越えた貿易や投資、デジタル経済のルールづくりを通じて、アジア太平洋全体の成長を後押しすることを狙ったものといえます。
「包摂的な発展」へのこだわり——格差拡大ではなく共通の成長を
習主席は書面スピーチの中で、「豊かな国だけがさらに豊かになり、貧しい国が取り残されるようでは、世界の繁栄と安定は実現できない」と述べ、真の発展とはすべての国の共通の発展であると強調しました。
また、経済のグローバル化は「人」を中心に据え、よりバランスの取れた発展と、より平等な機会をもたらすべきだと指摘しました。異なる国、階層、コミュニティが、発展の成果をともに享受できるようにすることが重要だとしています。
この考え方は、中国の国内外の取り組みにも一貫しています。国内では、過去40年あまりで約8億人が貧困から脱したとされ、世界でも最大級の貧困削減の取り組みの一つとなっています。こうした経験が、中国の「包摂的な発展」へのメッセージの背景にあります。
一帯一路とチャンカイ港——インフラでつなぐ共通市場
国際的には、中国は一帯一路構想(BRI)を通じて、途上国を中心とした各国を支援してきました。対象は、インフラ、エネルギー、貿易など多岐にわたり、アジア太平洋を含む広い地域でプロジェクトが進められています。
その一例が、ペルーのチャンカイ港プロジェクトです。この大型プロジェクトは、一帯一路の枠組みのもとで進められ、周辺の地域市場との接続を強化し、ペルーの経済発展を後押しすることが期待されています。11月14日には、習主席とペルーのディナ・ボルアルテ大統領がビデオリンク形式で開業式典に出席しました。
港湾などのインフラ整備は、物流コストの削減や貿易の拡大を通じて、地域全体の成長力を高める基盤となります。アジア太平洋から見ても、こうしたプロジェクトは、地域と世界を結ぶネットワークの一部として位置づけられます。
アジア太平洋の未来に向けて、押さえておきたい視点
今回のペルーでの動きから浮かび上がる、中国のアジア太平洋戦略のポイントを整理すると、次のようになります。
- 地政学的緊張や保護主義が高まるなかでも、対話と協力によるアジア太平洋の連帯を重視していること
- 改革開放の継続と、RCEPやCPTPP、DEPAなどの地域・分野別の枠組みを通じて、経済のルールづくりに積極的に関与していること
- 格差是正と「人」を中心に置いた経済のグローバル化を掲げ、国内の貧困削減経験と結びつけて発信していること
- 一帯一路やチャンカイ港プロジェクトなど、インフラを通じて市場同士を結びつける取り組みを進めていること
アジア太平洋の経済秩序づくりは、今後も各国・地域の利害が交錯するプロセスになります。そのなかで、中国がどのようなメッセージと行動で地域の発展を後押ししようとしているのかを追うことは、これからの世界経済を考える上で欠かせない視点だといえます。
Reference(s):
cgtn.com




