中国が新たな気候ロードマップ 2035年NDCでクリーンエネルギー加速
パリ協定発効から10年となった2025年、中国が国連の場で2035年までの新しい気候ロードマップを打ち出しました。国連気候サミット2025で公表された新たなNDC(国が決める温室効果ガス削減目標)は、クリーンエネルギーや産業構造、自然環境の保全までを含む包括的な内容です。
国連気候サミット2025で示された「より野心的な」目標
今年、ニューヨークで開かれた国連気候サミット2025の演壇から、中国は更新した気候目標を発表しました。エネルギー、産業、生態系、適応の4分野にまたがるこのパッケージは、専門家から「より野心的なパリ協定フレームワーク」「これまでの公約を明確に発展させた継続」と評価されています。
2025年はパリ協定採択から10年の節目であり、各国が自国の公約を見直す正式なタイミングでもあります。このタイミングで中国が新たなNDCを打ち出したことは、自らの長期的な脱炭素戦略を国際社会に改めて示す狙いがあると受け止められています。
2035年NDCの中身:7つの柱
今回示された2035年までのNDCは、具体的な数値と分野別の方向性がセットで示されている点が特徴です。主なポイントを整理すると、次の7つにまとめられます。
- 温室効果ガス排出量:2035年までに、経済全体のネット温室効果ガス排出量をピーク時から7〜10%削減する。
- エネルギーミックス:一次エネルギー消費に占める非化石エネルギー(再生可能エネルギーや原子力など)の比率を30%超に引き上げる。
- 再生可能エネルギー設備:風力・太陽光発電の合計設備容量を36億キロワットに拡大し、2020年時点の6倍以上とする。
- 森林吸収源:森林蓄積量を240億立方メートル超に増やし、自然による二酸化炭素吸収力を高める。
- 新エネルギー車:新車販売においてNEV(新エネルギー車)を「主流」とし、交通分野の電動化を加速する。
- 排出量取引:全国炭素排出権取引制度(National ETS)の対象を主要な高排出セクターに広げる。
- 気候適応:気候変動の影響に備えた「気候適応型社会」をおおむね確立する。
NDCは、各国が国連に提出する中長期の温暖化対策計画であり、国内のエネルギー政策や産業戦略と密接に関係します。今回の中国のNDCでは、エネルギー転換だけでなく、森林などの生態系保全や、気候変動の影響に備える「適応」までが一体のパッケージとして示されました。
NEVは電気自動車(EV)などを含む新エネルギー車の総称で、交通の脱炭素を進める鍵とされています。また、National ETSは企業間で排出枠(排出できる量)を売買できる仕組みであり、高排出セクターのコスト構造を変える可能性があります。
「最大限の努力」中国側のメッセージ
清華大学の李政(Li Zheng)教授は、この新しいNDCについて「中国の国情と能力に沿った最大限の努力を反映し、パリ協定の要件と精神を忠実に実行するものだ」と評価しています。
李教授によれば、今回の提出では、初めて全ての温室効果ガスを対象とする「経済全体の絶対量目標」が掲げられました。これは、単に排出原単位(GDP当たりの排出量)ではなく、国全体としての排出総量に明確な上限を設定する考え方です。
李教授は、こうした目標設定は「他国から求められたからではなく、自ら選択したものだ」と強調しています。この表現には、自主性と長期的なコミットメントを打ち出す意図が込められていると言えます。
「中国式現代化」を支える気候ロードマップ
北京林業大学経済管理学院の陳文輝(Chen Wenhui)副院長は、新たなNDCについて、中国が2020年に掲げたカーボンピークアウトとカーボンニュートラルの目標を「具体化し、明確に拡張したものだ」と位置づけます。
陳氏は、このパッケージが「中国式現代化を進めるうえでの指導原則であり、厳粛な約束でもある」と述べています。また、今回の目標により、
- 産業の高度化が強力に促されること
- エネルギーミックスがよりクリーンで低炭素な方向に進むこと
- 生産様式や生活スタイルのグリーン化が加速すること
などが期待されると指摘しています。新NDCは、新たな産業分野の方向性を示し、中国の気候行動における具体的な範囲と作業量を定義する役割も果たすとされています。
パリ協定10年と「デュアルカーボン」目標
中国は2020年の国連総会で、二つの大きな目標、いわゆる「デュアルカーボン」目標を国際社会に表明しました。
- 2030年までに二酸化炭素排出量をピークに達させること
- 2060年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)を実現すること
今回の新たなNDCは、これら長期目標を前提に、その中間地点である2035年までに何をどこまで進めるのかを示したものといえます。エネルギー構造、産業構造、森林吸収源、交通、排出量取引、気候適応といった複数のレバー(てこ)を同時に動かすことで、ピークアウトからカーボンニュートラルに至る道筋を描こうとする内容です。
アジアと世界への含意:クリーンエネルギー競争の新段階
今回のNDCは、中国国内の政策だけでなく、アジアや世界のクリーンエネルギー市場にも影響を与える可能性があります。風力・太陽光発電の設備容量を大幅に拡大し、NEVを新車販売の主流とする方針は、関連技術や部材、サービスに対する需要を押し上げることが予想されます。
また、National ETSの対象拡大により、炭素価格(排出にかかるコスト)の役割が強まれば、企業経営や投資判断において、排出削減がこれまで以上に重要な要素になっていきます。
パリ協定から10年を経たいま、中国の新たなNDCは、クリーンエネルギーへの転換と経済発展を同時に進める「次の10年」の方向性を示すロードマップとして、国際社会から注目されています。
Reference(s):
China leads in global clean energy transition with new climate roadmap
cgtn.com








