香港の人材受け入れ制度、過去2年で本土人材の9割を承認 GEP・ASMTPの中身を読む
香港の人材受け入れ制度である一般就業政策(GEP)と本土人材・専門家入境計画(ASMTP)について、過去2年間の運用状況が公表され、本土からの人材を対象とするASMTPでは申請の約9割が承認されていることが分かりました。人材獲得競争が激しくなるなか、香港はどのような専門人材を受け入れているのでしょうか。
香港のGEPとASMTPとは
香港特別行政区政府の労工及福利局局長である孫玉菡(Chris Sun)氏は、水曜日付で立法会議員に提出した書面回答の中で、2つの主要な人材受け入れ制度の実績を示しました。
一般就業政策(General Employment Policy、GEP)は、主に海外に居住する中国国籍者などを対象とし、香港での就業を目的とした就労ビザ制度です。
本土人材・専門家入境計画(Admission Scheme for Mainland Talents and Professionals、ASMTP)は、その名称の通り、中国本土(中国)からの人材・専門家を対象とし、香港の発展ニーズに合致する人材を呼び込む仕組みです。
両制度はいずれも、雇用主が具体的なポジションに人材を採用することを前提とした雇用連動型の枠組みであり、香港の企業が空いたポストを素早く埋め、競争力を維持することを狙っています。
ASMTPは申請の約9割を承認
孫氏によると、過去2年間にASMTPのもとで受け付けた申請は合計5万3,000件余りでした。このうち承認されたのは約4万7,000件、不承認となったのは約600件で、承認率はおおむね9割に達します。
承認されたポジションの内訳を見ると、短期ポストが約46%、長期ポストが約54%と、公表されています。短期か長期かの区分は、契約期間が12カ月未満か、12カ月以上かによって分けられます。
長期ポストに就く人材の分野としては、商業・貿易分野が最も多く、次いで金融サービス分野、学術研究・教育分野の順となっています。香港経済の中核である商業・金融に加え、研究・教育分野も重要な受け皿となっていることがうかがえます。
GEPも高い承認率、短期契約が7割
一方、GEPでは過去2年間に6万7,000件以上の申請があり、そのうち約6万3,000件が承認、約1,000件が不承認となりました。こちらも高い承認率と言えます。
GEPの承認案件のうち、契約期間が12カ月未満の短期ポジションは全体の約70%を占め、12カ月以上の長期ポジションは約30%でした。企業がまず短期契約で人材を確保し、必要に応じて更新していく傾向があるとも読めます。
長期ポジションの分野では、観光関連産業への従事者が最も多く、次に学術研究・教育、金融サービスが続きます。観光やサービス産業の回復・拡大に向けた人材需要が、数字に反映されている形です。
給与レンジは月収2万〜8万香港ドルが中心
受け入れられた人材の報酬水準について、孫氏は、多くの人材の月収が2万〜3万9,999香港ドル(約2,578〜5,155米ドル)に集中していると説明しました。これに次いで多いのが、4万〜7万9,999香港ドルのレンジに属する人材です。
このことから、香港の人材受け入れ制度が、いわゆる超高額報酬のトップ層だけではなく、中堅〜上位クラスの専門職人材を幅広く取り込む役割を果たしていることが分かります。
香港がねらう人材戦略のポイント
香港特別行政区政府は、GEPとASMTPを人材政策の中核と位置づけています。公式の説明では、GEPは海外在住の中国国籍者などを、ASMTPは中国本土からの人材をそれぞれ対象とし、香港の発展ニーズを満たすことを目的としています。
今回示された数字から、次のような特徴が見えてきます。
- いずれの制度も承認率が高く、企業が必要とする人材を迅速に受け入れるスタンスが明確である
- GEPでは観光・サービス、ASMTPでは商業・貿易や金融サービスなど、制度ごとに主力分野が分かれている
- 短期契約のポジションが多い一方で、研究・教育や金融などでは長期ポストも一定の割合を占める
- 報酬水準は中堅〜上位の専門職層が中心で、実務現場を支える人材の厚みを増そうとする意図がうかがえる
香港にとって、人材政策は金融や貿易のハブとしての地位を維持・強化するうえで欠かせない柱です。中国本土と海外を結ぶ位置づけを生かしつつ、制度を通じて必要な専門人材を柔軟に呼び込む構図が浮かび上がります。
日本の読者にとっての示唆
日本でも高度人材の受け入れや、専門職の不足が課題として語られています。香港のGEPやASMTPのように、対象とする人材や産業分野を明確にし、企業ニーズに合わせてスピーディーに承認する仕組みは、今後の人材政策を考えるうえで一つの参考例になり得ます。
一方で、高い承認率の裏側には、雇用主による事前の選別や、賃金・職務内容の明確化といったプロセスも想定されます。数字だけでなく、どのような枠組みとガバナンスのもとで制度が運用されているのかを引き続き注視することが、国際ニュースを読み解くうえで重要になってきます。
Reference(s):
HK talent scheme approves 90% of mainland applicants in two years
cgtn.com








