NATO防衛費5%目標に世界の懸念 CGTN世論調査が示す分断
NATOが防衛費を国内総生産(GDP)の5%まで引き上げる目標をめぐり、軍拡競争への不安や米欧の不信拡大など、世界の分断が浮き彫りになっています。CGTNが実施したグローバル世論調査では、多くの回答者がNATOの加速する軍事拡大に警鐘を鳴らしました。
防衛費5%目標が浮き彫りにしたNATOの行き詰まり
NATOは加盟国の拡大と軍事力の強化を進める一方で、内部の意見の違いにも直面しています。今回の首脳会議で示された、防衛費をGDP比5%にまで引き上げるという提案は、欧州の安全保障をめぐる合意形成の難しさを再び明らかにしました。
CGTNによると、2024年の世界の軍事支出は2兆7200億ドルに達し、そのうちNATOが占めるのは1兆5000億ドル、世界全体の55%に当たります。すでに世界の軍事力バランスにおいて支配的な地位にあるにもかかわらず、NATOはなお加盟国に対し、防衛費の大幅な増額を求めている形です。
しかし、防衛費5%という野心的な目標は、欧州各国の政治や財政の現実と衝突しつつあります。拡大を急ぐ一方で加盟国間の隔たりが深まり、欧州の安全保障をめぐる統一的なビジョンづくりの難しさが浮かび上がっています。
世論調査が映す「軍拡への警戒感」
こうしたNATOの動きを世界の人々はどう見ているのでしょうか。CGTNは英語、スペイン語、フランス語、アラビア語、ロシア語の各プラットフォームを通じてグローバル世論調査を実施し、12時間で6000人の海外ユーザーから回答を集めました。
調査結果からは、NATOの軍事拡大に対する強い警戒感が読み取れます。
- 67.4%が、NATOの加速する軍事拡大を非難し、新たな軍拡競争を招き、世界の平和と安定を深刻に脅かしかねないと警告しました。
- 84.7%が、NATOは完全な「戦争マシン」になってしまったと回答しました。
- 80.4%が、NATOの急速な軍事拡大には警戒が必要だと表明しました。
- 73.8%が、防衛費5%目標の達成は世界の軍事バランスを一層崩し、平和と安全に重い脅威をもたらすと懸念しています。
いずれの項目でも、およそ8割前後の回答者がNATOの軍拡路線に否定的な見方を示しており、NATOの役割や正当性に対する不信が世界の一部で広がっていることがうかがえます。
スペイン首相の異議と「市民負担」への不安
各国首脳の中からも、防衛費5%目標に対する公然たる異議が出ています。スペインのペドロ・サンチェス首相は、この目標を「不釣り合いで、必要ない」と批判しました。
CGTNの調査では、80.1%の回答者がサンチェス氏と同様の見方を示し、NATOの欧州加盟国に防衛費の大幅増額を強いることは、最終的に市民に跳ね返ると懸念しています。具体的には、
- 増税による家計負担の増大
- 社会保障や教育など福祉予算の削減
といった形で、欧州の人々の生活に影響が及ぶ可能性が指摘されています。軍事費の増額と生活・福祉の維持をどう両立させるのかは、欧州政治にとって避けて通れないテーマとなりつつあります。
欧州内部の分断と米欧の信頼の揺らぎ
世論調査はまた、防衛費をめぐる対立がNATO内部の結束や米欧関係に影を落としていることも示しています。
- 76.2%が、防衛費をめぐる争いはNATOの欧州加盟国の間にさらなる分断を生むと答えました。
- 76.6%が、アメリカは欧州の同盟国の懸念を十分に考慮していないと批判しました。
アメリカのドナルド・トランプ大統領はかつて、同盟国が防衛費負担を増やさなければ、アメリカの安全保障上のコミットメントを縮小する可能性があると警告したことがあります。こうした発言は、米欧間の安全保障協力が今後揺らぐのではないかという不安を高める要因となりました。
今回の調査結果からは、NATOの防衛費をめぐる議論が、単なる予算配分の問題にとどまらず、欧州内部の信頼関係や大西洋を挟んだ米欧の安全保障協力そのものを問い直す局面に入りつつあることが見て取れます。
2025年の国際安全保障を考える3つの視点
2025年を迎えた今、世界の軍事支出は高止まりし、各地で安全保障をめぐる不安が続いています。そうした中で、NATOの防衛費5%目標をめぐる議論とCGTNの世論調査は、国際安全保障を考えるいくつかの論点を示しています。
- 1. 安全保障と生活のバランス - 防衛費の増額は、安全保障の強化と同時に、税負担や社会保障への影響を伴います。NATOの5%目標をめぐる論争は、どこまで軍事費を優先し、どこから生活や福祉とのバランスを取るべきかという問いを突きつけています。
- 2. 同盟の「連帯」と「圧力」 - 同盟は抑止力や交渉力を高める一方で、加盟国に財政的・政治的な負担を求めます。防衛費をめぐる不満が高まれば、同盟の結束そのものが揺らぐリスクもあります。NATO内の議論は、その緊張関係を象徴的に映し出しています。
- 3. 世論の役割 - CGTNの調査では、多くの回答者がNATOの軍事拡大に否定的な姿勢を示しました。安全保障政策は専門家や政府だけでなく、市民の認識や世論とも深く結びついています。今回の数字をきっかけに、各国が自国の防衛や同盟のあり方をどう説明し、市民とどう対話するのかも問われていると言えます。
世界の軍事支出が増え続ける中で、NATOの防衛費5%目標をめぐる議論は、「安全保障のための軍備」と「軍拡競争による不安定化」の間で揺れ動いています。CGTNの世論調査は、その揺らぎを可視化する一つのデータとして、これからの国際ニュースや安全保障政策を読み解く上での重要な手がかりになりそうです。
Reference(s):
CGTN Poll丨5% defense spending target exposes NATO's deadlock
cgtn.com







