敦煌で開かれた世界市長対話:砂漠都市がつなぐ記憶と物語 video poster
砂漠に囲まれた中国北西部・甘粛省の都市、敦煌で、世界各地の市長が集まる「グローバル市長対話(Global Mayors Dialogue)」が開かれました。その開催を前に、中国の国際メディアCGTNのYang Xinmeng記者が、莫高窟の壁画から鳴沙山の砂丘まで、この都市がどのように文明の交差点となってきたのかをたどっています。
かつては交易路で結ばれていた砂漠の街が、いまは人々の記憶と物語で世界をつなぐ。そんなテーマを映し出す今回の取材は、2025年を生きる私たちに、都市と都市がどのように「対話」できるのかを静かに問いかけます。
砂漠の都市・敦煌で交わる「都市の声」
「グローバル市長対話」は、その名の通り、世界のさまざまな都市を代表する市長たちが集まり、経験や知恵を語り合う場として位置づけられています。会場に選ばれた敦煌は、高層ビルが立ち並ぶ大都市とは対照的な、砂漠の風景に抱かれた都市です。
今回のテーマを象徴する表現が「Dunhuang – where cities converse through sand(敦煌――砂を通じて都市が語り合う場所)」という言葉です。砂漠の静けさの中で、都市同士が歴史や課題、未来像について対話する。そのイメージ自体が、従来の国際会議とは異なる、ゆったりとした時間の流れを感じさせます。
莫高窟の壁画が映す、共有された記憶
Yang Xinmeng記者がまず向かったのは、敦煌を象徴する存在である莫高窟です。そこに広がる壁画は「timeless murals(時を超えた壁画)」と表現され、長い年月を経てもなお色彩と物語を保ち続ける存在として描かれています。
壁一面に描かれた人物や風景、宗教的なモチーフは、特定の時代や国境を超えた「共有された記憶」として読むことができます。見る人の背景が違っても、祈りや日常の営み、喜びや不安といった感情は共通しており、そこに都市と都市、人と人をつなぐ入口があります。
記者のカメラがその細部を追うことで、莫高窟は単なる観光地ではなく、人類の記憶が重なり合うアーカイブとして立ち上がってきます。交易品ではなく、記憶や感情こそが、いまの敦煌を世界と結びつけている――そんな視点が浮かび上がります。
鳴沙山の砂丘が語る、変化と対話
取材のもう一つの舞台が、金色の砂丘が広がる鳴沙山(Mingsha Mountains)です。風に揺れる砂は、形をとどめることなく常に姿を変え続けます。その様子は、都市が時間とともに変化し続ける姿にも重なります。
ひと粒ひと粒の砂が集まり、大きな砂丘を形づくるように、無数の人々の暮らしや記憶が折り重なって都市を形づくります。市長たちの対話もまた、それぞれの都市で積み重ねられた経験を持ち寄り、新たな風景をつくり出すプロセスと言えるでしょう。
交易路ではなく、「物語」で世界をつなぐ
今回の取材で描かれる敦煌は、かつてのように交易路を行き交う商隊によってではなく、人々の記憶や物語によって世界とつながる都市として紹介されています。物や資本の移動よりも、経験や感情の共有が重要になっているというメッセージが込められています。
「trade routes(交易路)ではなく、shared memories and human stories(共有された記憶と人間の物語)によって世界をつなぐ」という視点は、国際ニュースの見方を少し変えてくれます。ニュースは事件や数字だけでなく、そこに生きる人々のストーリーを通して理解できる――敦煌はその象徴的な舞台となっています。
デジタル時代に広がる「共有された物語」
CGTNのような国際メディアを通じて伝えられる現地取材は、世界のどこにいても視聴できるデジタルコンテンツとして、私たちの手元に届きます。砂漠の都市で交わされた対話や、莫高窟の壁画、鳴沙山の砂丘の表情は、スマートフォンの画面を通して、一つの「共有された物語」として広がっていきます。
2025年のいま、都市と都市のつながりは、物理的な距離だけでなく、オンラインでの共感や関心の広がりによっても形づくられています。敦煌で交わされた視線や言葉は、画面越しにそれを見つめる私たちの都市とも、静かにリンクしていきます。
私たちの街から考える、文明の対話
敦煌の物語は、遠い砂漠の出来事のようでいて、私たちが暮らす街の日常ともつながっています。地域の祭りや歴史的な建物、そこで語り継がれてきた物語もまた、「共有された記憶」の一部です。
世界の市長が敦煌で対話を重ねたように、私たちも自分の街の物語を言葉にし、他の地域や国と分かち合うことができます。砂漠の都市・敦煌が見せてくれたのは、「交易」ではなく「記憶と物語」で世界をつなぐという、もう一つの国際社会のあり方でした。
ニュースを読み、映像を見て終わるのではなく、その先に自分の街や暮らしを重ねて考えてみる。敦煌をめぐる今回の取材は、そんな静かな問いを私たちに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








