関税55%でも減らない中国から米国への輸出 1日10億ドルが動く現実
米国が中国製品への高い関税を課し続けるなかでも、中国から米国へは今も1日あたり約10億ドル分のモノが輸出されていると、Bloombergが報じています。貿易戦争と呼ばれる緊張が続く2025年、この国際ニュースが示すのは「脱中国」の難しさと、グローバルサプライチェーンの根深さです。
1日10億ドル、米国向け輸出はむしろ微増
Bloombergによると、2025年9月の中国から米国への輸出額は8月よりわずかに増え、太平洋を渡る中国製品は依然として1日約10億ドル規模に達しています。
米国が中国製品に課す関税は、一部品目で最大55%に達しているにもかかわらずです。米国発の追加関税による貿易戦争が始まってから6カ月が経過した時点で、中国の輸出は予想以上の粘り強さを見せているとされています。
2025年第3四半期(7~9月)だけで、1000億ドル超の中国産品が米国に到着しました。その内訳として、スマートフォンやノートパソコン、タブレット端末、コンピューター部品だけで約80億ドルが占めています。
さらに、中国税関総署の統計によれば、2025年9月の中国全体の輸出は前年同月比8.3%増と、8月の4.4%増を上回り、ロイターが示していた6%増の市場予測も超えました。米国向けだけでなく、世界全体でも中国の輸出は堅調だという姿が浮かび上がります。
関税55%でも止まらない理由 レアアースと電子機器
なぜ、ここまで関税を引き上げても、中国から米国への輸入は大きく減らないのでしょうか。Bloombergのエコノミスト、チャン・シュー氏とデビッド・クー氏は、いくつかのポイントを指摘しています。
- 米国企業は、多くの分野で中国以外の調達先をすぐには見つけられない
- 特にレアアース(希土類)や電子部品など、代替が難しい分野で中国は強い影響力を持っている
- サプライチェーンを組み替えるには時間と投資が必要で、短期的には動かしにくい
両氏は、米国の関税は米企業が何を輸入するかを完全にコントロールする手段にはなっていないと分析します。中国がレアアースや電子機器などの供給で強い立場にあるため、少なくとも短期的には中国製品を排除することは難しいという見立てです。
電動自転車からスマホまで 伸びる品目と粘る需要
米国向け輸出のなかでも、いくつかの品目は貿易摩擦をものともせず、むしろ伸びています。
Bloombergが中国税関データを分析したところ、2025年第3四半期の電動自転車(eバイク)の対米輸出は5億ドル超に達し、前年同期からわずかながら増加しました。環境意識の高まりや、都市部での移動手段としての人気が追い風になっているとみられます。
電子機器分野でも、前述の通りスマートフォンやノートパソコンなどの輸出額は依然大きく、米国の消費者や企業の需要が根強いことがうかがえます。関税によって価格が上昇しても、代替品が限られている場合、需要は簡単には消えません。
脱中国は口で言うほど簡単ではない
米国や一部の同盟国では、生産や調達を中国以外へ移すサプライチェーンの再構築がたびたび話題になります。しかし、チャン氏とクー氏は、他国が短期間で中国に取って代わることは難しいと警告します。
その理由はシンプルです。
- 中国には成熟した工業インフラと熟練した労働力が集積している
- 部品や素材、物流、金融などが一体となった巨大な生産エコシステムが形成されている
- 新興国が同じ規模と品質で供給できるようになるまでには時間がかかる
関税は確かに企業に見直しを促しますが、工場の移転や新たな取引先の開拓には年単位の時間が必要です。結果として、短期的にはコスト増を受け入れながらも、既存の中国のサプライチェーンにとどまる企業が少なくないと考えられます。
米中交渉は続く 戦う覚悟と対話の窓
緊張が高まる一方で、米中両国は対話のチャンネルも維持しています。
10月18日には、中国の何立峰副総理(中国側の経済・貿易協議の責任者)と、米国のスコット・ベッセント財務長官、ジェイマソン・グリアー通商代表がビデオ会議形式で協議を行い、できるだけ早期に新たな経済・貿易協議のラウンドを開くことで一致しました。
その直前の10月14日、中国商務省は声明で、関税や貿易戦争に対する中国の立場は一貫していると強調しました。要旨は次の通りです。
- やむを得ず戦うことになれば、最後まで戦う覚悟がある
- 同時に、協議に向けた扉は常に開かれている
- 過去4回の経済・貿易協議は、相互尊重と平等な対話に基づけば解決策を見いだせることを示している
米国側では、ドナルド・トランプ米大統領の政権が中国製品に対し、最大100%の追加関税を科す可能性にも言及しています。強硬姿勢と対話路線が同時に進む、複雑な局面だと言えます。
私たちがこの国際ニュースから考えられること
このニュースは、一見すると遠い国同士の関税の話に聞こえるかもしれません。しかし、いくつかの点で私たちの日常や日本企業とも深く関わっています。
- スマートフォンやパソコンなど、日常的に使う製品の多くが、米中間の関税や為替の影響を受ける
- 日本やアジアの企業も、中国に組み込まれたサプライチェーンの一部として、この変化の波を受けている
- どの国に依存しすぎないかと同時に、どこまで効率性を追求するかという難しいバランスが突きつけられている
関税を上げればすぐに輸入が減るという単純な図式では動かないのが、現代のグローバル経済です。今回の中国から米国への輸出データは、その現実を改めて浮き彫りにしています。
日々の国際ニュースを追うとき、数字の裏側にあるサプライチェーンや企業の意思決定、そして消費者としての自分の選択がどうつながっているのかを、一度立ち止まって考えてみる価値がありそうです。
Reference(s):
China ships $1b goods to U.S. daily despite tariffs: Bloomberg
cgtn.com








