人間の移動量は野生動物の40倍 国際研究が示す「ヒトの時代」
人間は、地球上のどの動物よりもはるかに「動いて」いる――。国際研究チームが発表した最新の研究で、人間の移動量の合計が、野生の陸上哺乳類・鳥類・昆虫すべての合計の約40倍に達していることが示されました。
論文は、国際的な学術誌Nature Ecology & Evolutionに掲載され、ワイツマン科学研究所(WIS)が今週月曜日の声明で内容を紹介しました。研究者たちは、この結果を人間の活動が地球を作り変えている「アントロポセン(人新世)」の象徴だと位置づけています。
人間の移動量は40倍、産業革命以降4000%増
今回の国際ニュースの中心となっているのは、人間と野生動物の「移動」を比較した点です。研究によると、次のような特徴が明らかになりました。
- 人間の移動量の合計は、野生の陸上哺乳類・鳥類・昆虫すべての移動量を合わせたものの約40倍に達している。
- 産業革命が始まった約170年前と比べ、人間の移動量は約4000%(40倍)増加している。
- 同じ期間に、海の中の動物の移動量はおよそ60%減少している。
ここでいう移動量は、個々の生き物が動いた距離を積み上げた「総移動距離」をイメージすると分かりやすいでしょう。車や電車、飛行機による長距離移動、物流や観光などの人の動きが積み重なり、野生動物を大きく上回る規模になっているということです。
「ヒトの時代」アントロポセンの象徴
研究チームは、この結果をアントロポセンの象徴的な数字だと指摘します。アントロポセンとは、人間の活動が気候や生態系、地形など地球環境全体に決定的な影響を与えるようになった時代を指す概念です。
これまでアントロポセンを語るときには、二酸化炭素排出量や森林伐採、都市化の進行といった指標がよく取り上げられてきました。今回の研究は、そこに「移動」という新しい視点を加えたと言えます。どこへ、どれだけ動くのかという行動パターンそのものが、地球の姿を変えているという見方です。
なぜ人間の移動はここまで増えたのか
人間の移動量が産業革命以降に約4000%も増えた背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 蒸気機関に始まり、自動車、鉄道、航空機といった交通手段の発達
- 国際貿易や観光、留学、出稼ぎなど、国境を越える経済活動の拡大
- グローバルサプライチェーンによる物流ネットワークの拡大
- 都市への人口集中に伴う通勤・通学など日常的な移動の増加
私たち一人ひとりの移動は、日々の通勤や買い物、旅行だけを見るとそれほど大きく感じないかもしれません。しかし、世界人口全体で積み上げると、野生動物の世界をはるかに上回るスケールになっていることが今回の研究で可視化されました。
海の動きが減っているというサイン
研究は、海洋動物の移動量がこの170年ほどで約60%減少していることも示しています。陸上では人間の動きが急拡大する一方で、海の世界では動きそのものが小さくなっているという対照的な姿です。
移動が減ることは、単に「じっとしている」ことを意味するとは限りません。生息域が狭まっているのか、個体数が減っているのか、移動ルートが変化しているのか――理由はさまざま考えられますが、いずれにしても海の生態系がこれまでとは違う姿になりつつあることをうかがわせる数字です。
私たちの暮らしと「移動」をどう見直すか
今回の研究は、すぐに特定の行動を求める「提言」というよりも、私たちに問いを投げかけるデータと言えます。2025年の今、次のような視点から自分たちの移動を見直してみることができます。
- 量だけでなく「質」を考える:どの移動が本当に必要で、どの移動はオンラインで代替できるのか。移動の目的や意味を問い直す視点です。
- 移動のコストを意識する:時間やお金だけでなく、エネルギー消費や環境負荷も含めて「移動コスト」を考えることで、選択肢が変わるかもしれません。
- 都市や社会のデザインを考える:個人の努力だけでなく、公共交通や都市計画、働き方など、社会の仕組みそのものをどう設計するかが問われています。
「どれだけ動くか」が問われる時代に
人間の移動量が野生動物の約40倍という数字は、私たちが想像している以上に「動き」に依存した社会を築いてきたことを示しています。一方で、海の動きが減っているという事実は、地球上の他の生き物の世界が静かに変化していることを感じさせます。
これからの国際ニュースや環境問題を考えるとき、「どれだけ動くか」「どのように動くか」という視点は、ますます重要になっていきそうです。今回の研究は、日常の移動を当たり前のものとして見過ごしてきた私たちに、改めて立ち止まって考えるきっかけを与えてくれます。
Reference(s):
Study reveals humans move 40 times more than all wild animals combined
cgtn.com








