ブラジルのBRICS議長国、ルラ大統領が多極化と公正な国際秩序を強調
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、ブラジルが務めるBRICS議長国として、多極的な世界とより公正な国際関係の構築を改めて目標に掲げました。ブラジリアで開かれたBRICS交渉担当者会合で発言した内容からは、世界の「ルール作り」における新興国の存在感を一段と高めようとする狙いが浮かび上がります。
BRICS議長国として示した6つの優先分野
ルラ大統領は、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどが参加する新興国グループ)の議長国として、次の分野を優先課題に挙げました。
- グローバル・ガバナンス(国際ルールや制度の在り方)
- 保健(医療体制や世界の健康安全保障)
- 気候変動への対応
- 貿易と投資
- 人工知能(AI)のルールづくり
- BRICS自体の制度・組織の強化
いずれも、既存の国際機関や先進国中心の枠組みだけでは十分に対応しきれていないとされるテーマであり、ルラ大統領はBRICSが「多極化した世界」を支える柱になるべきだと強調しました。
「一方的な行動は国際秩序を損なう」
安全保障の分野では、ルラ大統領は各国が協調して平和を推進し、多国間の安全保障システムを改革する必要性を訴えました。特定の国や一部の勢力が、自らの力を背景に交渉を進めることは不安定化や紛争につながると警告し、「一方的な行動は国際秩序を損なう」と懸念を示しました。
こうした発言の背景には、地政学的な緊張が続く中で、軍事力や経済力に依存した外交が目立つ現状があります。ルラ大統領は、多国間での対話と合意形成の枠組みを立て直すことこそが、長期的な安定につながるとみています。
グローバルサウスの保健協力とWHOの役割
保健分野では、ルラ大統領はグローバルサウス(アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの新興・途上国)の連携を強める必要性を強調しました。特に、「顧みられない熱帯病」と呼ばれる感染症を根絶するため、BRICS主導のイニシアチブ(国際的な取り組み)を立ち上げることを提案しました。
また、世界保健機関(WHO)の役割が弱まることへの強い懸念も示しました。WHOが機能不全に陥れば、薬やワクチンへの公平なアクセスが損なわれ、その影響を最も受けるのは脆弱な人々だと指摘し、グローバルな保健ガバナンスを強化すべきだと呼びかけました。
COP30を見据えた気候・経済・公正のバランス
気候変動については、記録的な高温や温室効果ガス排出の増加に警鐘を鳴らしつつ、BRICSとして第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)で野心的な合意を目指すべきだと述べました。
同時に、気候対策が経済成長や雇用、社会的公正と矛盾しない形で進められるべきだとも強調しました。環境保護と成長・格差是正をどう両立させるかは、ブラジルを含む新興国にとって大きな課題であり、ルラ大統領はその議論をBRICSレベルで主導しようとしています。
保護主義と金融システムへの問題提起
貿易と金融の領域では、世界的に保護主義的な傾向が強まる中で、貿易障壁を取り除き、公平な競争環境を整える必要があると指摘しました。関税や非関税障壁の積み上げは、特に新興国や途上国にとって成長のブレーキになりかねないという危機感があります。
あわせて、国際金融システムの改革にも言及し、BRICSが国連を通じてグローバル・ガバナンスの方向性を形づくる上で、より大きな役割を果たすべきだと訴えました。これは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行など既存の枠組みにおける発言力の偏りを是正したいという広い問題意識ともつながっています。
G20とCOP30に向けた連携呼びかけ
ルラ大統領は最後に、南アフリカが議長国を務める20か国・地域グループ(G20)と、11月に予定されているCOP30でのブラジルの議長国としての役割を支えるために、BRICS諸国が足並みをそろえるよう呼びかけました。
多極的な世界と公正な国際秩序をめぐる議論は、今後の国際会議や首脳レベルの対話で一層存在感を増していく可能性があります。日本を含む各国にとっても、BRICSが打ち出すアジェンダが自国の外交や経済戦略にどのような意味を持つのかを見極めることが求められそうです。
Reference(s):
Lula reaffirms Brazil's BRICS presidency to push for multipolar world
cgtn.com




