米世論調査:3人に2人が「政治的な激しい言葉が暴力を助長」と回答
アメリカ政治に関する新たな世論調査で、約3人に2人の有権者が「政治をめぐる激しい言葉づかいが暴力を助長している」と感じていることが分かりました。7割超が「アメリカ社会は壊れている」と答えるなど、分断と政治暴力への不安が色濃く表れています。
何が分かったのか:世論調査のポイント
今回報じられたロイター/イプソスの世論調査は、保守系政治活動家チャーリー・カーク氏が殺害された事件の直後にオンラインで実施され、全米の成人1,037人が回答しました。誤差は約プラスマイナス3ポイントとされています。
- 約3分の2が、政治について話すときの激しい言葉づかいが暴力を「大きく」または「ある程度」後押ししていると回答
- 79%が「この20年で、人々は自分と異なる意見に対して寛容でなくなった」と感じている
- 71%が「アメリカ社会は壊れている」という表現に同意
- 66%が「自分の住む地域で、政治的信条を理由とする暴力が起きること」に不安を感じている
数字だけを見ると、イデオロギーの右・左にかかわらず、多くのアメリカ人が分断の深まりと政治暴力のリスクを現実的な脅威として受け止めていることが分かります。
「言葉」がどこまで暴力をあおるのか
調査では、63%が「アメリカ人が政治問題について話す言葉づかいが、暴力を『大きく』後押ししている」と回答し、31%が「少しは後押ししている」と答えました。ほとんどの人が、政治的レトリックと言われる激しい言葉と、現実の暴力の間に何らかの関係があると見ていることになります。
アメリカ政治では近年、相手を「敵」と位置づけるような表現や、人格を攻撃するメッセージが日常化しています。共和党のドナルド・トランプ大統領は、昨年2024年に2度の暗殺未遂の標的になった当事者でもありますが、今回の事件をめぐっても政治的ライバルを強い表現で批判し、「急進的な左のならず者がいる。やつらを徹底的にやっつけなければならない」と語ったとされています。
こうした発言は支持者を鼓舞する一方で、政治的対立を「戦い」や「敵対」として捉える空気を強め、世論調査が示すような不安につながっていると見る専門家もいます。調査結果は、政治家だけでなくメディアやSNS利用者を含め、言葉の扱い方そのものが問われていることを示していると言えます。
相次ぐ政治関連の暴力事件
世論の不安は、実際の事件の増加とも結びついています。メリーランド大学で政治的暴力を長年分析してきた研究者マイク・ジェンセン氏によると、2025年の前半6か月でアメリカ国内では約150件の「政治的動機に基づく攻撃」が確認され、これは2024年の同時期と比べてほぼ2倍にあたるといいます。
最近の象徴的な事件としては、以下のようなものが挙げられます。
- 保守系活動家チャーリー・カーク氏の銃撃:トランプ大統領を支持する若年層を組織してきた団体「ターニング・ポイントUSA」を率い、2024年大統領選でも若い有権者の動員に貢献したとされるカーク氏が、ユタ州の大学キャンパスで講演中に首を撃たれ、死亡しました。
- ミネソタ州の民主党系州議会議員とその夫の殺害:今年6月には、民主党所属のミネソタ州議員とその夫が殺害される事件も起きています。
政治的立場の右・左を問わず、政治に関わる人物が暴力の対象になっていることが、社会全体の緊張感をさらに高めています。
「壊れている社会」という感覚の広がり
今回の世論調査では、71%が「アメリカ社会は壊れている」という表現に同意しました。具体的に「何が壊れているのか」は人によって違いますが、背景にはいくつかの共通した要素があると考えられます。
- 寛容さの低下:79%が「この20年で他者の意見に対する寛容さが失われた」と回答。異なる意見に触れる機会が減り、「同じ考えの人だけとつながる」傾向が指摘されています。
- SNSと分断:短く刺激的なメッセージが拡散されやすいSNSでは、冷静な議論よりも、怒りや恐怖をかき立てる表現が注目を集めやすく、分断を深める一因となっています。
- 政治への不信:政策の中身よりも対立構図ばかりが可視化されることで、「誰も自分たちの声を代弁してくれない」という感覚が強まりやすくなっています。
こうした要素が重なり合う中で、政治的な暴力が増加し、それに対する不安がさらに社会の不信を深めるという、負の循環が生じていると見ることもできます。
日本の読者にとっての意味:アメリカ政治から何を学ぶか
アメリカの政治状況や社会の分断は、国際ニュースとして日本からも注目されています。世界経済や安全保障に大きな影響力を持つ国で政治暴力が増えれば、その波紋は他国にも及びかねません。
一方で、このニュースは「遠い国の話」ではなく、日本社会がこれから向き合うかもしれない課題を映す鏡として読むこともできます。
- ネットやSNSで、政治的に対立する相手をどのような言葉で語っているか
- 異なる考えの人の投稿を、どれだけ意識的に読み、対話しようとしているか
- 政治家やメディアの言葉に、私たち自身がどのような反応をしているか
アメリカ政治の現状は、「言葉の使い方」と「民主主義の健全さ」の関係を改めて考えさせます。政治的な立場の違いを前提としつつも、相手の人間性を否定しない表現をどう守るのか――それは日本を含む多くの国に共通する問いになりつつあります。
これから問われるもの:対立を超える言論の条件
今回の世論調査は、アメリカ社会が深刻な分断に直面している現実を映し出す一方で、「今のままではいけない」と考える人が多数派になっていることも示しました。
政治的な対立が避けられないものであるならば、焦点は次のような点に移っていきます。
- 政治リーダーが、どのような言葉で支持者と対立陣営に語りかけるのか
- メディアやSNSプラットフォームが、過度に過激な表現をどう扱うのか
- 市民一人ひとりが、異なる意見に向き合うとき、どのような態度を選ぶのか
アメリカの世論調査が示した数字は、単なる統計ではなく、「言葉」と「暴力」の関係をめぐる、私たち自身への問いかけでもあります。国際ニュースとしてのアメリカ政治をフォローしながら、日本社会にとっての示唆も静かに考えていきたいところです。
Reference(s):
Poll: 2 in 3 Americans say harsh political rhetoric fueling violence
cgtn.com








