BCI技術が変える障がい者の暮らし 中国発インテリジェント義手のいま
頭に装着した機器で義手を動かし、失った手で再び文字を書き、ピアノを弾く。中国で進む脳コンピューター・インターフェース(BCI)技術が、障がいのある人の暮らしを静かに変え始めています。
中国の全国助残日とテクノロジーの役割
今年5月18日、中国では第35回となる全国助残日が行われました。各地で、障がいのある人の模範や、彼らのエンパワーメントに大きく貢献してきた人々をたたえるイベントが開かれています。
同時に、脳とコンピューターをつなぐBCI技術を開発するテック企業が、新しい支援のかたちを模索しています。障がいのある人が、自分の願いや夢をかなえるための選択肢を広げようとする動きです。
右手を失った少年が取り戻した「書く」「弾く」時間
Zhou Jianさんは、12歳のときの事故で右手を失いました。それでも今、彼はインテリジェント義手を使って、再びペンを握り、ピアノを弾くことができるようになっています。
彼が使う義手は、BCI技術を活用したものです。中国東部・浙江省杭州市に拠点を置くBrainCoで働く彼は、この義手によって日常生活の多くの動作を取り戻しました。
脳の信号で動くインテリジェント義手
Zhouさんの義手には、義手を装着するソケット部分にセンサーが組み込まれています。これらのセンサーが脳の活動と結びついた信号を捉え、義手の動きに変換することで、彼は自分の意思で義手を操ることができます。
事故で手を失った人の中には、失ったはずの手がまだそこにあるように感じる「幻肢」があります。Zhouさんは、こうした幻肢感覚を訓練しながら技術を使いこなしていくことが大切だと考えています。
彼は、障がいのある人たちに対して「幻肢感覚をうまく生かし、技術の可能性を信じてみてほしい」と呼びかけています。
BCIユニコーン企業・BrainCoの挑戦
BrainCoは、BCI技術分野のユニコーン企業とされ、杭州に本社を構えています。創業者で最高経営責任者のHan Bicheng氏は、この10年ほど非侵襲型BCI機器の開発に取り組んできました。
2016年には、Consumer Electronics Showでインテリジェント義手の試作機を披露し、業界の注目を集めました。その後、開発を重ね、2020年には製品の量産を開始しています。
100万人と1000万人を支えるという目標
Han氏が掲げる目標は、非常に野心的です。今後5〜10年のうちに、まずは100万人の障がいのある人が日常生活の能力を取り戻すことを支援し、さらに自閉症やアルツハイマー病、不眠症などを抱える1000万人の人々を助けたいとしています。
もしこれが実現すれば、文字を書く、楽器を弾くといった動作だけでなく、生活のリズムや心身の状態を整える場面でも、BCI技術が大きな役割を果たす可能性があります。
技術だけではない「信頼」と「訓練」という要素
Zhouさんの物語から見えてくるのは、BCI技術そのものの進歩だけではありません。技術を使いこなすための訓練と、それを信じて一歩を踏み出す本人の意思、そして周囲の理解が重なって初めて、新しい可能性が開かれていくという現実です。
脳と機械をつなぐBCI技術は、まだ発展途上にありますが、すでに一人の人生を大きく変え始めています。これからの社会で、障がいのある人が自分らしく暮らし、学び、働くために、どのようにテクノロジーを生かしていくのか。ZhouさんとBrainCoの取り組みは、その問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
How will BCI technology change the lives of people with disabilities?
cgtn.com








